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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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貿易都市 アルクスア 23

 ホテルに戻ると、すでにペンダントは届いていた。

 フロントで受け取ってポケットに忍ばせる。

 夕食の後に渡すつもりだ。

 各自、一旦部屋へ戻ってお土産などの整理をすることになった。といっても、お土産を買ったのは僕ばかりで、立野さんは自分用に途中で酒のおつまみを、ラズリィーは蒼記さんに小さな箱に入れられた何かを買っただけだ。


 「夕食は、どうするんですか?」


 ベッドに転がっている立野さんに声をかけると、


 「俺は、バーで一杯やってくるから、おっきーたちは好きなとこでどーぞ」

 「うーん、じゃあ外のお店をさがしてみようかな?」


 と、僕がホテル周辺の地図を手に取ると、


 「さすがに、この辺を夜出歩くのはやめておけ。お前はいいけど、女の子は危ない」


 忠告されて、ホテル内の飲食店ガイドを放り投げてきた。受け取って眺めながら、


 「それはそうですけど、このホテルのお店って高級感が・・・・」

 「練習練習。そんなんじゃ、デートの時に女に笑われるぞ」

 「うう・・・。高校生はこんな場所でデートしませんよ」

 「え?」


 立野さんが、ものすごく不思議そうな表情をする。


 「え?しませんよ?ファーストフードかファミレスでしょ?普通?」


 したことはないが、周囲の同級生を見ていてもそう思う。

 その言葉に、立野さんが両手で顔を覆って、


 「マジかー!道理で霙ちゃんが一緒に食事してくれないわけだ。ファミレスの方がよかったのかー!」


 とベッドの上でジタバタしている。

 霙ちゃん、とは先代冬の巫女姫のことだろう。姪っ子と食事するのに毎回ホテルのレストランにしてたの?親戚との気さくな食事の場って感じしないね。どうも、相手からも大変不評だったようだ。

 しばらくして、少し落ち着いた立野さんが、


 「おっきー、もしかして、女の子って叔父さんと出歩くの嫌いだったりするのかな?」


 と、真剣な顔で聞いてきた。

 年頃の娘さんなら、親や親戚よりも友人と気さくに遊びに行きたいものだろうと思ったが、


 「それは、普段の仲の良さでかわるんではないでしょうか」


 と、無難に答えておいた。


 「なんでかなあ。妹も霙ちゃんも、あんまり一緒に出かけてくれなかったんだよなあ」


 立野さんは大変気落ちした様子でベッドにもぐりこんでしまった。

 それは、時々、立野さんのテンションが変に高くて『にゃん』とか言うからではないだろうか、と少し思ったがあえて突っ込まないでおいた。過ぎたことは仕方がない。冬の巫女姫はもう亡くなってしまったし、過去形で話しているのだから、妹さんも亡くなっているのだろう。


 「まあ、高校生にはハードル高いですけど、大人の女性相手ならホテルで良いと思いますよ。彼女さんとくればいいのでは?」


 フォローのつもりで言ったのに、


 「小鳥ちゃんとは絶対にこんなとこ来ない」


 と、布団の中から返事があった。

 本当に、小鳥ちゃんって呼んでるんだ。

 小柄で華奢な感じの女性だろうか?想像しながら、館内ガイドを見つめた。



 悩みに悩んで、夕食は海鮮料理の店にした。

 明日には王都に向けて戻るのだから、貿易港らしい料理を食べるほうがいいと思った。

 最初は、コース料理を頼むつもりだったのに、ラズリィーが鍋が良いと言ったので海鮮鍋になった。

 海の幸を詰め込んだ鍋を2人で囲む。


 「こういう料理、久しぶり」

 「そうなの?」


 はふはふと口の中のつみれと戦いながら返事をする。


 「うん。子供の頃は、家族と食べたこともあったけど、巫女になってから、こういうのは危ないからって食卓に出なくて」


 それはそうだろう。

 鍋を盲目の人が食べるのは、見てる方も食べる方も気付かれしそうだ。


 「ふぶきさんと一緒に食べれてうれしい」


 ラズリィーが極上の笑顔を見せてくれた。


 「また、食べよう。中院公爵領はお肉が有名なんでしょ?しゃぶしゃぶとかあるかな」

 「あるわよ。楽しみね」


 和やかに鍋を完食して、食後の珈琲を飲んでいる時に、工場でつくったお土産の箱を出した。


 「開けても、いい?」

 「どうぞ」


 ラズリィーは、嬉しそうに手に取って包装された箱を開けて中身を取り出す。ペンダントと一緒に何か紙切れが入っていてそれを暫く見つめている。多分、作った工場の住所とか記載されているのだろう。地球のお土産でもよくあることだ。


 「ふぶきさん、これ、ふぶきさんが?」

 「うん。昼間工場に行った時に。気に入ってもらえるといいけど」


 ラズリィーは、ペンダントを目の前に持ち上げて花の部分を見つめる。

 その花を見て違和感を感じた。

 昼間、原料の石は、黒くて中身に光るつぶがあるような感じだったので焼き上げても暗くて微かにラメが光くらいの大人しめの出来上がりを想像していたのに、目前にあるそれは、白銀で花びらの先端が虹色に光っている。

 異世界の加工技術すごいな、と感心していると、


 「こんなに細かく加工するの大変だったでしょ?ありがとう」


 ラズリィーが頬を染める。


 「いや、思ったよりも柔らかかったから、プロみたいにはいかなかったけど、記念にはなるかな、と思って」

 「柔らかかった?」

 「うん。立野さんが粘土みたいって言ってたけど、本当にそんな感じだったよ」


 指で容易くちぎったりくっつけたりできた。僕がそのジェスチャーをしたら、


 「それは、立野様に一杯くわされたわね」


 と、ラズリィーが苦笑した。聞くと、あの岩は普通の人は手でちぎったり出来ないらしい。専用の工具で削りだすもので、ちぎったりくっつけたりできるのは、それこそ土系等の異能ギフト持ちくらいのものらしい。


 「最初から、出来るのが当たり前と思えば出来るだろうと判断されたのね。ふぶきさん、試されたのよ」

 「ええ・・・まあ、立野さんならいいか?」

 「そうね。利用するつもりはないと思う。単純に、自然に能力スキルが発動するように誘導してくれたのね」

 「はー。全然気がつかなかったよー」


 ラズリィーは、苦笑して、入っていた紙切れを差し出した。


 「ふぶきさんが、私の守護を祈願してつくってくれたから、ほら、これみて」


 紙切れには『物理防御極大 体力補助極大』と記載されていた。


 「熟練の工芸士でも大が付与されることなんて滅多にないわ。ふぶきさん、おいそれと誰かに物をつくったりしたらダメよ?」

 「ううん・・・そうだね。出来るだけ秘密だもんね」

 「そうよ。でも、本当にありがとう。それだけ、ふぶきさんが私を大切に思ってくれた証しだもの」


 そういってラズリィーは、ペンダントをギュッと握り締めた。

 立野さんのおかげで能力スキル発動の自信が少しついた。

 出来るかな、じゃなくて出来て当たり前、自然のことだと思えるようになればいいんだ。

 機会があれば、もう一度、飛行にトライしてみよう。

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