表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
4/382

現状確認と呪いの話

 人と猫が従兄弟。

 そんなことってあるんだ・・・・それがアリなら、獣耳とかエルフとかファンタジー要素もアリなのかもしれない。まあ、猫が喋ってる時点でかなりファンタジーなんだけど、魔族ならアリかな、と勝手に思い込んでいた。

 あれ?マキちゃんが魔族なら、カイさんも魔族、になるよね。

 僕は、チラリのカイさんの全体像を再確認する。

 そこには、僕が想像するような魔族らしさは欠片も見当たらなかった。

 角も牙も尻尾も羽もない。あ、魔術で隠している可能性が・・・ないか。自分達の陣地で人間に擬態する意味がないよね。そもそも、魔族であることは否定されてないけれど、魔法があるとは聞いてない。

 恐らくあると思うけれど。


 「色々、不安だろうけれど、君が帰還するまでの無事は、私が保証するから安心してください」


 カイさんが、穏やかに微笑む。

 体格とは裏腹に、随分と柔和な物腰で、いかにも上品な貴族様ですといった感じだ。

 そうやって安心させておいて食べちゃうぞ、みたいな展開がありそうで怖いけれど、カイさんから感じる優しげな雰囲気は作った物というよりは生まれつきのような気がする。

 特異体質のおかげで、口先だけ味方のフリをして僕を夏の空の下に連れ出そうとする連中をたくさん相手にしてきたので人を見る目にはそこそこ自信がある。


 「よろしくおねがいします」




その後、僕達はお互いについての情報交換をした。

主に質問をしていたのは僕で、マキちゃんとカイさんは慣れたことなのか、僕に興味がないのか、あまり個人的な質問はしてこなかった。出身地と氏名、落ちてくる前の記憶にある最後の状況くらいだ。

僕を安心させる為なのか、こちらが質問したことに嫌な顔をせず答えてくれた。


 まず、ここは僕のような地球の生命が落ちてくること(落ち人)が時々あること。

 自分の意思で、この世界と地球を行き来できる技術を持っている人が割りと大勢いること。(その中には地球人も含まれるらしい)

 地球人にわかりやすく種族や国の説明をするために、魔族、神族などの種族わけで説明しているが、決して魔族は邪悪な存在ではないこと。

 魔族は、魔法にすぐれている民族であるらしいこと。

 名前も、甲斐(以降、漢字表記)さんが紙に書き出してくれたが、日本人に名乗る時の為に漢字名を持つ貴族が多いこと。

 貴族は、落ち人に対応できるように、地球の言語の習得をしているので、今は僕用に日本語で話しているが、きちんと現地言語が他にあること。

 現在僕がいる館は、マキちゃんの家で、甲斐さんはたまたま訪れていたこと。

 二人は、真実従兄弟であるが、マキちゃんは呪いによって猫型で生まれたらしい。


 「呪いって、解けないんですか?」

 「一時的には可能だよ。ただ、この呪いは一族への呪いの為、根源の呪いを解除するのは難しいね」


 一族そのものにかけられた呪いは、効力が消えるまで、いつの世代の誰に出るかもわからず、誰が、何故、個人ではなく一族への呪いをかけたのかも長い歴史の中に埋もれてしまったらしい。

 貴族への呪いならば、先祖が資料などを残している可能性もあるが、今の所、解決策への手掛りは見つかっていないらしい。


 「猫型として生まれてくるだけで、意思の疎通もできるし、魔力もある。子孫を残しても、余程、運が悪くない限り、二代続けて猫型だった例はないから、あまり日常には問題はないんだよ」


 甲斐さんは、あっさりとしている。

 日本だったら、日常に支障がありまくるような気がするな。

 当事者であるマキちゃんも、甲斐さんに説明は任せたという感じで、先程からソファーに座って足を組んで優雅に珈琲カップを持ち上げている。中身が珈琲かどうかは確認していない。


 「ところで、君は庭に倒れていたんだよね?」

 「そうみたいです」


 ふむ、と甲斐さんは、僕をしばらく見つめてから、


 「君は半袖だけれど、寒くはないのかい?」


 それは、当然の質問だった。

 まず、最初に聞かれても不思議ではないくらいに。

 こちらは、雪国なのか、冬なのかわからないけれど、甲斐さんは、上着こそないけれど、長袖の白いシャツを着ていた。

 マキちゃんは、毛皮だけど。


 「僕は、もの凄く暑がりで、今くらいの気温が、多分、普通の人の春くらいの体感じゃないかと思います。」

 「それは、生まれつきかい?」

 「ええ。両親が言うにはそうらしいです。でも、この2、3年の間に特にひどくなったと思います」


 甲斐さんは、しばらく考え込んでから、こう言った。


 「もしかしたら、吹雪君を、帰してあげるのは大変かもしれない」



 



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ