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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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王都への帰路

 翌朝早く、立野さんにアルクスア中央街へ送ってもらって役所前で別れた。

 今は、来た時に乗ってきた馬車の御者さんの馬車に揺られてカタクラ男爵領を通っている。


 「夕方までには王都につくかな?」

 「そうね。寄り道しなければ」


 往路とは違うルートで帰っているので若干時間がかかるようだ。

 しかし、窓から見える景色はのどかな田園風景で違いが余りよくわからない。


 「ラズさんは、今夜は王城へ泊まるの?」

 「そうね。そのつもり。翌日には、一旦、蒼記様のところへ戻って、ふぶきさんを招待したことを報告しておくわ」

 「そっか。楽しみだね」

 「ええ。歓迎の用意をしてまってるわ」


 どのくらいの期限でラズリィーの体調が悪くなるかわからないので、出来るだけ早急に再会できるようにしたいけれど、それには良さんへの報告が必須だろう。ラズリィの胸元にあるペンダントに視線をやる。気休め程度には役に立つだろう。それと、茉莉花さんをどうするか。他にも色々考えることはあるけれど、他にやりたいこともある。

 立野さんのおかげで突破できそうな能力スキル制御コントロール

 昨夜、1人で露天風呂へ入った時に試してみたのだ。

 恐らく40℃近くあるだろうお湯に浸かりながら、補助アイテムを外す。

 結果、1時間持ちこたえることが出来た。それ以上は物理的に身体がふやけそうだったので断念した。

 従来の自分であれば1分も持たなかっただろう。

 自分は出来る、と疑わないこと。それだけでこの成果が出せたのだ。修練次第でもっと結果が出せそうな気がした。


 だからだといって、シノハラさんに追いつけるとは到底思えない。


 異端ディザスターのあるなしの問題ではない。

 物理的な戦闘能力。経験値が違い過ぎるのだ。

 シノハラさんの異端ディザスターを知った日、だから迷宮ダンジョンの中で死体の山を作ったんですね、と僕が言ったら、


 『普通に物理攻撃しかしてないけど?』


 と不思議そうな顔をされた。

 異端ディザスターを隠しておきたい息子さんが、物理的攻撃、格闘術で挑んでくるので自分も鍛錬している、と言っていた。息子にまだまだ負けてやる気はないよ、と。

 巨大な能力スキルを持ちながらも鍛え上げられた肉体と戦闘技術。その高みへ登るには、自分にはどのくらいの時間が必要だろうか。能力スキルが周囲の知るところになった時、自分で自分の身を、尊厳を守れるようになっておかなければならない。きっと、シノハラさん親子も通ってきた道だ。自分は、彼等よりもスタート地点から出遅れている。王都に戻ったらもう一度、迷宮ダンジョンへ行って訓練しておきたいと思っている。今回、留守番させていた犬たちにも運動させてあげたいしね。

 新たな生活の目的に思いをはせていると、


 「ふぶきさん、1つ言い忘れてたことがあるわ」

 「ん?」


 ラズリィーの言葉で現実に引き戻された。

 膝の上に置いた手を閉じたり開いたりしながら落ち着きのない様子をみせていたが、しばらくして覚悟を決めたのか、僕の顔をじっと見つめた。


 「蒼記様の恋人のことだけど」

 「うん?」


 行きの馬車の中で知った蒼記さんとラズリィーの関係の後で落とされた爆弾のことだ。忘れてはいない。


 「蒼記様の前で話題に出すのはやめてほしいの」

 「うん?他の人に、じゃなくて?」

 「ええ。蒼記様と好意的な関係の人物なら、誰もがその存在を知ってるから。ただ、理由わけがあって、蒼記様と、相手の方は会えないの」

 「うん・・・」


 遠距離恋愛的な話だろうか?僕はとりあえず頷く。


 「平気な風を装ってるけど、とても苦しんでると思うの。だから」

 「話題にしないでほしいってこと?」


 ラズリィーは頷く。

 まあ、思い出して不愉快な話や悲しい話をしても仕方がない。


 「まあ、そんな話題になることはないと思うけど、覚えておくよ」


 そもそも、女子と恋愛の話を出来るほど、僕の人生経験は高くない。向こうから話題に出してこなければ大丈夫だろう。


 「あ、そういえば、蒼記さんへのお土産、髪留めにしたんだけど、恋人がいるならお菓子の方が無難だったかなあ?」


 お土産屋で、シンプルだけれど可愛らしい髪留めを見て、コレだ!と思って深く考えないで買ってしまった。相手の男性が知ったら、別の男からの贈り物は不愉快かもしれないことに今気がついた。


 「それは別に平気じゃないかな?蒼記様の外見には余り拘りのない相手だと思うし」

 「うん?まあ、着飾らなくても綺麗だもんね」

 「そういう意味ではないんだけど、まあ、もし二人が再会出来たらイヤでもわかるわ」

 「ふうん?早くそうなればいいね。あ、じゃあスカートを穿かないのは本人の趣味なの?」


 僕の質問に、ラズリィーは目を丸くする。


 「え?ふぶきさん、蒼記様にスカート穿いて欲しいの?」

 「いや、別に。ただ、似合うだろうな、って」

 「それは、似合うでしょうけど・・・」


 僕には、ラズリィーが困惑している理由がわからない。

 可愛い年頃の女の子がスカートを穿いて何が問題なのだろうか。あれほどの美少女だから、虫避けも兼ねてのシンプルな服装なのだと思っていた。


 「ふぶきさん、もしかして気がついてなかった?」

 「ん?もしかして貴族はスカート穿かなかったりするの?」


 自分の記憶を探ってみる。

 模擬戦の時にいた数名のご令嬢はドレス姿だったし、王城の侍女のアマリカさんも、春の祭典で見かけた来賓の女性達もほとんどがスカート姿だった。警備兵の女性達は流石にスカートではなかったけれど、まさか公爵令嬢が軍隊に入隊していたりするのか?ありえない話ではないけれど、それならば祭典の時に軍服を着用していなかったのがおかしいような気もする。


 「これは・・・当たり前のこと過ぎて皆ウッカリしてたのね」


 ラズリィーが深くため息をついて、


 「蒼記様は、男性よ」

 「え?」

 「見たとおり、その辺にいる女性よりも美しい方だけど、間違いなく。まさか、次期公爵である蒼記様が同性を婚約者に据えられるわけないでしょ?」

 「や・・・おかしいなとは思ったけど、この世界、わりと何でもアリだから・・・」

 「まあ、同性婚が不可能ではないのは事実だけど、蒼記様ったら気がついていて黙ってたのね!もうっ」


 ラズリィーが、ぷうっと頬を膨らませる。

 確かに、今までの自分の態度を思い出しても、蒼記さんを女性だと勘違いしていることに気がついていただろう。同性だと聞いた今でも、目の前にいたらドキドキしてしまいそうな美貌だ。

 ふいにマキちゃんのセリフを思い出す。


 『レンアイは自由だけど・・・ソウキはオススメしないぞ』


 知っていたなら、教えてよ、マキちゃん!

 


 

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