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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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洞窟

 昼食をしっかり食べてバーべキュセットを片付けてから僕たちはまず洞窟を目指すことになった。


 「わたしも実際に行くのは初めてだからドキドキします」

 「洞窟ってことは蝙蝠とかいるのかな?」

 「いるかもねえ」

 「マキ、コウモリ食べる」


 初めての洞窟にワクワクしている僕と違ってマキちゃんはどこまでも食欲だ。


 「ラズリィーさん、どの山だっけ?」

 「たしか、あちらです。あの高い山の麓辺りだったと」


 ラズリィーが、僕たちが来た方向の反対側。太陽の位置からすると西側を指し示す。西側には幾つかの山の中に1つだけ突出して高い山がある、その山のことだろう。歩いていけそうな距離だ、湖の向こう側ではなくてよかった。

 僕たちは西側に向かって歩き出した。






 目前にはぽっかりと大きな穴が開いている。

 人が3人くらいは並んで入れる大きさだ。すぐ脇に『この先、フォロワーツ神殿』と書かれた看板が立っている。特別、注意事項は特記されていない。


 「村の子供たちがたまに遊び場にしたりするそうよ」

 「ええ。こういう古代遺跡っぽいのって状態保存とか厳しくしない?」


 まず日本ならばありえない。

 洞窟、しかも行き先が水中に沈んだ過去の遺跡。

 入り口周辺は厳重に封鎖されるし、崩落の危険性もある、特別な調査団がたくさんの手順を踏んでからのみ立ち入ることを許される場所になるだろう。

 神殿と形容される以上、現地住民の信仰の対象になっている場合もある。そうなると、ますます調査の許可を取るのが大変なことになりそうだ。


 「一応、神代の建築物らしく、自己保全自己修復機能が作動しているから問題ないわ」

 「へえ・・・、現代の建物にはそういうのないの?」

 「あるにはあるけど、神代に比べると再生可能数が落ちることと、建築士の趣向の差で使われないこともあるわ」

 「趣向?」

 「ほら、よく言うじゃない。『物はいつかは壊れる。それが今日だった。』って。壊れないのは不自然で嫌だっていう職人さんも一定数いるんだよ」


 僕の疑問に松田さんが答えてくれる。

 なるほど。

 自分が作った建物が壊れずに長い間残って欲しい人と、自然にいつかは朽ちていくものだと思っている人で分かれるのか。


 「じゃあ、役所とか、政治的な場所は修復機能付けるタイプの職人さんを選ぶんだよね?」


 テロや戦争が起こった時に主要施設が破壊されては困るだろう、そう思って僕は言った。


 「むしろ、選ばない方が多いんじゃないかな」

 「そうねえ。倒壊具合で相手の本気度もわかるし」

 「だよねえ」


 松田さんとラズリィーはお互いの意見にウンウンと頷いている。


 「え?そういうものなの?でも、政治家の人とか役人の人が怪我したら一般人の救出が遅れない?」

 「そこは大丈夫だよ。まず、一般区画を狙う意味もないし。地球と違って一般人を何人人質にしても、こちらの政治家には意味がないからね。殺すなら政治家本人とその派閥を狙わないと」

 「ええ・・・、そういうものなの?」

 「そういう感じね。そもそも、政治に興味のない一般に迷惑をかけると、後々、困るのは攻撃側ね。商店から物を売ってもらえなくなったりするもの」

 「じゃあ、戦争が起こった時、一般人から徴兵されたりは・・・」

 「しないね」

 「なんか、本当に色々違うこと多いですね」

 「そこら辺は生活していたら自然と覚えてくるよ」


 松田さんがポンポンと背中を叩いて、


 「さあさあ、とりあえず入ってみようじゃないか」


 と言った。


 自分というか、現代日本人とこの世界の人の考え方の差異に時々驚かされるけれど、これは松田さんの言う通りなれていくしかないのかもしれない。 

 前向きに考えれば、自分が本当に憎まれたり、純粋に殺人狂の人物に遭遇する不運に恵まれない限りは、国家という相手から一般人が搾取されたりすることはないのだから生活はしやすいのかもしれない。


 「そうですね、行きましょう」




 洞窟の中は、迷宮ダンジョン1階層と似ていて明かりもないのに壁面が仄かに発光していた。

 ただ、迷宮ダンジョンのように分かれ道があったり通路の広さが変化したりすることはなく、一定の広さで脇道なくまっすぐに続いている。気温は外に比べると若干低いようだ。


 「蝙蝠、いないね」

 「いないですね」

 「ザンネンッ」


 マキちゃんはガッカリしている。

 僕は少しだけホッとしている。食べろと言われたら食べられなくはないと思うけれど、さすがに姿焼きとかを出されたらと思うと少しだけ躊躇いがある。マキちゃんは、何でも食べれて凄いなあ。


 「まあ、村の子供が遊び場にするような場所なら獣の類もいないだろうしねえ。恐らく、ある一定上の知性がないものしか認識出来ないようにしてあるんだろうね」

 「確かに。神代の建築物にはそういった物が多いと聞きますね」

 「えーと、じゃあ、この洞窟は水没する前からあったってことなの?」

 「そうなるわね。もしかしたら、神があの神殿を隠すために湖を創ったのかもしれないわね」


 こんな山の麓にわかりやすい出入り口を作るのに、神殿正面入り口を封鎖する為に湖を創って沈める意味はあるのだろうか。現段階では推測だけれど、この仮定が正解ならば神様は何を考えているのかわからない。まあ、常人には理解できないから神様だといわれればそれまでなのだけれど。

 ただひたすら洞窟を進む。

 単調な風景なので少し飽きてきたのか、マキちゃんが、


 「わーっ!」


 と大声を出した。


 「どうしたの?」

 「大声を出したら反響するかと思った。しなかった。ガッカリ」


 確かに、かなりの大きな声だったのに反響はしなかった。

 実際に洞窟に入ったのは始めてなので、それが洞窟では普通なのかはわからないけれど、迷宮ダンジョンではたまに自分の足音が反響することがあったので似たような構造なのに違う結果なのには何か意味があるのかもしれないと思った。

 そんなやりとりをしながら進むこと30分くらいすると終着点に着いた。


 「白いね」

 「真っ白だね」


 土と岩肌で出来た洞窟の終着点には、象牙のようなツルリとした真っ白な扉があった。

 ドアノブはついていない。

 押して開けろということだろうか。


 「笈川くん、開けてみたら?」

 「吹雪さん、どうぞ」


 松田さんとラズリィーが僕に開けるように促してくる。

 自分で触れたくないというよりは僕にサービスしてくれている感じだ。マキちゃんは、どうでもよさそうな態度で尻尾をゆらゆらしている。

 せっかく二人が譲ってくれたのだから、開けてみよう。

 僕は扉の前に立ち両手を持ち上げる。


 「じゃあ、開けるよ」


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