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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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ロゼ村 1

 中院公爵領内ロゼ村に到着したのは午後9時に近い時刻だった。

 早朝に王都を出発して寄り道もせずに進んだのに10時間以上かかったのは山道だったせいだろうか。

 途中から山道しか見ていない。

 王都に比べてかなり人口の少なそうな村落の中にこじんまりとしたコテージがあった。マキちゃんと2人には少し広いかもしれない。


 「ようこそ。長旅おつかれさま」


 馬車を降りると蒼記さんが出迎えてくれた。

コテージを照らす照明と夜空の明かりの下に美しい青銀の髪が反射してきらめいている。

 相変わらずの美少女ぶりだ。直視するにか勇気が必要だ。


 「こんばんは。お久しぶりです」

 「マキもキタ!」

 「マキちゃん、部屋に食事用意しておいたよ」

 「マキ、食べる」


 マキちゃんは、コテージの中へ飛び込んでいった。

 途中から、お弁当もオヤツも食べつくしてずっと眠っていたから空腹なのだろう。


 「笈川くんも、今夜はゆっくり休んでね。また明日の午前中にラズと顔を出すよ」

 「はい」

 「真王陛下から、普段の食事は自分で作ると聞いているけど、今夜は遅いから用意させてもらったよ。基本的な食材は冷蔵庫に入れてあるから自由に使ってね」

 「ありがとうございます。あ、これお土産です」


 持ってきた蒼記さんとラズリィーへのお土産を差し出すと受け取ってくれた。


 「そういえば、コレもありがとう」


 蒼記さんが少し横を向いて髪留めを見せる。

 僕がアルクスアで購入した髪留めが照明に反射してキラリと光った。


 「あ、あのっ。僕、気が付かなくてごめんなさいっ。でも、使ってくださってありがとうございますっ」


 混乱して誤っているのか礼を述べているのかごちゃごちゃになってしまった。

 蒼記さんは、ふふっと微笑んで、


 「いつものことだから。気にしないで。それに、コレ、ボクに似合ってるし」

 「とてもお似合いです!」


 確かに似合っていた。

 あの髪留めも今日だけの人生でも本望だろう。

 同性とわかってもやはり翻弄されることにかわりはなかった。


 「では、また明日ね」

 「はい。おやすみなさい」


 帰っていく蒼記さんの背中が見えなくなるまで見送った後、コテージに入った。

 玄関で靴を脱いでリビングへ行くとマキちゃんはすでに食事を終えて毛づくろいをしていた。テーブルの上にはオニギリとハンバーグとサラダがワンプレートの上にのっていた。その少し横に、


 『お疲れ様です。

  明日、会えるのを楽しみにしています。』


 アルクスアで何度かみることのあったラズリィーの字でメッセージカードがそえられていた。


 「フブキ、よかったな」


 マキちゃんに言われてカァッっと一気に顔が熱くなる。


 「な、なにが?」


 出来るだけ冷静を装ってみる。


 「オニギリ、フブキの国の食べ物だろ。よかったな」

 「あ、ああ、うん」


 なんだ、そういう意味か。

 確かに、オニギリは日本お馴染みだ。こちらの世界の飲食店ではみかけたことはなかったけれど、日本でもオニギリはレストランメニューではないので気にしていなかった。

 メッセージカードがそえられてあったということは、これはラズリィーが作ってくれたのだろうか。

 お菓子に引き続き手作りの料理までいただけるなんで光栄だ。

 感謝の気持ちで手をあわせてからオニギリを食べる。

 ハンバーグと一緒に食べるためだろうか、具は入ってなかったが塩加減は完璧だった。


 食事の後、食器を手早く片付けてコテージ内を探検する。

 1階に玄関とキッチン、リビングと手洗い場。2階に宿泊用の部屋が3つ。真ん中の部屋を開けて階段を上って右が僕、左がマキちゃんの部屋になった。

 お風呂が見当たらなくて1階を捜していると手洗い場の横に扉があった。開けてみると外へ続く道がある。簡易的な屋根が付いているので敷地内ということだろう。道沿いにいくと小さな小屋があって中は脱衣所のようだった。


 もしかして。


 期待を胸に靴を脱いで脱衣所の奥の扉を開けると風呂があった。

 しかも、露店風呂だ。


 「わぁ」


 周囲は簡単な目隠しがあるだけで上は完全に開放されている。

 夜空をみながら入れるようだ。

 僕はマキちゃんを誘ってお風呂に入る。


 「マキ、お風呂あんまりスキじゃない」

 「そう言わないで付き合ってよ」

 「マキ、プールの方がスキ」

 「今度ね。ここにはお風呂しかないんだから」


 ブツブツ言いながらも一緒に入ってくれる。

 猫なので当然、お湯に入ると毛が完全に肌に張り付いて痩せてみえる。マキちゃんは短毛種だから驚くほどのことではなかったけれど、やはり濡れてしまうと多少は悲哀を感じさせる風貌になる。


 「夏になったら、プールいく」


 濡れた耳が気になるのか、しきりに顔を洗っている。

 僕は、湯船につかって空を見上げる。

 よく晴れていて星空が綺麗だ。


 「プールってどこにあるの?」


 市民プールならぬ王都民プールでもあるのだろうか。


 「城の中にもあるぞ?」

 「え?そうなの?運動場の近く?」

 「いや、この間の食堂の近く」

 「え?それは王族の人用なんじゃないの?」


 食堂は、王族の私的空間の方にあったはずだ。


 「マキ、よく行く」

 「ええー」


 怒られないのだろうか。

 いや、マキちゃんは見た目が猫だからOKなのか?

 良さんに聞いてから行くべきだろう。あと、水着を持っていない。


 「あそこがイヤなら、湖もある」

 「近く?大きいの?」


 湖だと淡水魚が釣れるのだろうか。


 「ん。ウチの領内にある。それなりに大きい。マキ、よく魚摂りにいくとこ」

 「そうなんだ。それ楽しそうだね」

 「ウム、フブキも一緒にやるといい」


 それからしばらくマキちゃんの過去の釣果自慢を聞きながらお風呂を満喫した。

 翌日からは、この村周辺の探索と自炊の訓練だ。

 探索をしながら広範囲探索の能力スキル能力検知スキルレーダーを上乗せできるようになれば離れた所からでも能力発動者がいればわかるようになる。最終的には、発動していなくても、どこにどんな能力スキル持ちがいるかわかるようになれば巫女姫捜索はかなり進むのではないだろうか。

 あと、ラズリィーへの能力スキル付与についての実験を始めたいと思っている。

 上手くいけば前回のような倒れてから対応ということにならずにすむはずだ。

 やりたいことが色々増えたけれど、1つ1つ頑張っていこう。

 決意を新たにしながらマキちゃんの毛をバスタオルで拭いた。

 尻尾は触られたくないらしく拭かせてくれなかった。

 

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