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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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謎だらけな夜

 はぁぁぁぁ。


 コテージに戻って露天風呂に入りながら大きなため息をついた。

 昨日に引き続き、今日も波乱溢れる1日だった。

 湖でのラズリィーのアレ、とか。

 水中神殿で遭遇した原始種族のサニヤとか。

 結果だけ見れば、僕の氷の能力スキルの偏りが改善されて、尚且つ、異端ディザスター能力スキルを使いこなせるように覚醒した(?)のは良かった。

 サニヤについては、何故なのかラズリィーが茉莉花さんの時と同じような嫌悪感を示したことが不思議だ。

 2人の共通点を考えてみる。

 年齢?

 ふと思いついたけれど、すぐにそれはないと思い至る。

 サニヤは原始種族だ。見た目通りの年齢ではないだろう。

 性格も、我侭なお嬢さんな茉莉花さんとではかなり違う。

 そうなると、一緒についてくると言った事だろうか?

 中院一族と一緒にいて人見知り属性がうつった?それもないか。僕とは初めて会った時からフレンドリーだった。

 女の子が謎だ。

 本当にわからない。

 お湯で顔をバシャバシャと洗う。

 謎といえば、1日考えさせて欲しいと言ったらサニヤがあっさり了承したことだ。

 とりあえず、すぐにでも現実復帰というか、その場から逃げ出したい気持ちだったので挨拶もそこそこに神殿を出てきたのだけれど、帰り道でもの凄く後悔した。

 あの寝台しかない場所に置いてきてしまった。

 見た目が幼児だけに罪悪感が募る。

 どういう結論を出すにしても明日、顔を合わせにくい。

 自分のメンタルの弱さに打ちのめされる。

 1人でグルグルと考えていても結論は出そうになかった。




 お風呂から上がると松田さんとマキちゃんが夕食の準備をしていた。


 「あがりました。手伝いますね」

 「おかえり。じゃあ、ご飯よそってくれる?」

 「はーい」


 一旦、気持ちを切り替えよう。

 空腹で物事を考えるのは良くないって言うしね。





 夕食を終えて食器洗いをしていたら、松田さんが珈琲を入れてくれた。


 「少し、話をしようか」

 「はい」


 松田さんに促されて食器を手早く片付けてリビングへ行く。

 マキちゃんは、特にこちらに関心がないようで丸くなって眠っているようだ。

 やっぱり猫だから良く寝るのかな?


 「笈川くんがお風呂の間に、各所に軽く状況説明はしておいた。魔王陛下も、真王陛下も、サニヤさんを連れて王城に戻ることの許可はくれたよ。勿論、選ぶのは笈川くんの自由だからあくまで許可が出たことだけ覚えておいてくれればいい」

 「はい」

 「知り合いの原始種族の人、サミヤさんっていうんだけど、サニヤさんのことは知っているけれど、ご主人様というのがどういう意味かはわからないと言っていた。サニヤさんは、知ってる限りでは三千年くらい灰の塔に戻っていなかったらしい」

 「三千年・・・」


 サニヤとサミヤさん。何だか似ている名前だ。同じ一族だから何か法則性があるのかも知れない。

 それにしても流石、原始種族、時間の単位が物凄い長い。


 「もちろん、サミヤさんが起きている時は、だから、絶対ではない」

 「はぁ・・・でも、多分、あの祭壇で封印されてからはずっといたんでしょうね」

 「そうだねえ。生憎と神代の建築物だけあって、埃とか傷と無縁だから正確な年数を割り出すのは難しいだろうね」

 「でも、3年って感じはしないですよね」

 「そうだねえ。3年くらいなら、原始種族にとっては1分にも満たないだろうから、あそこまで再会を喜んでいる素振りは見せないだろうね」

 「そうなんですか?」

 「うたた寝で何十年も普通に眠れるらしいからね。帰り道で置いてきたことを気にしてたみたいだったけど、相手は気にしてないと思うよ。ちょっと眠いなって思ったら戻ってきたな、くらいだよ」


 僕の気にしていたことをズバリ言われてしまった。


 「ううーん。あんまり傷付いてないならいいんですけど、自分に置き換えるとやっぱり少し良心が痛みますね」

 「そうだね。こちらにとっては普通に1日だからね」


 松田さんが苦笑する。

 僕も微妙な笑顔しか出来ない。


 「ご主人様云々はともかく、あそこにずっと1人にさせておくのは良くないのはわかってるんですけど、じゃあ、自分が責任持てるのかって言われると、実際問題、僕は居候の身分なわけで、判断しかねるというか」

 「原始種族は謎が多いからねえ。あのままの状態では連れて歩くと目立つだろうね」

 「ああーっ、確かに」


 全身、水晶やガラスで出来ているみたいな透き通った身体の人なんて今まで見かけたことがない。獣耳どころの騒ぎじゃない。


 「笈川くんが、一緒に行くのを躊躇したのはラズリィーさんのせい?」


 松田さんがド直球で攻めてきた。


 「それもありますね。言葉にこそしなかったけれど、あそこまで不機嫌なのがわかってて連れて行くとは言い辛いじゃないですか」

 「まあ、女の子の不機嫌って男には凄く恐怖な時があるよね。あの居心地の悪さは何なんだろうねえ」

 「ですよね!こう、理由が見えてこないというか・・・」

 「えっ、そこは気付こうよっ」


 松田さんのセリフに僕は驚く。


 「え?松田さんは理由がわかったんですか?」

 「あー、まあ、俺は客観的に見てる立場だからね。まあ、その内気付くよ。別に、笈川くんが彼女に何かしたとかじゃないから、嫌われたとかは考えないであげてね?」

 「ええ?何のナゾナゾですかっ」

 「フブキ」


 ふいに今まで丸くなっていたマキちゃんが顔を上げた。


 「そんなんじゃカノジョできないぞ」


 それだけ言うと再び丸くなってしまった。

 一体何なんだ。

 もっと女心がわかるようにならないとモテないぞってこと!?

 ええ、モテませんよ。彼女いない暦年齢ですが何かっ


 「まあ、彼女のことは、一晩おけば落ち着くだろう。そのくらいの判断力はあるはずだよ。とりあえず、過程の話として、いくつか例をあげてみようか」

 「はい」

 「もし、置いていく場合。まあ、おそらくサニヤさんは再びあそこで眠りにつくと思う。もしかしたら、灰の塔へ戻ることを希望する可能せいもあるから、その時は俺が送っていくよ。で、連れて帰る場合。サニヤさんの目的が明確じゃないから、予測でしかないけれど、ただ、笈川くんと一緒に居たいだけならば、王城の許可もあるし連れて戻って部屋を与えておけばいいと思う。ただし、サニヤさんの目的が君や周囲にとって不利益なものだった場合、再び神殿に封印するか、灰の塔に強制的に送還することになると思う。その場合、サニヤさんをどうにか説得するしかない。説得出来ずに敵対した場合、戦闘になる可能性も考えておかなければ駄目だ。ただし、原始種族との戦闘で勝利したという歴史は存在しない」

 「どうしてですか?ほとんど眠っているから?」

 「もちろん、彼等がほとんどが眠っていて、その上に国家や政治に関心を持たないのも大きな理由だろうけれど、原始種族の攻撃を回避する方法がこの世界にはない」

 「そんな攻撃ってあるんですか?」


 絶対に回避出来ない攻撃、それが戦いの場にあった場合、結末は敗戦か、和平を結ぶかの二択しかなくなる。原始種族が好戦的な種族だったら、この世界は彼等の支配する世界だった可能性もあるわけだ。


 「彼等は、生命力や魔力も糧として吸収するけれど、人の記憶も食べる。食べられた記憶は返還されることはない」

 「記憶。そんなことが可能なんですか」

 「可能だ。しかも、触れていなくても広範囲から吸収することが出来る。だから、戦意そのものさえ奪われる」

 「それじゃあ戦いにすらなりませんね」

 「そうだよ。他にも色々、こちらの記録に残らないように消されているだろうから、実際の戦闘力は想像以上あると思っておくべきた」

 「それじゃあ怖くてうかつに側にいられないじゃないですか」


 こちらの知らない間に記憶消去されてはたまらない。

 その上、怒らせたら命さえ食い尽くされる可能性もある。


 「幸いなことに、彼等は喜怒哀楽が激しい方じゃないし、普通に接している分には、許可なく食事をしたりもしないから、きちんとお互いが納得出来るまで話し合いをすれば大丈夫だと思うよ。だから、結論を急がないでいいから、じっくり考えてみたらどうかな。明日までって焦っても仕方がないからね。迷っているということを前面にだしてお願いすればわかってくれると思うよ」

 「そうですね。ちゃんと考えます。ありがとうございます」


 お礼を言うと松田さんはポンポンと僕の頭を軽く叩いてから寝室へと階段を上がっていった。

 僕はそのまましばらくリビングで原始種族について得た情報と自分の気持ちや状況について考え続けていた。

 

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