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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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中院公爵領へ

 暮さんに食事を作ってもらった日の後も、僕は毎日迷宮ダンジョンへ潜っている。

 肉厚な獣系モンスターや果実を見つけたら持てる範囲内で持ち帰る。たくさん持って帰っても食べれなかったらガッカリするし、美味しいものを見つけたら狙って捜すこともあるけれど、出来るだけ色んな食材を覚えたいので出来るだけ初めて見つけたものにしている。

 料理を覚えてみたいと良さんに言ったら、今度の旅、中院公爵領での宿泊先をコテージにして自炊してみたら?と提案された。中院公爵領は山岳地帯で、あちこちに放牧してある牛や羊、そして果樹園などがある平和な土地らしい。

 そのわりに領主様の評判は苛烈なわけだが、領民はどう思っているのだろう。そこに住んで生活しているのだから案外、中院公爵を慕っているのかもしれない。

午前中の講義も今は能力スキルの種類についてを重点的に教えて貰っている。

 比較的誰でもが持っているものから、種族別に多い特徴的なものなど、知っていれば人前でどこまで使っていいのかの判断にもなるし、異端ディザスターである僕は、この世界に存在する能力スキルのすべてが使えると言われている。しかし、その存在を知らなければ使うことは出来ないだろう。

 日本にいた頃に遊んだゲームや本の中の魔法の類は比較的簡単に使うことが出来たけれど、知識にないことは思いつきにくいし出来る自信が持てない。

 勉強は大切なのだ。

 ただし、ありがちな攻撃系魔法は教えてくれるけれど、デス系、一撃必殺のような能力スキルについては講義で触れられたことがない。存在するならば、確実に使えるだろう僕に教えるのは良さんからストップがかかっているのかもしれない。

 世界の気候を変化させる巫女姫の能力スキルがあるのに、世界に干渉する能力スキルが他にないのは不自然だと思う。恐らくあるのだろう。知らなければ対処も出来ないが、知ってしまって僕が暴走したり何者かに利用されるよりは良いとの判断だろう。

 たまたまシノハラさん親子が世界征服の思想をもっていなかったから現状がある。

 僕がどれだけそんなつもりは無いと訴えても所詮は子供の言うことだ。気が変わるかもしれないし、誰かに都合のよい嘘で丸め込まれるかもしれない。そう回りは考えて僕を恐怖する人もいるだろう。

 今は、良さんの庇護下で実力と知識の下積みをしておく期間なのだ。



 僕は中院公爵領への旅の準備をしている。明日の早朝に出発する予定だ。

 旅行用の鞄(スクールバッグを少し大きくした程度)に着まわしのきく普段着と下着類、初心者用料理教本。ラズリィーと蒼記さんへの手土産を詰めたら完成だ。

 中院公爵領は広大だけれど人口が少ない。

 農業などを営む住人が住んでいる村落が少しと山と牧場と畑くらいなので貿易都市アルクスアよりは短期間の日程で終わると言われているが、あくまで目安だ。僕が気になる事柄があれば納得するまで滞在しても良いと許可を貰った。

 今回は、意識して捜索の能力スキルを発動できるようになるのも目的の一つだ。

 自分で人を捜し出す能力スキルが使用可能になれば、茉莉花さんの同行を取り下げれるのではないか、という打算が少しある。

 今回は、捜索範囲が少ない事とラズリィーからの私的な誘いという建前で茉莉花さんの同行を見送ってもらった。

 茉莉花さん、小柄で和服の似合う一見すると大和撫子の少女。

 ただし、言動が幼い。そう年齢の変わらない僕からみても幼い。そして、わがままだ。

 ラズリィーとの相性が悪いのも避けたい理由の一つだ。

 僕の異端ディザスターを知っている人を出来るだけ増やしたくない。けれど、ラズリィーの体調はいつ不安定になるのかわからない。この現状で、多少、可愛いなと思っていても新しい同行者は増やすべきではないと思う。

 旅行の準備を終えたので柴犬たちと運動場で遊ぶ。また留守にするので今日は充分に遊んであげたい。

 一緒に走ったり、補助アイテムで作ったフリスビーを投げたりして過ごしていたらマキちゃんが来た。

 今日もどこから見てもロシアンブルーだ。艶のある毛並みが美しい。


 「フブキ、マキも一緒にいくぞ!」


 舌足らずな声で宣言する。

 黙っていればセレブ感があるのだけれど、話すと一気に幼くなる。やはり猫の口で喋りにくいのだろうか。


 「一緒にって、中院公爵領?」

 「そうだ」

 「甲斐さんも?」

 「マキだけだ!」


 何故かよくわからないけれど同行者が1人出来た。

 マキちゃんは、蒼記さんがあまり好きそうではないけれど、よく行く気になったものだ。


 「そして肉を食べるぞ!」


 どうやら食欲のせいだったようだ。

 僕としては相手がマキちゃんでホッとしている。

 別に甲斐さんが嫌いなわけではない。大人の尊敬できる男性だと思っている。

 それ故に少なからず緊張もする。マキちゃんも恐らく甲斐さんと同じくらいの年齢なのだろうけれど、見た目のせいで気楽に接することが出来る。マキちゃんもわかっていて遊んでくれていると思う。もしかしたら甲斐さんがそれを見越してマキちゃんを寄こしてくれてるのかもしれない。


 「僕も楽しみだな」


 食は生きていく上で大切なことだと思う。

 食べることが苦痛だと感じている時は心が病みやすい。過去の自分を振り返ってそう感じる。

 美味しく食事できると気持ちが軽くなる。明日も頑張るぞと思える。


 「マキ、お腹空いた」


 肉の話をしたら空腹になったようだ。

 時計を見たら午後2時過ぎだった。


 「部屋でお菓子でも食べる?」

 「食べる!」


 マキちゃんは元気よく返事をくれる。


 「じゃあ、部屋戻ろうか」


 僕は柴犬たちとマキちゃんと一緒に部屋へ戻ってお菓子を食べた。





 翌朝、日も昇っていない4時に城門前で馬車に乗り込む。


 「気をつけていっておいで。夏の祭典までに戻ってくれば長居してもいいからね」


 見送りに出てきてくれた良さんの言葉に頷く。

 あと一月程過ぎれば夏の祭典が始まるらしい。夏の巫女姫の神事を見学するようにと言われている。

 春の祭典でのラズリィーを思い出して複雑な顔をしていたのだろう、


 『他の四季姫は彼女ほどの消耗はしていないから大丈夫だよ』


 と言われた。巫女姫としては元々、平民であったラズリィーの器が極端に足りなかっただけで、他の巫女姫たちは多少は寿命を削っているけれど倒れたりすることはないらしい。

 それでも、他の人々に比べて払っている犠牲が大きいとは思うけれど、僕にはどうすることも出来ないので何かを言う資格はない。対応策もないのに感情論をぶつけても仕方がない。


 「マキ、フブキ、守る。安心していい!」

 「頼んだよ」


 甲斐さんに頭を撫でられて誇らしそうにマキちゃんが馬車に乗り込んだ。


 「「いってきます」」

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