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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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フォロワーツ神殿 6

 「松田さん、助かりました。僕、服のことなんか全然思いつかなかったですよ!」


 神殿の祭壇前まで戻ってきた僕は松田さんのナイスな判断に惜しみない賛辞を贈る。


 「まあ、人型とは限らないけれど、流石に全裸では外を連れ歩くのは憚られるからね」

 「あ、そういう可能性もあるんですか?」


 すっかり普通の人っぽい姿になるものだと思い込んでいた。


 「そもそも、本当の姿が何なのか謎だしね。リクエストすればどんな擬態でも出来そうだけれど、まあ、こちらと交流するのには馴染みやすいからだろう、人型であることが多いみたいだよ」

 「へー。とりあえず、待ってみるしかないですね」

 「そうだね。せっかくだから、お茶休憩にでもしようか」


 そう言って松田さんが持ってきていたもう一つのバッグからピクニックシートを取り出して床に引く。


 「マキ、おやつー!」


 マキちゃんは早速、おやつタイムに入るようだ。

 僕は水筒からお茶をコップに注いでラズリィーに渡す。


 「はい」

 「ありがとう。なんていうか、やっぱり、黒の領地には居ないんですね。冬の巫女姫」


 ラズリィーが受け取りながらため息をつく。


 「そうみたいだねえ。エネルギー不足って、どのくらい栄養があればいいんだろう」

 「個体差はあるだろうけれど、まあ、普通の人が食べる食料なら10人分くらいが1食分くらいだと思っておいたほうがいいよ。原始種族は調理済みの食料からはほとんど栄養を得られないみたいだからね」

 「そんなに・・・。かといって、生命力や魔力を毎回分けてたら、こちらが危ないですよね」

 「そうだね。まあ、聞いている限り、サニヤさんは笈川くんにとても好意的だし、危険はないと思うよ。連れて帰るつもりでいいんだよね?」


 松田さんが、言葉にして確認してきた。

 僕は頷く。


 「そのつもりです。少し悩んだんですけど、サニヤさんのご主人様っていうのも気になるし、違うなら違うでいいけれど、もしかしたら僕の知らない何かがあるかもしれないし」

 「それについては、可能性はいくつかあるよ」

 「可能性?」

 「原始種族の寿命を考えれば、ご主人様というのは笈川くんの前世かもしれない。まあ、本当に笈川くんが忘れているだけかもしれないし、本当は全く別人のことかもしれないけどね」

 「原始種族の特性を思えば、別人と間違えるなら、間違えるほどの何かがあるはずでしょうね」

 「そうだね。ご主人様の血縁だったりとか?まあ、いずれはわかるだろう」

 「ええ・・・前世だったら、僕にはまったく関係ない話じゃないですか?」

 「そうだねえ。人格としては別人だからね。その辺りをどう考えるかは個体差があると思うけど、サニヤさんはかなりご主人様とやらにご執心のようだね」

 「僕は普通の男子高校生なんですけどね・・・」


 僕は小さくため息をつく。

 異端ディザスターとしての自分をハッキリ認識できるようになったとはいえど、自分は普通の男子高校生のつもりだ。人からご主人様と呼ばれるような人格者や有力者になったつもりはないし、なるつもりもない。目指すのは平穏な日常、平和な家庭だ。自分が思ってた以上の能力スキルを所持していた事実から目をそらすことはできないけれど、戦乱の世でもないのに自分から騒動を起こす理由はない。膨大な火力だけあっても、所詮、平和な日本で育ってきた子供だ。1人で世界を相手に戦えるはずがない。そのくらいの分別はあるつもりだ。

 お茶を飲みながら窓を見上げる。

 ゆらゆらと小さな魚が泳いでいく。

 この神殿の中で、探索した部分で唯一の窓のあるフロアがここだ。もしも、上の階に大きな窓があれば水族館気分を味わえそうだ。そう思って提案してみる。


 「ねえ、ラズさん。後で上の階も見てみない?大きな窓があったら魚がたくさんみれるかも」

 「素敵!」


 ラズリィーは、僕の提案に花が咲いたような笑顔で答えてくれた。

 その笑顔を見るとホッとする。

 やっぱり、ラズリィーには笑顔が似合う。


 「まあ、今日は他に予定もないしね。上を見学して湖まで戻って昼食かな?」

 「そうですね」


 この後の予定をボンヤリと決めた時、カタリと小さな音がした。

 どうやらサニヤが下の扉を開けたようだ。


 どんな風に変化したんだろう。


 僕は、好奇心と少しの緊張でドキドキしながら階段の方を見つめた。

 ゆっくりとサニヤがその姿を現す。

 階段を上りきって僕たちの前まで来ると、


 「お待たせいたしました。皆様」


 と、スカートの裾をつまみ上げ華麗にお辞儀をした。所謂、カーテシーというヤツだ。


 「渡しておいてナンだけど、やっぱりそれを選んだんだ・・・」


 松田さんが、苦笑している。

 何故なら、サニヤが来ているのは王城の侍女さんが来ているのと同じ、白のブラウスに黒のシンプルなラインのワンピースにエプロンをつけた、コスプレでするものと違って扇情的ではない実用専用のメイド服だったからだ。

 体型も幼児から僕と同じ年齢くらいまで変化している。

 透明だった肌も、僕よりは白く、ラズリィーや蒼記さんのような滑らかな肌色をしている。髪と瞳の色は緑色だった。蒼記さんの青銀の髪と同じように少し薄い部分がキラキラと反射して優しい色合いをしている。表情が少し乏しいせいか、綺麗なお人形のような印象を受けた。


 「あれ、お城のヤツですよね?」

 「うん。老若男女に対応できるように何パターンか持って来てたんだけど、昨日、ご主人様って言ってたからネタ枠で入れたんだけど、うん、まあ、似合うからいいかな?」

 「確かに、似合ってますけど」

 「お褒めに預かり光栄でございます」


 サニヤが淡々と礼を述べる。

 その服装で恭しくされると、本当にご主人様とメイドさんみたいで落ち着かない気分になった。


 「サニヤさん」

 「なんでしょう、吹雪様」


 僕は、小さく咳払いをしてから、


 「僕にとっては、サニヤさんの方が多分、年上だし、敬語で喋られると緊張しちゃうから、もう少し砕けて話さない?ずっとそんな感じだと落ち着かないし」


 サニヤは僕の提案を受けて少し考える素振りをして、


 「吹雪様がそう望まれるのでしたら・・・、そちらのお嬢様と同じような口調でよろしいでしょうか?」

 「うん、それでいいよ。彼女はラズリィーさん、服をくれたのが松田さんで、そっちがマキちゃんだよ」


 そういえば、自分の名前しか名乗っていなかったことに気がついて皆を紹介しておく。

 サニヤは確認するように頷いた後、


 「では、改めて。吹雪様。ラズリィーさん、松田さん、マキさん、よろしくおねがいします」


 と、再度、カーテシーを披露した。


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