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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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迷宮9階

 僕は弓を引く。

 はるか上空の鳥に向かって真っ直ぐに狙いを定めて矢を放つ。矢は真っ直ぐに飛んで鳥を射落とす。落ちていく方向を見定めて火山が走っていくのが見えた。弓を下ろして一息つく。

 なんとか当たった。

 暮さんと合流してから数度目の挑戦でやっと成功した。原因は、やはり緊張だろうか。上手く補助アイテムが発動しなかった。


 「笈川君は、用心深いんだね」

 「え?」


 てっきり根性が足りないとか、集中力が足りないと罵られるかと思っていたのに暮さんは予想外のことを言ってきた。


 「私が見ているから集中しきれなかったんだろう?狩場では正しい判断だよ。モンスターばかりが敵じゃない。君が私を警戒するのは正しい」


 なんだか前向きに解釈してくれたようだ。

 確かに、あきらかに自分より実力者である暮さんを警戒しているのは事実だけれど、それは暮さんが敵か味方かという話ではない。単純に、自分に自信がないせいだ。1人なら出来るのに、人前だと全力が出し切れない。そんな自分の欠点に薄々気が付いてはいた。

 火山が鳥の死体を銜えて誇らしげに戻ってきた。その頭を撫でてやると嬉しそうに尻尾を揺らす。


 「君に基礎訓練をしたのは時田公爵かな?」

 「あ、はい。そうです。そういうのわかるもんですか?」

 「うん、その立ち方は軍の訓練法だからね。真王陛下の近くでそういう立ち振る舞いをするのは彼だけだよ」

 「そうなんですか」


 僕は関心する。上級者になればそういう見分けもつくものなのか。


 「もう少し体が出来たら王城の模擬戦で遊んでもらうといいよ。自分の欠点も見えてくるだろう」


 言いながら暮さんはおもむろに足元の石を拾って上空へ投げた。

 ドサドサッと何かが落ちてくる音がする。正直、木が生い茂っていて何も見えなかった。暮さんは直前まで僕の方を向いて話していたし、何かを確認する素振りもなかった。

 音のした方へいくと立派な鳥のモンスターの死体があった。

 これが、暮 洋一郎という男。

 シノハラさんと互角に渡り合えるもう一人の異端ディザスター

 僕は驚くと共に納得する部分もある。

 シノハラさんの話通りならば、これは能力スキルを使わないで物理攻撃だけでやったことなのだ。

 一体、どのくらい頑張れば同じ領域へいけるのだろう。


 「すごいですね!」


 僕は素直に感想を言う。


 「慣れだよ。君にも出来るようになるよ」

 「出来るでしょうか?」

 「努力すれば、いつかは」


 暮さんのセリフにトゲはない。

 本当に努力すれば出来ると思ってくれていると感じた。

 その後も順調に狩りを進めて9階層へと降りた。

 9階層は、木々が全くない大草原エリアだった。視界を遮るものは何もない。ついでにいうと壁もないようにみえる。どこまでも草原が続いているように見受けられた。

 僕は暮さんを振り返る。彼は今までに手に入れた鳥をひとまとめにして持っている。

 振り返ったら8階層へ戻る階段が消えていた。


 「これ、どっちへ行ったらいいんでしょうか?」

 「そうだねえ。まだ時間に余裕があるし、笈川君に任せようかな。元々は1人で頑張る予定だったんだろう?」


 と、サラリと言われた。

 あ、やっぱり親子だ。と、納得した。

 さり気なくスパルタだ。

 確かに最初は自分で攻略していくつもりだったのだ、ここは気合で頑張ることにしよう。

 僕は目の前の草原を見つめる。

 一見して危険なモンスターはいないように思える。しかし、いると思って行動するべきだろう。慎重に歩き始める。大量の草で覆われた大地は足元が浮くような弾力を感じさせる。


 そういえば、空にモンスターの類がいないように見えるし、槍に戻しておこう。


 そう決めて補助アイテムを弓から槍へ整形する。

 槍の石突の部分を使って前方の茂みを確認しながら進むことにした。

 しばらく進むと手ごたえが違う場所があった。火山も警戒したように腰を低くしている。

 僕は槍を構えなおし思い切って土に突き刺してみると手ごたえがあったが逃げられたようだった。


 ぽーん!


 弾けるような音が響いて槍を突き刺した少し向こう側からモグラのようなモンスターが飛び出してきた。茶色で短い体毛で覆われていて鋭そうな爪と嘴を持っている。此方を見て威嚇するように短い毛を逆立てている。相手が飛び掛ってくる前に攻撃しなければ、ととっさに、火球を放った。RPGでお馴染み炎系の初期魔法のイメージで僕が作り上げた攻撃能力スキルだ。今回は火山と一緒に着ているし、出来るだけ炎系で攻撃しようと決めていたためにそれを選択した。

 モグラは、あっという間に丸コゲになって力尽きた。落ちた属性結晶を拾っている時に、自分が無意識に能力スキルを使ってしまったことにあせったが、火山と御そろいの火の属性であったことに胸を撫で下ろした。

 暮さんは何も言わなかった。

 表情の変化も特になく、彼が僕の異端ディザスターについて知っているのか、はたまた気が付いているのかを見極めることは出来なかった。かといって自分から確認する勇気はない。危険視されて口封じの対象にされては困るからだ。

 その後は、延々とモグラ叩き大会が続いた。

 突いては出てくるモグラを焼き殺し、時には槍で突き殺しを繰り返す。時々は、外に飛び出した所を火山がかみ殺したりもした。暮さんは特に時々、時計をみて時間を確認している他は何もせず僕の後をついてきていた。

 30匹は倒しただろうか、僕が疲労していい加減に下の階層への入り口を見つけたいとあせり始める頃、明るかった9階層の空が薄暗くなり始めた。


 「お疲れ様。ちょうど5時だよ」


 暮さんにポンと肩を叩かれて時計を見ると確かに5時を指していた。

 周囲を見渡すと目前に大きな扉が出現していた。暮さんを振り返ってみても、穏やかに微笑むだけだったので恐る恐るその扉を開けてみるとそこには下の階層への階段があった。


 「あの、この扉って出現条件あるんですか?」


 思い切って聞いてみると、


 「12時5時22時丁度か、モグラ100匹毎に出現するよ」


 と教えてくれた。到底100匹も倒せた気がしない。5時になったから出現したのだろう。

 本当に1人だったら少し泣いていたかもしれない。

 あらかじめ知っているなら100匹カウントしながら頑張れるかもしれないが知らないと心が折れそうだ。


 「さあ、10階に下りたら戻ろうか」


 暮さんが鳥を持っていない方の手で数匹のモグラを掴みあげた。


 「それ、どうするんですか?」

 「もちろん、食べるんだよ?」


 と、答えて階段を下りていった。

 シノハラさん、貴方の息子さんは野生的です。

 

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