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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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フォロワーツ神殿 4

 目覚めた原始種族の言葉に思わず硬直する。


 今、ご主人様って言ったよね?


 目覚めさせたからという理由ならば、松田さんも同様のはずなのに視線はしっかりと僕に向けられている。反応しない僕に不思議そうに小首を傾げた後、


 「ご主人様、一体どうされたのですか?」

 「どう・・って、僕は君のご主人様ではないと思うんだけど」


 一応、否定はしておく。

 しかし、あっさりと、


 「いいえ。間違いありません。ご主人様、そんなに不自然なバランスになっているから私のことを忘れてしまわれたのですか?」


 どうしても僕をご主人様にしたいようだ。どうしよう、と松田さんの方に視線を向けると、


 「笈川くんは、3年程空白の時間があるらしいから、その時に何か欠落があってもおかしくはないよね。ええと、不自然なバランスというのはどういうことかな?」


 松田さんが原始種族に質問する。

 確かに、自分が死んで目覚めるまでの間のことは自分でもまったく記憶にないのでご主人様である可能性はゼロとはいえない。


 「氷が顕在化しすぎています。そのせいで体調が優れないのではないですか?」

 「あー、確かに、そんなこともある、かな?」


 意識的に調整することを止めてしまえば、今でも昔のように倒れるだろう。


 「ご自分で調整出来ない状態なのですか?」

 「うーん、頑張って調整してるつもりなんだけど」

 「そのように無理に押さえ込むのではなく、平坦に」

 「平坦に?」


 イマイチ、理解が及ばない。


 「記憶の欠落は私ではどうすることも出来ませんが、その氷を抑えることならば私にも出来ます。僭越ながら、能力干渉してもよろしいですか?」

 「うん?健康被害がお互いにないのなら?いいの、かな?」


 判断が難しい。

 松田さんは、


 「その氷の顕在化が解消されることは悪いことじゃないんじゃない?」

 「そうですね。じゃあ、お願いしようかな」

 「では、失礼します」


 そう言って原始種族は寝台の上に立ち上がって僕の首の後ろに手を回した。透明な身体なのに触れたところがほんのりと暖かく感じる。周囲からみると幼児に抱きつかれてるように見えるだろう。

 しかし、不思議と嫌悪感や緊張を感じなかった。それどころか、当然のような、とても馴染んだ感覚にすら思えた。

 胸の辺りからスッと何かが変化していくのを感じた。

 心地よかったので身を任せていると、スッと身体が離れていくのを感じた。


 「終わりました」


 言われて自分の体調の変化に意識をやってみる。

 なんだかよくわからないけれど、物凄く快適な気分だ。こんなに身体や気持ちが軽かったことが人生にあっただろうか?気持ちよく目覚めた朝や、気持ちよくまどろんでいた時よりも快適だ。


 「あらら、本当に平坦になったね」

 「平坦というか、ふぶきさんから能力スキルの欠片さえ見えてこないわ」

 「え?」


 慌てて火の能力スキルを発動して指先に灯してみる。

 今まで以上に容易に使うことが出来た。


 「これは、つまり一番最適な状態になったってことでいいのかな?」

 「そうです。ご主人様の能力スキルを通常通りに修正しました」

 「今まで、笈川くんは不自然な状態だったわけだ」

 「その通りです」


 ぼんやりとしている僕の代わりに松田さんが質問をしてくれる。

 ええと、つまり?

 今の僕は、自分にとって一番自然な状態で、客観的にはどの能力スキル持ちか隠蔽さえされている状態だということ?

 確かに、他の異端ディザスターであるシノハラさんと暮さんは周囲からは能力スキル無効しか認識されていないのだから、僕の用に他人に属性が認識されてしまうのは不自然な状態だったのだろう。


 「まあ、これで補助アイテムを卒業できるね」

 「そう、なりますね。うん、大丈夫だと思います」


 体温調節どころか、普通に能力スキルだけで武器を具現化できるという自覚があった。

 自分に出来ることと、出来ないことが意識をやれば簡単にわかるようになった。

 シノハラさんが、出会ってすぐに僕を異端ディザスターだとわかったと言った意味も理解出来た。

 目の前の松田さんの土の能力スキルもラズリィーの春の巫女姫としての能力スキルも我が事のように理解出来る。異端ディザスターには鑑定の能力スキルも含まれているのだろう。


 「ご主人様」


 原始種族が僕の方をじっと見つめてくる。

 相変わらず、相手のことを微塵も思い出せないけれど、


 「ご主人様なのかはわからないけれど、確かに、知り合いだというのは感じます。なんか、こう本能的に」

 「ご主人様!」


 僕の言葉を聞いて原始種族が喜びの声を上げる。


 「とりあえず、ご主人様は止めて。恥ずかしいから。吹雪でいいよ。君の名前を聞いてもいいかな?」


 原始種族はしばらく考えこんだあと、


 「では、吹雪様、とお呼びします。私の名はサニヤです」

 「サニヤさん、は、どうしてここで眠っていたの?お家はここじゃないよね?」

 「お家?ここは、ご主人様・・・吹雪様と私の家です」

 「え?」


 思ってもいなかったことを言われて僕は絶句する。


 「どういうことですか?」


 今までずっと黙って聞いていたラズリィーが怒気を孕んだ声を上げる。

 どこが怒りポイントだったのかわからないけれど、僕の聞きたいことを聞いてくれたのでスルーしておくことにする。女子の怒りに不用意にツッコミをいれると拗れることは母親で学習済みだ。

 原始種族改め、サニヤは不思議そうに、


 「吹雪様と私の家です」


 と、答えた。

 意味がわからない。


 「それは一旦、置いておこう。この神殿に他に隠し部屋はあるのかな?」


 松田さんが冷静に会話を繋げた。

 サニヤは頭を振った。どうやら、この寝室だけが特別なようだ。


 「では、探索はここまでにして、我々は地上に戻ろうと思うけれど、サニヤさんはどうする?」

 「吹雪様と一緒に参ります」

 「ふむ。笈川くんは、それでいいのかな?」


 松田さんが僕に確認を取ってくる。

 キラキラした瞳で僕を見つめてくるサニヤと何だか不機嫌なラズリィーの顔を交互にみて、


 「ええ・・・と、とりあえず、急な話過ぎるから、1日だけ考えさせて欲しい、です」


 と、言うのが精一杯だった。


 色々、急展開過ぎるよ。

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