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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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フォロワーツ村 4

 あれは夢だったのだろうか。

 僕はそっと自分の頬に手を添えてみる。


 ココに、ラズリィーが・・・。


 一瞬だけ押し当てられた柔らかな感触と彼女のフワフワした髪の毛から漂う甘い匂いを思い出して顔が熱くある。

 アノ後、すぐに陸から食事の準備完了の声が聞こえてきてウヤムヤにしたまま戻ってきてしまった。

 どうしてあんなことになってしまったのか。

 蒼記さんとラズリィーの婚約の話を聞いて、どうして自分があそこまで憤ったのか。

 確かに、女性を子供を産む為だけに利用しているというのは愉快な話ではない。しかし、今改めて考えてみたら、この世界の女性は相手が貴族だからといって従わなければいけないわけではない。

 つまり、歴代中院家夫人はどういう理由があるのか想像も出来ないけれど、愛のない、絶対に愛されることのない結婚に同意していたということになる。そうだ、そうでなければ現公爵である逸勢さんと俊成さんが兄弟であることもおかしい。生々しい話だが、兄弟がいるということは最低でも2回は夫婦間に行為があったということだ。ただ、跡取りが必要なだけならば1人で充分なはずだ。

 中院一族の顔を思い浮かべてみる。

 それぞれタイプは違うけれど、美形だ。

 これは、歴代夫人側は自分の夫を愛していた?のかもしれない。若しくは、綺麗な子供が欲しかったとか?地球でも、頭のいい男性の子供が欲しいとか、見た目の良い男性の子供が欲しいという話がたまにテレビでも話題にあがっていた。そういう類の感情が歴代夫人側にはあるのかもしれない。

 ラズリィーも、どうしてそんな婚約を受け入れるに至ったのか、僕には想像も及ばないけれど、普段の2人を見ていても仲睦まじく決して強制された感じはない。


 でも・・・。

 何となく、カァーツと頭に血が上ったんだよね。


 自分でもよく解からない感情が一気に渦巻いて感情を波立たせて一気にあふれ出したような。今までに感じたことのない不思議な感覚だった。


 「笈川くん、ほら、これ食べごろだよ。冷めちゃうよ」


 考えに没頭していたら、松田さんが僕の皿の上に程よく焼けた玉葱の串を置いた。よくみると、他にも乗せられたお肉や野菜がいくつか入っている。


 「あ、ありがとうございます」


 僕は、今乗せられたばかりの玉葱の串を手に取って、ふぅーっと息を吹きかけてから齧る。

 じゅわっと玉葱特有の甘さが口内に広がる。美味しい。

 一口食べると、一気に食欲が湧いてきて皿の上の少し冷めた肉に齧りつく。


 「どんどん焼くよー」


 松田さんは自分の皿を片手に持ちつつも時々、鉄板の上の食材をひっくりかえしたりしている。自分がほとんど料理の手伝いをしてなかったことに気がついて慌てて、


 「松田さんに色々させてしまってすみません」


 と謝ったけれど、松田さんは全く気にしていなかったようで、


 「?子供は食べるのが仕事だよ。ほらほら、遠慮しない」


 と、どんどん焼けた肉や野菜を僕の皿に投入する。


 「そんなに食べきれないですよ」


 苦笑しつつも肉を食べる。普段の食卓でこれほどの量を皿に乗せられたら早々にギブアップしてしまいそうなのだけれど、開放的な空間だからだろうか。不思議といつもよりも食が進んでいると思った。後で食べ過ぎてお腹が苦しくなるかもしれないな。ふと、周囲に視線を向けると同じようにいつもより少し多めに食べているラズリィーといつもどおりにガツガツとお肉を齧っているマキちゃんが視界に入った。

 先程の衝撃でラズリィーを直視すると顔が熱くなりそうだったのでマキちゃんの方に声をかける。


 「お肉ばっかり食べちゃ駄目だよ。野菜食べてる?」

 「ウムゥ?」


 マキちゃんは大きめに切られたステーキをぺろりと食べて、


 「マキ、野菜も食べる。焼いた野菜美味しい。マツダ、野菜入れて」


 自分の皿の前で肉球をテシテシッとする。中身が成人男性だと思うと残念な感じが否めないけれど、見た目は可愛い猫なので愛らしいおねだりの風景に見える。見た目補正ってこわい。


 「はいよ。笈川くん、ラズリィーさん、昼からはどうするの?」


 松田さんがマキちゃんのお皿に野菜を入れながら聞いてきた。


 「どうしようか」


 ただボートに乗るためという目的でやってきたついでにバーベキューをしているだけで、他にこれといった目的はもうない。周辺を探索するといっても人がいるような場所はほぼ通過してしまっている。

 昨夜、眠る前に自主トレーニングついでに広範囲探索の能力スキルを仕様してみたけれど、ほんとうに周辺は山ばかりで特に気になるような場所はなかった。まあ、最初から期待はしていなかったけれど、中院公爵領には当代冬の巫女姫は不在のようだ。今後の予定としては、夏の祭典までの期限が近いこともあって他の領地に行く余裕もないし、王都に戻ってすることといえば、講義と自主トレーニングと迷宮ダンジョン探索の日々だ。


 「そうねえ。他にこの村周辺で出来ることといえば・・・ああ、確か、この湖の底に神殿がひとつあるわね」

 「神殿?」


 僕は、湖の方を見てみる。ボートで上から見る分には気がつかなかった。


 「神殿といっても、湖が出来る前からあるもので、何のための建造物かわからないから、便宜上神殿と呼ばれている場所なの」


 確かに、神様を奉る習慣のないこの世界で神殿といっても神秘的な用途ではないことはわかる。


 「マキ、潜った時に見た。白い建物だろう?」

 「そうみたいね。わたしも実際にみたことはないんだけれど、確か、あの山の辺りに神殿に繋がる洞窟があるらしくて、そこから中までは空気があって普通に入れるみたいよ」

 「へえ。中に入れるんだ」

 「ええ。中から神殿の外への扉は、水圧の関係かしら?開かないから中から湖の中へはいけないみたいだけど」


 水中深く沈んでる場所で扉を開けて一気に水が流れ込んできたら大惨事な気がするから開かなくても問題はない気がする。


 「試しに行ってみるかい?」

 「ええ。蒼記様からも行ってはいけないとは言われてないので危険はないと思うの」

 「わあ、楽しみだな」


 午後からは、洞窟と水中神殿探索に決まった。

 なんだか冒険譚みたいでワクワクする。

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