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〇月〇日  作者: by sky kt
ある村娘の日常
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7月4日

7月4日


 明日、宴祭えんさいが始まるからか、村では祭りの準備で賑わっていた。


とても忙しそうだったけど、一年に一度きりの一大行事なだけあり、みんなが一生懸命に瞳を輝かせながら準備をしていた。


そういえば、小さい頃はぼくもはしゃぎながらお手伝いをした気がする。


お手伝いと言っても、本当に簡単な作業を少しだけ。


そして、すぐに屋台巡りに向ったけな。


屋台の甘い出店を制覇しようと両親を引きずり回してたけど、結局三つくらいお店を回った頃には、もうお腹いっぱいになっていた。


後は、お父さんとお母さんの買ったものを少しだけ貰って満足をしていた。


ぼくが全然食べれなかったから不貞腐れて、それを思った両親がわざわざぼくのために無理に食べ物を買っていたな。


とても楽しかったことだと思う。


しかし、それが今では遠い昔の過去の出来事に感じる。


いや、ぼくの過去の思い出のはずなのに他人の出来事のように思ってしまう。


そしてぼくは今、1か月ぶりの帰宅をしている。


昨日ぼくが家に帰ると両親がぼくのところに駆けつけてきて思いっきりぼくを抱きしめてすごい泣いていた。


けど、ぼくは涙どころかこれといった感情すらもでてこなかった。


嬉しさも悲しさも。


何も思うことができないことに対しての怒りも。


家では特にすることがなかったので、親の手伝いをしていた。


親はゆっくりしなさいと言ってくれたが、何となくそれを拒んで手伝いをした。


手伝いといっても今日来るお客さんのために部屋の片づけくらいの内容だけだけど。


特に散らかっていなかったので、部屋の片づけは午前中に終わらせることができ、そのタイミングに合わせたかのように二人のお客さんが泊まりに来た。


一人は結構ふくよかな体型で、もう一人はがたいがいい中年男性の二人だった。


出迎えて二人に挨拶をし、部屋まで案内するとがたいがいい男性がぼくのことをかなり褒めてくれた。


すごくどうでもよかった。


その人もぼくにすぐ興味をなくし、部屋に荷物を置きもう一人の男性と家を出て行った。


どうやら、この村を散策するらしい。


外では宴祭えんさいの準備をしていたから色々興味が湧いたのだろう。


ぼくは夜まで自分の部屋で過ごし、もう二度と使うことのないこの部屋の掃除をしていた。


少しは感傷に浸れるかなと思っていたが、そんなことなくまるで他人の部屋を掃除している気分だった。


夜には夕食をお客さんの部屋まで運び、それを片付けそしてまた自分の部屋に戻る。


ぼくは明日には貢ぎ物として役目を果たし、この世と別れを告げる。


今日が最後の日だというのに、何て平凡な過ごし方だったんだ。


別に思う事は何もないが。


そしてぼくが寝ようとした時だった。


両親が部屋に訪れて、再びぼくを抱きしめて泣き始めた。


悲しみも怒りも寂しさもないぼくはそれを黙って見ていた。

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