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〇月〇日  作者: by sky kt
ある村娘の日常
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7月1日

7月1日


今日から4日後に宴祭えんさいが始まる。


一年に一度のお祭りだ。


しかし、ぼくは宴祭えんさいの準備に参加することなく、この蔵の中でじっと待つのみ。


毎年この宴祭えんさいは行われているのだけど、今年は宴祭えんさいはただのお祭りではない。


百年に一度に行われているある儀式も行われる。


宴祭えんさいではなく、延祭えんさいという儀式を。


延祭えんさいはこの村に伝わるいにしえの儀式。


始まったきっかけは大昔、この村では災いにより長年悩まされていたらしい。


それで当時の村の人達はその災いを起こさないようにするため、災いを遠ざける方法を生み出した。


その儀式は見事成功し、村の人達は大いに喜び、うたげを開いたそうだ。


だから宴祭えんさい延祭えんさいが成功して生まれたうたげの名残であり、また延祭のカモフラージュの役割も担った。


この言い伝えも全て村長から聞いた話だ。


そしてこれからのことも村長から聞いた習わし。


それは、延祭の方法の一つとして、災いからこの村を未然に守るための代償が必要ということ。


その代償は、乙女を一人貢ぎ物にしないといけないこと。


その貢ぎ物というのがぼくであること。


なんとぼくは、今年の貢ぎ物に選ばれたのだ。


これはとても名誉なことらしい。


かれこれこの蔵には3日間もいるが、何か懐かしさを感じれる。


それはなぜだろう、今のぼくにはそれはわからない。


生を受けてから13年経ち、ぼくは突然3年後に行われる延祭の貢ぎ物だと告げられる。


それからぼくは村のみんなから崇拝される『物』となっていった。


村の皆、友達、ぼくの家族からも。


最初は優越感でいっぱいだったが、それが憐れみに感じてくるのにもあまり時間がかからなかった。


仲の良かった友達とも次第に疎遠になり、今ではどうでもいい存在だったと思えてくる。


延祭まで1ヵ月になったところで、ぼくは学校に通うために借りていた寮から引き上げ、村長の家で暮らすようになった。


そして来るべき延祭の儀式の準備などをする日が続いた。


儀式の準備は周りの大人もびっくりするぐらい順調に進んでいった。


ぼくも昔やったことがあるのでないかと思うぐらい、儀式について完璧だった。


宿命だと思ったのもその時だ。


そして準備が整ったぼくは三日前にこの蔵に移動した。


どうやら村長の家でも準備をするらしく、そのための移動らしい。


延祭もとい宴祭の前々日には最期に家に帰ってもいいと言われた。


ぼくはもう家族さえもどうでもいいと思っていたのだが、当の本人たちが帰って来てほしかったので、渋々帰ることに。


ぼくはこの行為に意味があるのかと疑問を感じた。


けど、この帰宅行為は歴代からの習慣なので特に気にしないことにした。


更にどうでもいいが、民宿をしている我が家にお客さんが来るらしい。


こんな田舎に来るなんて相当の物好きなものだ。


まあぼくには金輪際関係ないことだけど。

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