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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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中院家別宅へ

 ホオグロ鳥が大量に向かってきた混乱の中でウッカリ火の能力スキルを発動させてしまった言い訳をどうしようと頭を悩ませながら歩いていると僕の歩みが遅いことに気が付いた松田さんが足を止めて振り返った。


 「どうかした?もしかして、実篤くんが怖い?」


 悩んでいるメインは丸焼きの言い訳だけれど、確かにそれも少しある。


 「松田さんは平気なんですか?斬りつけられたんですよ?」

 「うーん。まあ、確かにアレはよくないことなんだけどね」


 と、松田さんは苦笑しながら、


 「中院一族は世間のイメージが悪いけれど、決して性根から悪党な訳ではないんだ。怒らせたら容赦ないのも原因の一つだろうけれど、彼等にだって行動理由がちゃんとある。たとえば、今日のことだと、実篤くんはどうして怒っていたと思う?」


 僕は実篤さんと出会った時の事を思い出して答える。


 「昼寝の邪魔をしたから?」

 「そうだね。ここは彼等の縄張りだ。そこで木を倒してあれだけの騒ぎを起こせば心配して飛び出してきても仕方ない」

 「心配?」

 「領民とも少し話をしただろう?皆、領主を慕っている。それは中院家が領民を大切にしているからだと思わないかい?今だって口では面倒そうに言ってたけれど鳥を配りにいっただろう?」


 確かに、僕が出会った村人たちからは中院一族への恐怖や不満は感じられなかった。鳥だってアイテムボックスがあるのならば全部自分達が持って帰っても良かったはずだ。


 「確かにそうですけど。でも、松田さんは謝ったのに斬りかかっていってたじゃないですか」


 松田さんが回避したから無事だっただけで一つ間違えれば大怪我をしていたかもしれない。


 「俺は回避できるからね。実篤くんは基本的に自分と対等かそれ以上の人にしか攻撃しない。笈川くんには脅しただけで、君が抵抗すれば一発殴られて昏倒させられて終わってたよ」

 「いや、抵抗する気はなかったですよ・・・って、それでいいんですかっ」

 「うーん。日本の価値観だと良くないのかもしれないけれど、この世界は実力主義な面もあるし、実篤くんは戦いたいのであって殺したいわけじゃないからねえ。子猫がじゃれてきてると思えばいいよ」


 自分と対等かそれ以上の人と戦いたいって、それって所謂、戦闘狂とか脳筋ってヤツだろうか。

 そんなことを考えている僕に松田さんが意外なことを言い出した。


 「ああやってわかりやすく攻撃してくる実篤くんよりも、中院一族で一番怖いのは蒼記くんだからね」

 「え?」


 唖然とする僕の横から、


 「マキもソウキが一番怖いって前言ったぞ?」


 とマキちゃんが言う。

 確かに、そのような話をアルクスアに行く前に聞いた気がするけれど僕にとって蒼記さんは美少女、ではなく美少年で、ちょっと僕をからかって遊んでいるくらいのイメージしかない。


 「普段は大人しいから忘れられがちだけどね。蒼記くんは実篤くんみたいに戦いを楽しみたいわけじゃないからね。邪魔だと思えば確実に殺しにくる。まあ、笈川くんが蒼記くんと敵対するような理由はないだろうから普通にしていればいいけど、一応忘れないでいて欲しいね」

 「たとえば、敵対ってどういうことがそれにあてはまるんですか?」

 「そうだねえ。うーん、たとえば世界征服とか?」

 「そんなことするわけないじゃないですか」

 「まあ、普通はそうなんだろうけど、政治の世界は色々ややこしいことが多くて。まあ、笈川くんはちょっと特殊っぽいから、良さん以外の権力者にうっかり利用されたりしなければ大丈夫だよ、多分」

 「多分って・・・」

 「気にしない気にしない。こうやってマキちゃんや俺がついている間に距離感をつかめばいいよ。その為の引率なんだから」

 「はあ・・・、がんばります」

 「よーし、じゃあ行くよ。のんびりしてたら暮さんが先に到着しちゃうからね」


 松田さんに促されて歩き出す。

 こちらから攻撃的な態度をとらなければやり過ごせるようだし、中院一族に関しての考察は一旦棚上げしておくことにする。

 問題は焼き鳥状態のホオグロ鳥だ。迷宮ダンジョンで会った時は火の属性獣である火山を連れていたから暮さんは問題ない。でも、松田さんには弓を渡す時に氷の能力スキルって自己申告してしまっているから誤魔化すのが難しそうだ。もし、僕が異端ディザスターだと知られても松田さんは態度を変えたりするような人ではないと思っているけれど、それは僕の一方的な希望的観測でしかないし、良さんにも出来るだけ知られないようにと言われている。

 どうしたものか。

 



 松田さんの先導で実篤さんの家へ到着する。

 中院公爵家本宅ほどではないけれど充分に広い屋敷の玄関を松田さんは躊躇いもなく開けた。


 「こんにちはー!松田でーす!おじゃましますよー!」


 誰もいない玄関ホールで声を張り上げる。

 本宅と同様に使用人はいないようで誰も出てこなかった。5分程待っても誰も出てこなかったので勝手に上がりこんで厨房へと行く。

 広い厨房の中の作業代に持って来たホオグロ鳥を置くと松田さんは冷蔵庫を開けたり常温の食料庫を開けて食材を確認している。実篤さんに作れと言われているからといっても他所の家の中で自由にして怒られたりしないだろうか、と内心ハラハラしながら見守っていると、


 「なんか騒々しいと思ったら松田さんか」


 と、廊下から俊成さんが顔を覗かせた。


 「おじゃましてます。森で実篤くんとコレとってきたんですよ」

 「そんなにたくさん。これ食べきれるかな」

 「そう思って暮さんに助っ人を頼みましたんで、余った分は日持ちするようにしてもらいますよ」

 「へえ。それは助かるわ」


 松田さんと俊成さんは親しげに会話をしている。

 勝手に家に入ってこられても気にならない程度には旧知の仲ということだろうか。こっそりマキちゃんに聞いてみると、


 「マツダは誰とでも仲良くする」


 という返事が返ってきた。

 確かに、松田さんが誰かを拒絶したり嫌悪している様は想像しにくい。包容力だろうか?多少のわがままは許してくれそうな気がする。気がする、じゃないな。刀振り回してくる相手でも受け入れるのだから太っ腹にもほどがある。

 そんなことを考えていると俊成さんが僕に声をかけてきた。


 「笈川くんも、この間ぶり。なんか熱出したんだって?」

 「はい。ちょっと能力スキルの練習してたらムキになってやりすぎたみたいで」

 「若いねー。顔色少し悪いけど、息子が何かやらかしちゃった?」


 息子?

 僕が逡巡しているとマキちゃんが横から、


 「サネアツが刃先突きつけたらしいぞ」

 「あちゃー。それはごめんね。落ち人は武器慣れしてないから驚いたでしょ」

 「少し、吃驚しました。あの・・・実篤さんのお父さん?」

 「そうだよ。乱暴な息子でごめんね」

 「あ、大丈夫です。一緒に鳥と戦ってくれたし、いい人だと思います」


 多少、お世辞な部分もあったけれど、一緒に戦ってくれたことは事実なので嘘ではない。

 そんなことよりも目の前の俊成さんと先程まで一緒だった実篤さんを思い出して比べてみる。

 どう考えても親子というよりは兄弟くらいの年齢差に見える。

 良さんの時といい、この世界は見た目と実年齢が比例していない気がする。松田さんだって実年齢よりも若くみえるし、本人に年齢確認してない場合は見た目で判断すると危険かも知れないな、と思った。

 

 

 

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