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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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ロゼ村 2

 朝の目覚めはかなりよかった。

 昨日はほぼ1日馬車で座っていたので疲れて寝坊するかもしれないと思っていたけれど、食後に露天風呂でゆっくり温まって直ぐに眠ったのがよかったのかもしれない。

 頭がスッキリしていて清々しい。

 時計を見ると5時半くらいだった。

 窓の外はまだ少し薄暗い。山の中なのも理由の1つだろう。

 着替えてキッチンへ行って冷蔵庫を開ける。

 蒼記さんの言った通り、色々な食材が詰め込まれていた。

 僕は、卵とハムを取り出す。

 いきなり高度なことをしようとするから失敗するのだ。

 まず簡単そうで自分が食べたことがある味付けのわかりやすい料理から挑戦する。

 フライパンを手に取ってコンロに置く。


 まず、火をつけて暖めてから・・・


 コンロの着火ボタンを探したけれどわからない。


 まさか、ここで躓くとは予想外だった。

 いつも珈琲を温めるのは電気ポットだったのでコンロはノータッチだったのが災いした。

 テレビと一緒で少し日本と仕様が違うようだ。料理教本をめくってみても斬り方や軽量については載っていてもコンロの起動方法がない。

 仕方がないので全方向から眺めてみる。

 わからない。

 実は壁にスイッチがあったり・・・しなかった。


 「うーん」


 1人で唸っていたらコンロに載せていたフライパンからシューと音が聞こえたような気がした。

 もしかして、とコップで少し水を入れたらジューっと泡だって蒸発していった。

 どうやら物を載せると温度が自動で上昇する仕組みだったようだ。

 温度調節に疑問を残したままだが調理に取り掛かる。

 幸いにしてハムエッグは繊細な温度調節がなくても作れる。今回は、多少焦げても良しとすることにした。

 どうにか食べられそうな体裁を整えて皿をリビングへ並べているとマキちゃんが起きてきた。

 マキちゃんは特に文句も言わないで食べてくれた。

 多少、卵が不恰好だったが味はほとんど素材勝負なので不味くはなかったはずだ。

 朝食で使った皿や調理器具を片付けてコテージの近くを散策することにする。

 マキちゃんは当然のように付いてきた。

 外は、似たようなコテージが数件と村人が住んでいる住宅が200メートルおきくらいの距離で建っている。一応、人が歩けるようになってはいるけれど舗装された道ではない。


 「確か、この村は畑と酪農がメインなんだよね」

 「ブドウとリンゴが多いはずだ。ジュースおいしい」


 マキちゃんの感想は欲望に忠実だ。


 「んー。ブドウが有名だからロゼ村なの?」


 確か、ワインの種類で白とかロゼとかいうよね?飲んだことがないので詳しくはない。


 「なぜ、ブドウだからなのかわからん。ここは、元々、ローファゼット村という名称だったのだが、何代か前の領主が長いと面倒だからとロゼ村に改名された」

 「そ、そうなんだ」


 長いからって理由でいいんだ。

 そんなことを話ながら歩いていると畑が見えてきた。村人らしき人が作業をしている。


 「おはようございます」

 「ああ。領主様のお客さんだね。おはようございます。早起きですな」


 作業用帽子を深くかぶっているので顔は見えなかったけれど、中年くらいの男性のようだ。


 「早く起きれたので。これは何の畑ですか?」

 「ここは、幾つかの葉物野菜が植えてあります。領主様のお屋敷専用の畑です」

 「そうなんですか」


 さすが公爵家。専用の畑があるらしい。

 男性が誇らしそうに野菜の種類を説明してくれた。やはり領地の住人にとっては領主様は怖い存在ではないらしい。僕から見た中院家の人も噂ほど脅威には感じなかった。勿論、まったく根拠のない噂というわけでもないだろうから、政治的な面と普段の生活の部分が違うのかもしれない。

 お礼を言って来た道を戻る。

 一旦、コテージに戻ってラズリィーが来るのをまってから本格的な探索の予定だ。



 暇つぶしに料理教本片手に冷蔵庫の中身で出来そうなメニューを考えていたら、蒼記さんとラズリィーがやってきた。リビングに案内して珈琲を入れて少し世間話をする。


 「蒼記、マキ、肉、食べたい」

 「お肉ねえ。あとで持ってこさせるよ」

 「やったー!」


 マキちゃんは無邪気に喜んでいる。


 「この辺りには山しかないから急いで探索するほどのことはないけれど、どこから見て回りたいの?」


 蒼記さんが、僕に聞いてくる。


 「えーと。とりあえず人のいそうな場所と、山を少し登ってみたいですね」


 山は自分の体力作りと索敵の練習も兼ねている。野生動物相手にどこまで索敵できるか確かめてみたい。


 「山ねえ。特別、危険な野生動物はいないけれど、山頂の方に登ると中院の者に出くわすかもしれないね」

 「あ、城で蒼記さんのお父さんには会いました」


 僕がそう言うと蒼記さんは困ったような微妙な笑顔で、


 「どうだった?」

 「えーと。思ってたよりは怖くなかったです」

 「あはっ。あははっ。笈川くん、正直過ぎだよ」


 蒼記さんがとても愉快そうに笑った。


 「まあ、父のことはいいよ。家からほとんど出ないから。山の中でもし危険そうなのに出会ったらマキちゃんを囮にして逃げた方がいいよ」

 「ウム、マキが迎え撃つ」


 マキちゃんが神妙な態度で答える。一体、山の中にいる中院家の人ってどれくらい凶暴な人なのだろうか。


 「あの、逃げると余計に追ってこられると思うのでマキさんの戦いを見学していたほうが無難では?」


 今まで黙って話を聞いていたラズリィーがおずおずと意見を言う。


 「あー。そうかもね。大人しく見守って向こうが立ち去るのを待つほうが無難かもね」

 「だな。マキもそー思う」


 満場一致で見守るに決定した。

 逃げると追っかけてくるって、なにそれ、怖いよ。

 楽しい山登りがホラーゲームみたいになってるじゃないか。


 その後、蒼記さんは公務があるからと帰って行った。

 ラズリィーは夕方まで僕の探索に付き合ってくれるらしい。

 珈琲カップを洗う時に思い出してラズリィーからコンロの火力調整の仕方を聞く。


 「コンロ本体にはないわ。たとえば、フライパンならココ、鍋ならココね」


 そう言って持ち手の一部分を見せてくれた。

 調理器具側に調節部分があるとは盲点だった。

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