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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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貿易都市 アルクスア 11

 腕時計が振動するのを感じて目が覚めた。

 午後1時。

 眠っていたのはほんの30分くらいだった。

 もう一度、腕時計が振動する。そして、ドアをノックする音。

 どうやら、ドアベルを鳴らすとラズリィーを起こしてしまう可能性を配慮してのことらしいと理解する。

 良さんから貰った時計が反応するということは、ドアの向こうにいるのは関係者に違いない。

 沢渡さんだろうか?

 僕は、そっとドアを開ける。

 そこにいたのは、シノハラさんだった。

 そして、人差し指を唇にあてて、シーッという仕種をしてから手招きする。

 僕は、静かに外に出てドアを閉める。

 シノハラさんは、黙って歩き出す。

 黙ってついていくと、ホテルの地下にあるビジネスルームについた。

 ホテルガイドには、出張中の小会議などに使用できますと書いてあった部屋だ。

 部屋の中は、事務所のようなテーブルとイスが数組ある。

 シノハラさんは、僕が入ったのを確認してから鍵をかけた。


 「鍵をかけると、簡易結界が起動して外部から盗聴されたりしないんだ」


 ビジネスの現場で使うなら、有効な機能だろうとは思う。けれど、今、必要なのだろうか?


 「沢渡から、聞いてる。間に合わなかったみたいだな」

 「・・・・シノハラさんは、彼女が体調悪い事を知っていたんですか!?」


 ならば、なぜ教えてくれなかったのか。

 憤りを感じる。


 「お前も知っていたろ。巫女姫は、本来短命だ」

 「それは・・・そうですけど・・・」


 シノハラさんは、テーブルの上に腰掛ける。


 「なあ、吹雪。お前は、彼女をどうしたいんだ?」


 質問の意図がわからない。


 「どう、とは・・・」

 「異端ディザスターであることを知られるリスクを犯してまで、彼女を延命するつもりがあるのか、と聞いているんだ」


 延命。

 それは、つまり、祭典の時のように能力スキルでラズリィーを回復させるということだろうか。


 「出来るなら、やるべきだと思います」


 昨夜は、何度か試みたけれど発動出来なかった。一度出来たことなのに、意識してやろうとすると出来ないのは歯がゆい。


 「それは、この世界すべてに知られてもかまわないという覚悟があるのか?それとも、彼女を秘密の共犯者にするつもりか?」

 「よく・・・わかりません」


 僕には、自分にあるらしい能力スキルの重大さを正確に把握できていない。


 「お前の能力スキルで、永続の回復は出来ない。なぜなら、彼女の器がそれに耐えられないからだ。異能ギフトにも、異端ディザスターにも対応できる器を持つ者は極稀だ。つまり、定期的にかけなおしてやる必要が出てくる。お前の責任において、彼女の一生、側に寄り添い支える覚悟があるのなら、それでもいいだろう。ただ、その場だけの哀れみならやめておけ」


 定期的に。

 一生。

 祭典のことを思い出す。

 あれから約2ヶ月、最初だから、上手く出来なくて2ヶ月しか持たないのか、段々免疫のようなものが出来て間隔が短くなるのか、で状況は変わってくるだろう。

 しかし、


 「もし、やめたら、ラズさんは、また目が見えなくなるんでしょうか?」

 「そうだ」


 シノハラさんは、躊躇いもなく答える。


 「なら、僕は続けたいと思います。彼女が、拒絶しない限りは一緒にいて対応したいです」

 「吹雪」


 シノハラさんの声は優しい。

 王都では、絶対的強者としてシノハラさんを恐れる人もいたけれど、僕は不思議と安心することが多い。

 最初に、槍の使い方を教えてくれたから?

 迷宮ダンジョンに連れていってくれたから?

 違う、そういうことではなく、家族といるような安心感がある。


 「お前は、これから生きていく間に、同じような状況に幾度も遭遇することになる。その度に助けていたら無尽蔵に膨らむぞ。守れる相手は限られている。全員を背負えるなんて思うな。よく考えた上で、あの娘を助けたいなら止めはしない」


 シノハラさんの言わんとすることは、少し理解できた。

 僕のまだ出会っていない巫女姫の中にも、ラズリィーのような状態の人はいるだろう。

 出会ってしまったら、助けたいと思うかもしれない。でも、まだ制御コントロールも出来ない。出来るようになったとして、僕個人が、どれほどの人を助けられるだろう。人が背負えるのは、極少数だ。それこそ、家族、恋人、親友。限られている。全員を救えるなどと思うのは傲慢だ。


 「他の人のことは、まだ、よくわからないです。でも、ラズさんは・・・彼女のことは、責任を持って守って行こうと思います」

 「そうか。なら、いいさ」


 シノハラさんは、テーブルから降りて僕の頭を撫でた。

 大きな手の平の感触が心地よい。

 まるで幼い頃、父にそうしてもらった時のような暖かい気持ちになる。

 不思議だ。

 これは、シノハラさんの能力スキルだろうか?と考えて違うな、と思い直す。

 シノハラさんは、能力スキル無効能力者だと言っていた。

 王城で漏れ聞いた噂話でも、シノハラさんは、現在確認されている世界の能力スキルの全てを無効化する能力スキルを持っていると聞いている。

 良さんからも、万が一、僕が攻撃系能力スキルを発現暴走してもシノハラさんがフォローしてくれるという話になっていたはずだ。

 でも、何かが引っかかる。

 何かおかしい。

 そうだ・・・。


 「シノハラさん。なぜ、ラズさんに使った僕の能力スキルが、もう効果が切れそうなことを知っていたのですか」


 僕の能力スキルは、僕自身にも把握できていない。

 わかっているのは、あの日、ラズリィーの体調を好転させ、能力スキルによって阻害されていた視力を回復させたことだけだ。それが、どのような効果で、無限なのか有限なのか誰も知らないはずなんだ。

 迷宮ダンジョンでの属性獣や、属性結晶の件もそうだ。

 シノハラさんには、最初から予定通りであったような感じだった。


 「お前はどうしてだと思うんだ?」


 シノハラさんが、不敵に笑う。

 そう、シノハラさんは最初から僕に答えさせるつもりでこの部屋にしたのだ。

 僕は、自分の出した答えを言葉にする。


 「シノハラさんの能力スキルは、能力スキル完全無効ではなく、僕と同じ能力スキル異端ディザスターだから」


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