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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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色々、新発見

 僕はとりあえず槍を指輪に戻してホオグロ鳥の死体集めを手伝うことにした。

 死体を見ていると誰か倒したのかハッキリと違いがわかる。

 槍で刺した傷や少し焼けているのが僕。

 噛み痕や爪で引き裂かれているのがマキちゃん。

 外傷がほとんどなく首が折られて即死している風なのが松田さんか実篤さんだろう。

 不思議と刀で切られたと思われる死体はなかった。

 チラリと実篤さんの横に無造作に転がされている刀を見た。やはり刀身が血で汚れている風ではない。刀で切らずに首を叩き折っていたのだろうか?自分のことに必死で皆の戦い方を観察する余裕がなかったのが悔やまれる。

 そんなことを考えながら作業を進めると、ちょっとした鳥の小山が出来た。


 「これ、どうやって運ぶんですか?」


 そもそも、食べきれる量には思えない。

 少なく見積もっても20匹以上はいるだろう。


 「そうだねえ。さすがに全部は食べきれないだろうし。どうする?実篤くん」


 松田さんが実篤さんに声をかける。実篤さんは面倒そうに起き上がって、


 「チッしかたねえな。適当に近くの村のヤツラに配ってくるわ。松田、残り持って先に俺ん家行っといて」


 そう言うと、ホオグロ鳥の小山の前で刀をなぎ払った。

 その払われた空間が紙か布であったかのように切れ目が出来てペランとめくれた。そのめくれた部分は真っ暗闇で急に空中にブラックホールが出現したように見えた。

 唖然とする僕の眼の前でそのブラックホールに向かって実篤さんが無造作にホオグロ鳥を投げ込んでいく。瞬く間に中に吸い込まれるように消えていった。


 「じゃあな」


 トンッと軽く助走をつけた思うと実篤さんがあっという間に木の上に飛び上がって、そのまま漫画の忍者みたいに木から木へとピョンピョンと飛び乗りながら山を下っていった。恐らく近くの町へ向かっているのだろう。実篤さんが作ったブラックホールはすでに跡形もなく普通の空間に戻っていた。

 何事もなかったように残りのホオグロ鳥を抱えるように拾い上げている松田さんに、


 「今の、アレって何ですか?」

 「アレ?」

 「あの、ペラーンってなったヤツです」

 「ああ。えーと、どう説明したらいいんだっけ?」


 少し首を傾げた松田さんにマキちゃんが尻尾でピシリと足を叩いて、


 「マキ、知ってるぞ!落ち人はアレ、アイテムボックスって言うとわかりやすいんだぞ!」

 「ええと、こう・・・空間に穴を開けていれる倉庫みたいなもんだよ。だよね?マキちゃん」

 「そーみたい。カイが言ってた」


 なんとなく予想はしていた答えだったけれど、今までこの世界で使っている人がいなかったからアイテムボックスや空間収納系能力スキルはこの世界には存在しないのだと思っていた。


 「なんとなくわかりましたけど。アレは、珍しい能力スキルなんですか?初めて見ましたよ?」

 「珍しくはないかな。空間転移、瞬間移動系の能力スキルが使える人なら使えることが多いみたいだけど、普段使うことはないね」

 「え?どうしてでるか?便利なのに?」

 「普段の生活であんな量を持ち歩くことは稀だし、入れたまま忘れてしまったり入れたつもりで忘れ物したりするしね。やっぱり目に見える場所に持てる量だけ持つのが間違いないからねえ」

 「あー、なんとなくわかりました」


 この世界は別にモンスターが溢れていて危険なわけでも冒険者がギルドにモンスター素材を売りに行くわけでもない。文明度も高いので輸送技術も発達しているのだからアイテムボックスの出番は少なそうだ。

 「一応、確認しますけど、あの中に入れた物って時間経過はあるんですか?」

 「あるんじゃないかな?もしかしたら時空系の能力スキル持ちなら時間も止められるのかもしれないけど。ためしに後で暖かいお茶でも入れてみようか?」


 松田さんの申し出でに試しにやってみてもらおうかな、と思っていたら、


 「ムリだよー。マキ、アイス溶かしたことある」

 「あらら。それじゃあ、普通は無理っぽいねえ」

 「そうですね」


 どうやら入れて置けるだけの収納のようだ。

 時空系の能力スキルかぁ。もし時間を止めたり出来るようになればアイテムボックスの中身も長期保存が出来るのかもしれないけれど、それ以前にアイテムボックスが使えるようになるのが先かな?

 これも今後の課題にしておこう。


 「じゃあ、そろそろ実篤くんの家へ行こうか。彼が戻ってくる前に下ごしらえくらいはしておきたいねえ」

 「え、大丈夫なんですか?」


 実篤さんの家に行くのは少し怖い。また刀を向けられたらと思うと不安だ。しかし、松田さんは微塵もそんなことを考えてなかったようだ。


 「確かに。鳥を焼くのは出来ても捌くのは自信ないなぁ。助っ人頼もうかなあ」


 と、別の心配をしている。

 確かに、僕も鳥を捌ける自信はないですけどね。

 松田さんは片手で鳥を抱えなおして空いた手でポケットから携帯電話を取り出した。そして誰かへと電話をかけだした。

 この世界にもケイタイあったんだ・・・。

 テレビ電話があるんだから当然あっても不思議ではなかったけれど、この世界の人が使っているところをみたことがなかったから・・・。なんか今日は驚くことばかりだなぁ。そんなことを考えていると通話相手と繋がったようだ。


 「あ、暮さん?お久しぶりですー、松田です」


 ん?


 「ちょっと今、中院公爵領に来てまして、ホオグロ鳥が大量に捕れたんですよ。ええ、それを実篤くんの家でこれから捌くんですけど、ちょっとお手伝いしていただけたらなーと、ええ、そうです。ありがとうございます、助かります。よろしくお願いします。では、現地で。はい、失礼します」


 ピッと通話終了して携帯電話をポケットにしまうと、


 「捌く当ても出来たし、行こうか」


 と歩き出した。

 僕は自分でも持てるだけのホオグロ鳥を抱えながら、


 「暮さんって、あの、シノハラさんの息子さんの暮さんですか?」

 「そうだよ。あれ?知り合いなの?」

 「ええ、少し前に迷宮ダンジョンで会ったことがあって」

 「そっか、なら安心だね」


 松田さんは笑顔で答える。

 それとは逆に僕は不安感しかない。

 あの潔癖で真面目そうな暮さんと実篤さんの組み合わせは波乱の予感しか感じない。

 そんな不安で足取りが重くなっていた僕の横にマキちゃんがきて尻尾でピシピシッと足を叩いてくる。


 「何?」


 僕がマキちゃんの方を向くと、マキちゃんは小声でこう言った。


 「トリ、丸焼きになってたヤツの言い訳考えておけよ」


 ヤバイ、うっかりしていた。

 僕の足取りは益々重くなっていくのだった。

 

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