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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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貿易都市 アルクスア 22

 試行錯誤の末、なんとか見本の写真のような花を作り上げた。

 見本のままだと味気なかったので花弁にすこしだけ波打つような部分をつけてみた。

 ラズリィーの春の陽射しのような暖かい笑顔をイメージした、自分の中では良く出来たと思っている。


 「お、可愛くできたな。それで終わりか?」

 「はい」


 立野さんが、僕の手が止まったのを見て声をかけてくる。僕の返事を確認して工場のお姉さんに花のペンダントトップと渡す。この後は、プロの人が焼き入れをして夜にはホテルへ届けてくれるらしい早い仕上がりだな、と思った。

 小学校の授業で湯のみに絵付けをして焼きあがってくるまでは数週間かかった記憶がある。

 量が違うし、対象も違うから比較しても無意味なことかもしれない。

 ペンダントのチェーン部分と入れておく箱を選んでから作業所を出る。 時間にして1時間もかかってはいない。


 「ふぶきさん、中を見学へ行ってたの?」


 ラズリィーが僕たちを見つけて近寄ってくる。


 「おっきーは男の子だからねー。機械は手に取ってみたいもんなんだよ」

 「まあ。そうなの?」

 「うん、まあ、ちょっと興味あるかな」


 立野さんの謎のフォローを受けつつ工場を後にした。

 その後も、順調に各工場を見学する。

 興味深かったのは、映像投影機の製造工場だ。広いホールの空中、至るところに画像が浮かび上がっていて不思議な光景だった。無数の映像が浮かんでいるのに、どれ一つとして画像が混ざることなく確認することができた。

 道中、職人さん同士で諍いをしている場面に度々出くわしてドキッとしたりしたけれど、不思議と皆、僕たちを避けるように去っていった。観光客の子供を巻き込むことはよくないと思おう程度の冷静さは持ち合わせているのだろう。

 ホテルへ夕食のために戻る道すがら、


 「とりあえず、ざっとは見て回ったな。この後、どうするんだ?」


 アルクスアの主な場所は、ほとんど通過し終わった、立野さんの質問も最もだろう。


 「そうですね。特別気になった場所は今の所ないんですよね」

 「まあ、こんな大都市にいたら、他のヤツラ、どこ探してたんだって話になるよな」


 万が一の可能性もあるけれど、まず居ないだろうと前もって予測してから来ていたので、冬の巫女姫が見つからなかったことはさほど問題じゃない。今回の旅は、あくまで練習も兼ねているのだから。


 「一旦、王都に戻って、今後のことは考えるつもりです」


 ラズリィーに付与されている俺の能力スキルがいつまで持つのかのデーターが不足している以上、出来るだけラズリィーとすぐに会える距離、もしくは次の旅にも同行してもらうことになる。それについても良さんに相談しなければならない。


 「他の国に行くには、おっきーは世情を知らな過ぎるからなあ。黒の領地で次に無難なところねえ」

 「まずは、中院公爵領へ私が案内しようと思ってます」

 「げっ」


 ラズリィーの言葉に立野さんが眉をひそめる。


 「まあ、公爵領も、それなりに広いし人もそれなりにいるけど、中院なぁ」

 「僕は、蒼記さんがそんなに乱暴な人には思えないんだけど」


 王城の噂話でも、講義の先生たちの話でも、良さんでさえ、中院一族へ近付くことはオススメしないと口を揃える。僕の知っている唯一の中院一族のご令嬢、蒼記さんは『比較的理性的』と言われているらしい。そんなに怒ったら怖いのだろうか?


 「乱暴ってのとはちょっと違うなあ。冷酷、残酷・・・?あいつが日本の政治家になったら日本終わるな」

 「まぁ!立野様!蒼記様は、お優しい方ですよ!」


 立野さんの評価にラズリィーが苦情を言う。


 「そうはいってもなあ。こと政治関係でのあいつの振る舞いは、親父と比べ物にならねえぞ。隙あらば世界征服するタイプだぞ」

 「蒼記様は世界征服そんなこと望まれてません!」


 ラズリィーは激しく抗議する。


 「そりゃ、今は、だろ。いつその気になってもおかしくないぞ。新しい魔王が油断したらあっという間に食いついてくるぞ」

 「もうっ」

 「らずっちだって、あいつが今、不安定なのはわかってるだろ?」


 立野さんの言葉に、ラズリィーは大きく息を吸い込んで、深くため息をついた。


 「それは、ええ・・・わかってます」

 「会えないくらいであそこまで迷走するとは思わなかったがなぁ」

 「そのくらい、本気だということですわ」


 2人して深くため息をつく。

 1人取り残された僕だけれど、何となく察しがついた。

 どうやら、何らかの事情で蒼記さんと彼氏(?)さんは会えない状況らしい。どうして会えないのかは、聞ける雰囲気ではなかった。

 しかし、立野さんはドライだな。恋人と会えないってことは大事件だと僕は思う。


 「え、と、僕は政治とか関係ないし、観光だけなら平気なんじゃないかな?」

 「そうよ。中院公爵領は、高山地帯だし、初夏なら過ごしやすくていいと思うの。最初に本宅へ挨拶に言っておけば領内で何をしても干渉されないと思うし」


 王都に戻って少し休憩して旅立てば調度、初夏になりそうだ。山だと、牧場とかあったりするのだろうか?


 「そうだなあ。本宅は山の上だし、領民の住んでる下の方の村なら平和だろうしな。あそこは、肉とお茶が美味い。あと、酒も」


 食べ物が美味しいことは大事なことだ。


 「じゃあ、そうしようかな?」

 「決まり!戻ったら、真王陛下にもお願いしなきゃ」


 ラズリィーは上機嫌でホテルへの道を歩いていく。その後ろをついて歩きながら、蒼記さんにもお土産を買って帰らなきゃ、と思いついて頭を悩ませた。

 女性が貰って喜ぶお土産って何だろう?

 無難に、日持ちしそうなお菓子にしておくべき?

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