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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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模擬戦 再び 1

 食器を片付けた後、俊成さんに「やるなら庭でやって」と言われて僕たちは屋敷の外へ出た。

 外はもう日が落ちて山中なので真っ暗だ。コテージ周辺と違って外灯がないせいで余計に暗く感じる。


 「こんなに真っ暗だと夜中に用事出来た時の外出が危なくないですか?」

 「ああ、慣れてるから大丈夫だよ」


 俊成さんはなんでもないことのように言う。純粋に慣れなのか暗視の能力スキルがあるのかわからなかった。出てきた屋敷を振り返っても規模のわりに住人の人数が少ない所為か着いている照明が少なく闇夜ではわかりづらい。


 「さー!誰からだ?」


 実篤さんのご機嫌そうな声が聞こえる。


 「まあ、順番でいうなら俺が先かな?」


 昼間の延長戦だからね、と松田さんが名乗りを上げた。それを受けて皆が2人から距離をとるように離れる。離れたことで2人の姿が半分くらい闇に沈んだので僕は試しに暗視スコープを使っていると想定して自分の視力に能力スキルを展開してみる。実際に暗視スコープを使ったことがないのだけれど、しばらくイメージを固めていくとぼんやりながらも実際に見るよりは2人の姿が見えてきた。


 こう、到着した時の明るさは・・・地面の色が・・・


 昼間に実際に見た館前の記憶に沿って明るさを調整していくと少し時間がかかったけれど昼間と同じくらいの視界が確保できた。正味、5分くらいだろうか?一度、コツを覚えれば次回からは集中さえ出来れば瞬時に発動出来る。迷宮ダンジョンで夜の階層があっても重宝しそうな能力スキルが確認できた。僕は満足したので改めて目前で行われている模擬戦を観戦することにした。

王都での模擬戦の時は知らない人や知らない場所で気持ちが浮ついていたのか、結果だけは確認していたけれど、どういう戦闘内容だったのかまでは頭に入っていなかった。ここしばらくは甲斐さんに基礎訓練をしてもらっていたのもあるし、自身も迷宮ダンジョンで実際に戦闘してみて自分の欠点もなんとなくではあるけれど感じ始めている。今回、一緒にいるメンバーとは短い付き合いではあるものの、一緒に食事をしたりしてそれぞれをしっかりと認識も出来ている。ゲームでもそうだけれど、プレイの仕方というのは個性が出る。つまり、しっかりと確認すれば実篤さんとの戦闘に対する対策が立てられるのではないか、と思った。

 暗視に少し時間をかけた為、すでに松田さんと実篤さんの戦闘は序盤の間合いを確認するような穏やかなものではなく激しい攻防へと進んでいる。


 速い。


 殴りかかろうとした右手を松田さんに左手でいなされた直後に素早く実篤さんは蹴りを繰り出す。しかし、松田さんの身体はほとんど揺るがない。攻撃の手を緩めずに激しく前へ攻めてくる実篤さんに対し松田さんは特にダメージを受けている様子もなく時に防御し、時には身をかわし続けている。自分ならば一旦、間合いを取って確実な一撃を模索するだろうな、と思うけれど実篤さんは全く止まる様子がない。

 身軽さと瞬時に次の攻撃へと切り替える反射速度は迷宮ダンジョンのモンスターが遊園地のアトラクションに思える程だ。そして自分なら一撃でダウンしてしまいそうな実篤さんの攻撃を受けても動じない松田さんの防御力もまた凄まじいものだと実感する。しかし、いつまでも防御に徹していては決着がつきそうにない。実篤さんのスタミナ切れを狙っているのだろうか、と様子を窺ったが、あれほど激しく動いているというのに息が乱れている風もないところを見るとその作戦では時間がかかり過ぎる。一体どうするつおりなのか、と松田さんの動きに意識を集中したその時、実篤さんの拳を避けただけでなく自らも手を伸ばしてシャツの襟首を掴んだ。二人の距離が否応にも近くなる。頭突きでもするのだろうかと思ったら、


 ズドン。


 実篤さんが松田さんの目の前に転がされていた。どうしてそうなったのか速くて目で追いきれなかったけれど、最後はいつのまにか実篤さんが宙を舞っていた。


 「くそっ」


 実篤さんがすぐに立ち上がり再挑戦リベンジしようと松田さんへむかっていこうとすると、


 パンパンッ

 軽快な音を立てて暮さんが手を叩いていた。


 「はい。そこまで」

 「チッ仕方ねえな。松田、お前なんでいつも投げやがんだ」


 実篤さんは毒づくが松田さんはケロリと、


 「実篤くんから完全に一本とろうと思うと投げた方が速いでしょ。大外刈りとかだと倒せる前に体勢立て直しちゃうでしょ」

 「実篤君は、身軽だけれどその分、体重も軽いからね。もっと食事をしっかり摂ったほうがいいよ」


 暮さんが横から声をかける。

 確かに、夕食もこのメンバーの中で一番少なめだった。最後のデザートは食べずに飲んだとしか表現できない。


 「増えない体質なんだよ。このヒョロヒョロのオヤジ見たらわかんだろ」


 実篤さんが俊成さんを指差す。

 確かに、俊成さんだけでなく出会った中院一族は全員がスレンダーだ。誰が一番男性らしいかと言われれば断トツで実篤さんだろう。土ぼこりにまみれていてもイケメンはイケメンでしかない。


 「松田さん、今のって柔道だったんですか?」


 僕は松田さんに質問してみる。大外刈りは柔道の技だったと思ったからだ。


 「あくまでなんちゃってだよ。これ地球でやったら無効どころか大顰蹙だからね?実篤くんは士官学校出身だからね、正攻法で攻めるのは駄目だよ」

 「駄目なんですか?」


 僕は頭上にクエスチョンマークを浮かべているに違いない。

 士官学校というのは軍人さんを育成する学校だったはずだ。確か全寮制。この戦闘狂がよく無事に卒業できたものだと感心する。性格的な問題でも容姿から想像されるトラブルに関しても。この世界では同性愛にも忌避感が薄いらしいと知ってる分、余計に彼の学生生活を想像すると恐ろしい。


 「実篤君は、基本に忠実かといわれるとそうでもないけどね。基本が身についてる相手に基本通りの綺麗な技をかけるのは難しいものだよ」


 暮さんが教えてくれる。

 つまり、どういう技かわかっていれば回避するのが容易だと言いたいのだろうか。別にスポーツの大会ではないのだから相手の裏をかいた行動をしてもいいらしい。つまり、僕はまだ基礎の基礎を覚えたばかりの自己流で戦っているのだから、勝機があるとすればそこなのではないだろうか。


 「ハイハーイ!次、マキがいきまーす!」


 マキちゃんが実篤さんの方へ走っていくのがみえた。

 次の戦いが始まるようだ。マキちゃんもスピード型だと思われる。これはこれで見ごたえがありそうだ、と僕は一旦考えるのを止めて2人を見つめることにした。

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