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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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研究と訓練

 よく晴れた青空の下、僕はひたすら走っている。

 場所は、王城の中にある運動用ホールだ。


 「フブキ、遅いぞー!」


 マキちゃんが並走しながら声をかけてくる。その後ろには5匹の柴犬たちもいる。

 アルクスアから戻ってから4日、僕は毎日体力強化の為にこの場所を使わせてもらっている。

 午前は講義、午後はこの場所で運動。夜は自室で能力スキルの研究。それぞれに面白さと困難さがあって充実した毎日だ。

 体力強化は、始めたばかりなので成果らしい成果は見えないけれど、やらないよりはいい。時々、甲斐さんがやってきて格闘の基礎訓練をしてくれる。立っている時の重心の取り方、槍を使った間合いの取り方、受け流しの基本的な型を教わって自己練習もしている。能力スキルなしでも最低限の防御は出来るようになっておきたい。

 能力スキルの方は、面白いくらい出来ることが増えた。

 今までは、頑張らないと出来ない、出来るのが不思議だと思っていた事も容易く出来る。

 出来て普通だと思い込めば、空中に浮くことも出来た。気がつかせてくれた立野さんには感謝している。


 「フブキー!マキはオヤツ食べたいぞー!」


 マキちゃんの苦情で腕時計をみると夕方の4時を少し過ぎていた。

 1時から走り始めて3時間ノンストップで走っていたようだ。立ち止まると額から汗が流れてくる。

 走っている最中は自分の体力が無限にあると思い込んで疲労感を打ち消す能力スキルをかけている。あくまで疲労感を感じさせないだけで、実際には身体に負担をかけているので充分に鍛えられているだろう。


 なんだか、異世界モノのチート主人公っぽくなってきたなあ


 と、最近の自分を振り返る。

 そのくらい能力スキルで出来ることが多すぎて吃驚するが、この世界は魔王による脅威はまったくないので主人公のようになっても無双する予定はない。

 唯一、活躍できそうなのは、巫女姫捜索だけだ。

マキちゃんに急かされて自分の部屋へ戻る。

 本来は、王族用と使用人用の食堂があるのだけれど、良さん以外の王族の中に混じって食事を取る勇気もないし、使用人用は、お客様扱いの僕が行くのはやめたほうがいいと部屋付き侍女のアマリカさんに止められたので自分の部屋で食べることにしている。夕食の時刻に近いので、本来ならば部屋へお菓子は持ち込まれないのだが、マキちゃんが訪れている時だけはいつでも食べられるようにお菓子が常設される。

 アマリカさん曰く、「置いてないと城内の冷蔵庫から勝手に持っていくから」、マキちゃんは食欲旺盛のようだ。

 部屋の主である僕がシャワーで軽く汗を流している間に、マキちゃんが我が物顔でソファーに座りお菓子をむさぼっている。


 「マキちゃん、お菓子好きだねえ」


 柴犬たちは、お菓子に見向きもせずに所定の場所で思い思いに寛いでいる。


 「ん。マキ、甘いもの、スキ」


 僕の呆れた様子にもお構いなくモリモリ食べ続ける。夕食のことを思うと手をつけるのをためらわれたので、僕はジュースをグラスに入れて飲む。時々、グラスの中の温度を意識して下げてみる。氷のように冷えたジュースが手の平を冷やす。


 「随分、上手になったけど、フブキ、マキいるんだけど?」


 ハッと我に帰る。

 あれ、マキちゃんには秘密にしてたんだっけ?


 「いいけど。マキは甲斐に従うから。フブキは新しいオモチャに浮かれて外でやらないよーに」


 お菓子の屑を口の周りにつけたまま、年長者らしい忠告をしてくるマキちゃん。大事な話なのに台無しだ。

 コンコン、と扉をノックする音が聞こえる。


 「失礼します。真王陛下より食堂へくるようにとのことです」


 侍女のアマリカさんが伝言だけ伝えて去っていく。


 「ム。今夜はゴチソウだな」


 マキちゃんが、粉だらけの口元を器用に払う。


 「え、僕、服装コレでいいのかな?」


 これといって特徴のないシャツとパンツ、普段着だ。


 「ちゃんとした晩餐会なら、さっきの侍女が服持ってくるから平気だろ。マキなんか裸だ!堂々とするがいい!」


 マキちゃんは仁王立ちで誇らしげだ。全裸に比べれば確かにマシなのかもしれない。僕はマキちゃんに先導されて食堂へ向かう。いつもは客室ばかりで王族の住んでいる区画へは行くことがないので少し緊張している。


 「ここからは、許可のあるヤツしか入れない。王族の私的空間だから」


 マキちゃんがそう言って大きな扉の前で近衛兵の人に扉を開けてもらう。僕も、近衛兵さんに会釈してから先へ進む。そこからは、形式は今までの場所とほとんど変わらなかったけれど、人口密度が圧倒的に違った。客室の周辺は数名の侍女さんと警備の衛兵さんが数名いるくらいで廊下が喧騒に包まれることはなかった。しかし、今目前には繁華街のような騒々しさがある。年齢や種族がまちまちだが、1つ共通するのは使用人ではないことだ。兵隊の制服も侍女の制服も見当たらない。皆、普段着でくつろいでいるような雰囲気だった。


 「フブキ、ほとんど王族だ。あとは王族の友人」


 驚いている僕にマキちゃんが声をかけてくれる。

 良さんの子供の数を思い出して納得する。


 「いくぞ」

 「うん」


 再びマキちゃんの後をついていく。

 王族の人達は僕のことを気にも留めていないようだった。時々、マキちゃんにお菓子をもってくる小さな子供がいたくらいだ。長い廊下を進んでいるといくつもの扉があった。時々、マキちゃんがこれは誰の部屋だとか説明してくれたけれど、良さん以外の王族の名前を知らないので聞く側から零れ落ちていった。


 「到着だ!マキ来たぞ!」


 マキちゃんは僕を振り返ることもなく一つの扉を押し開けた。


 急に開けないでほしい。


 心の準備をする暇もなく食堂へ足を踏み入れる。

 食堂はとても広かった。

 どのくらい、と言われても比較対象物が思い出せない。学校の体育館の数個分はあるだろう。

 眩しいシャンデリアと白い石で出来たツルリとした壁と床、中央に置かれた白いテーブルクロスのかけられた巨大なテーブル。その上座に良さんが座っていた。入り口に立っている僕から見て、良さんの右側に鮮やかな緑色の髪をした青年とその隣に甲斐さんが、左側に薄い灰色をした巻き毛の中年男性が座っている。


 「ようこそ。好きなところへ座ったらいいよ」


 良さんに声をかけられて僕は、本当は隅っこに行きたかったけれど、広大なテーブルであまり離れると会話がしにくいことも考慮してギリギリ全員の顔が見えて声が届きそうな位置に座った。マキちゃんは当然のように甲斐さんの隣の席へ座っている。僕が座ったことを確認した良さんが口を開いた。


 「今日は、この国の公爵を紹介するね」

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