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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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デザートタイム

 メインのホオグロ鳥の中に野菜などを詰めた蒸し料理や数点の付け合せ、サラダとスープの夕食がほぼ食べ終わる頃、暮さんがデザートを持ってくるよ、と食事をしていたリビングから出て行った。

 僕は、デザートの後に行われるであろう実篤さんとの遊びの時間が近付いてきたと思うと憂鬱だ。

 松田さんもマキちゃんもいるから刀で刺されるような大惨事は免れるだろうけれど、何発か殴られるのは覚悟しておかないといけないだろう。迷宮ダンジョンでモンスターとの戦闘には少し慣れてきたし、訓練という名目であれば甲斐さんとも何度か組み手のようなものをしたことがあるけれど、純粋な対人戦はやはり怖い。


 「笈川くん、そんなに心配しなくても遊びだからね?」


 余程、表情に出ていたのか松田さんが声をかけてくれる。


 「そうそう。無駄に丈夫だから、本気で燃やしてもいいよ」


 ニコニコと俊成さんが物騒なことを言ってくる。


 「心配しなくても致命傷にはしないから。それくらいの加減は覚えたんだぜ」


 実篤さんが余裕の眼差しを向けてくる。

 加減は覚えたって、それって失敗することもあるってことじゃないんですか?


 「こらこら、そんなに脅かしちゃ駄目だよ。あんまり意地悪するようなら俺が止めるからね?」


 僕の心にツッコミを察したのか松田さんが実篤さんを嗜める。


 「松田は過保護だな。ウチのオヤジは燃やしてもいいとか言ってるのになあ」

 「今までお前が他所様のところで暴れた苦情の数々を思えば妥当だと思うけどねえ。笈川くんみたいな大人しい息子が欲しかったわー」

 「何言ってんだ、クソオヤジ。まずお前からぶん殴るぞ」

 「嫌だよ。家の中で暴れるんなら家出するから」


 大人たち剣呑なセリフの応酬をしているけれど、表情に怒気は感じられない。これが彼等の通常運転のようだ。

 僕は自分の両親のことを思い出す。

 決して仲が悪かったわけではない。むしろ、特異体質のせいでたくさん気にかけてもらった自覚があるけれど、こういう口喧嘩のようなことをしたことがない。両親も僕を攻撃したりからかうような言葉を使わなかったし、僕も迷惑をかけて申し訳ないという気持ちから反抗期のような態度をしたことがなかった。話している内容は色々と危険な気がするけれど、少しだけうらやましい。

 皆のじゃれ合いのような会話を聞きながらそんなことを考えていたら暮さんがトレイにデザートを載せて戻ってきた。大きめのグラスにはいったそれを各人の目の前に暮さんがコースターを置いてその上に載せていく。

 グラスの中には白い液体が入っていて、よくみると同じような白いキューブ状のシャーベットのようなものが幾つか入っている。グラスの横に持ち手の長いデザートスプーンが添えられたのでそれで掬って食べるものなのだろう。


 「どうぞ。めしあがれ」

 「いただきます」

 「イタダキマース」


 皆が食べ始めたのにあわせて僕もスプーンでシャーベットを掬って口に運ぶ。

 シャリっとした食感と仄かな甘味。少し溶けてくると果実の欠片が中に入っていたらしく果肉の旨みが口内に広がる。シャーベットを浮かべている液体を掬って飲んでみる。こちらも仄かな甘味があるがアッサリとしている。


 「この白いのは牛乳ですか?」


 恐らく違うだとうことはわかっていたけれど他に白い液体が思い浮かばなかったのでそう質問する。


 「ココナッツミルクだよ。夏だからね」

 「僕、初めて飲みましたけど、飲みやすいですね」

 「マキはもっと甘くてもいい」

 「まあ、これは季節品だからね。男女関係なく挑戦しやすいものにしたんだよ」


 暮さんの趣味の喫茶店の規模がわからないけれど、通常、チェーン店でもない限り喫茶店というのはこじんまりとしていて男性比率が高そうなイメージがある。本格的な珈琲を出すなら尚更、若い女性ばかりがターゲットではないのだろう。


 「僕は、これくらいが好きですね。パフェとかは生クリームが多すぎて最初は美味しいんですけど胸やけしてきちゃうんですよね」

 「それはあるねえ。俺もパフェは疲れるわ。色々内容が盛り沢山すぎて、クリームかと思ったらアイスだったりするし」

 「マキはパフェ好き」

 「俺も好きだよ。見た目が華やかで楽しいし」


 僕と松田さんは苦手派。

 マキちゃんと俊成さんは好物派にわかれた。

 実篤さんは黙々とグラスの中のシャーベットをスプーンで粉砕している。あれは攻撃衝動なのか、単純にフローズンのようにして食べたいだけなのだろうか。暮さんは実篤さんの食べ方について何も言わないで自分の分を食べて味を再確認しているようだ。


 「去年の夏はスイカのゼリーだったよね。俺はあれ結構気に入ってたんだよね」

 「そうかい?スイカはまだ時期が早いから、もう少し後でよければ作るよ?」

 「マキにも!マキにも!」

 「わかったよ。ああ、そういえば夏の祭典が終わったら暫く迷宮ダンジョンに篭るつもりだから連絡は携帯電話の方にしてもらえるかな」

 「了解です。王都の迷宮ダンジョンですか?」

 「ああ。その予定だよ」


 どうやら暮さんは迷宮ダンジョンに行く予定らしい。篭るというからには1日2日の話ではないのだろう。あそこに宿泊できるような安全な場所があるのだろうか。ゲームでいうセーブポイント、セーフティゾーンのような空間を僕はまだ発見していない。


 「アッ、クレ、迷宮ダンジョン!お前のドラゴン。フブキにみせてやって」


 迷宮ダンジョンの話題で思い出したのだろう、マキちゃんが暮さんに話しかける。僕も言われて思い出した。食べさせて、と言い出さなかったマキちゃんを褒めるべきだろうか?


 「うん?構わないけれど、外に連れ出すのは場所が限られるから。・・・そうだねえ、笈川君」

 「はい」

 「君は確かまだ10階層付近だったかな?」


 僕は頷きながら、


 「そうです。手探りなのでゆっくりやってます」

 「そうか。なら、20階層。最低でもそこまで到達したらということにしよう。あまり上層へ連れていくと他のモンスターのストレスになるだろうからね」


 どうやらドラゴンが強すぎて10階層のモンスターの健康(主に精神的メンタル?)な被害があるらしい。モンスターの健康を気遣うっていうのが普通なのかはおいておく。僕の知らない迷宮ダンジョンのルールかもしれない。


 「はい。がんばります!」


 それでもドラゴンが見れるという約束が交わせたのは純粋に嬉しい。思わず顔が綻ぶ。


 「じゃあ、その為にも模擬戦といこうか」


 暮さんが立ち上がって食べ終わった食器を片付け始めた。

 嬉しさの後にくる憂鬱な気持ちをごまかしながら僕も手伝う。


 模擬戦、模擬戦。

 あくまで遊びのはずだ、怖くない。


 自分に言い聞かせるけれど、昼間の刀を突きつけられたショックが拭いきれないようで気持ちは萎縮したままだった。 


 


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