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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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異世界の技術

 「身代わりって・・・」


 今まで、魔族だとか、王だとか、言葉だけではファンタジーな設定が飛び交っていたけれど、これは本格的に魔法で分身を作ってくれるとか、そういう展開なんだろうか?

 喋る猫がいる時点で、かなりファンタジーな状況ではあるんだけれど、目の前の自称魔族の甲斐さんが、余りに普通の優しそうなおじさん過ぎて、頭のどこかで、まだ夢なんじゃないかと思ってる部分があるんだよね。


 「吹雪君の話を聞く限りでは、ご両親は普通の人間のようだから、出来れば事情説明しないでおきたいからね。もちろん、君が、きちんと説明しておきたいというのならば、私が挨拶に言ってもいいのだけれど。・・・まあ、オカシイ人扱いされるだろうし。そういう場合、家族に変に思われないように留守に出来るように、人間には君がいるように思わせる為のダミーを置くんだ」


 つまり、僕が望めば、甲斐さんは両親に挨拶もしてくれると。

 エエ・・・行き来出来るって確かに言ってたけど、魔族って、そんな簡単に人間に挨拶しにいっちゃっていいの?

 これは、夢にしては現実的というか、夢がないというか・・・

 ラノベだと、普通はもう帰れないけど、帰る方法さがしつつ大冒険するのが定番なんだよ?

 なんで、アフターケア万全での異世界訪問みたいな展開になっちゃってるの?


 「その、身代わりっていうのは・・・・魔法で僕の分身を出したり・・・?」

 「魔法、ではないね。どちらかといえば科学だね。君の細胞サンプルから、君の等身大のダミーをつくって、君の思考パターンをある程度入力して自走させておくんだ」


 エエ・・・まさかの、科学。


 「私は、専門家ではないから、原理はわからないけれど。魔法で、分身を造るよりも長期間の安定した稼動が保証されているね」


 あ、魔法でも出来ないわけじゃないんだ。


 「帰還する時に、身代わりから蓄積データを回収して、留守中の約束事などにも対応できるよ」


 ナニソレ、ハイテク


 「どうする?今日は・・・もう日が暮れるから、明日にでも用意しにいこうか?流石に、今すぐ調査に行って帰れるようにするには、ここは少し王都から離れているから。今夜は、マキの家に泊まってゆっくり休むといいよ。移動で、どこかに負荷がかかっているかもしれないしね」

 「はい・・・お願いします」


 僕は、甲斐さんに、深々とお辞儀をした。

 怒涛の展開過ぎて、頭がついていかない。もう流されてしまおうと思う。

 出て行けと言われても、他にアテも全くないし。

 一人でも戦えるようなチート技能に目覚めたわけでもないしね。

 この世界にきて、唯一、変わったことは、猛暑から逃れられたこと。

 涼しい。家のクーラーでは、この適温空間はありえなかった。

 それだけで、今は満足しよう、うん。




 甲斐さんは、また明日、と挨拶して帰宅していった。

 僕は今、一人ぼっちで、マキちゃんの家の客間にいる。

 最初にいた部屋の隣なので、移動距離は短い。

 窓からは、夕暮れの色が広がっている。

 簡単なテーブルとイス、セミダブルのベッドがあるだけのシンプルな内装だ。色調も白が主流で、泊まったことはないけれど、ビジネスホテルを思い出させる。

 する事もないので、ベッドに転がってゴロゴロとしている。

 普段着のまま、ポケットの中も空っぽで、本当に身一つで落っこちてきたらしい。

 マキちゃんは、「メシもってくるから、待ってろ!」と出て行ったきりだ。時計をしてないから、正確な時間はわからないけれど、1時間くらいは経ったかな。

 食事、マキちゃんが作っているのだろうか?

 僕は、立ち上がってエプロンをしてフライパンを振るう姿を想像してニヤニヤしてしまう。

 猫が、料理・・・見てみたい。

 食事の内容については、あまり心配していない。

 家の内装や、甲斐さんの服装をみても、異世界転生にありがちな、地球との文明格差を感じないし、身代わりの件から推察しても、こちらの世界の方が発達している可能性が高い。

 何より、『落ち人の日常的な行き来』を示唆する発言が多いこと。

 それは、つまり、素材がドラゴンの肉であったとしても、落ち人の僕が食べられる状態で提供できる、ということだ。幸いにも、猛烈な猫舌であることを除けば、食の好き嫌いはない。初めての異世界料理なので、多少変なメニューでも楽しめると思う。


 ポスッポスッ


 部屋の扉に何か、柔らかい物がぶつかるような音がした。


 「フブキ、マキなのだ。扉を開けてくれ」


 廊下側から、マキちゃんの声がした。

 先程の音は、尻尾でノックした音、かな?

 僕は、ベットから起き上がって扉を開けると、スルリとマキちゃんが入ってきた。

 その背中には、赤頭巾ちゃんが手に持ってるような籠が器用に赤いリボンで括り付けられている。


 「コレ、メシ。背中から取ってテーブルにおいてくれ」


 僕は、言われるがままに背中から、テーブルに置く。

 手でノックしなかったのは、立ち上がると籠が斜めになってしまうからかな?

 どうやって背中に載せたのだろう。


 「マキ、お茶持ってくる。先、食べてていいぞ」


 どうやら、二人分(一人と一匹?)入っているようだ。

 マキちゃんが飲み物を取りにいった。

 僕は、籠をそっと開けて、中身を覆うように上に置かれている白いレースのハンカチーフを持ち上げてみた。

 籠の中には、


 「サンドイッチ?」


 が、入っていた。そして、少しのから揚げと、チーズケーキだとしか思えないデザートのようなモノ。



 『ピクニックのお弁当は私が作るね?デザートも持っていくよ♪』


 みたいなシチュエーションの女子力高いメニューが飛び出してきた。

 籠といい、結わえあったリボン、レース・・・サンドイッチの綺麗な並び方。

 これを、マキちゃんが用意したという現実・・・


 「オマタセ!食べるのだー!」


 マキちゃんが片手にティーポット。片手にカップ二つを持って二足歩行で戻ってきた。


 ポットの中身は、紅茶でした。

 サンドイッチも、デザートも大変美味でした。






 


 

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