表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
36/382

貿易都市 アルクスア 7

 目を覚ましたのは、朝の6時過ぎだった。

 王城では、朝食が7時~8時の間だったので、いつもの通りの起床時間だ。

 初めての旅で疲れて寝坊するかもしれないと思ったが杞憂だったようだ。

 ラズリィーとの待ち合わせは9時だ。

 時間に余裕は充分にある。

 備え付けの冷蔵庫から水を取り出してグラスに入れる。

 テーブルに水と、持ってきた地図を置く。地図は世界地図ではなくアルクスア全域が描かれたものだ。

 現在地の中央街から北西に向かうとカタクラ男爵領。南東に向かうと貿易港。北東は、工業地区。西南西には商業地区が密集しているようだ。住宅街は、昨日通った道、つまり北西方面にある。中央街は、領主である王弟リィトの居城や、役所など公共施設と観光施設が多く存在しているようだ。

 他の地域に比べると、王弟が治める領地だけあって平和な環境らしいが、腹芸に秀でた商人と違って、工業地区に住む職人達は気難しい人物が多いらしく、こと仕事に関することは余り触れないほうが無難であると甲斐さんから教えてもらっていたのを思い出していた。

 勿論、商人も厄介な性格の者達なのだが、そこは商売人。自分の利益のためならば敵対行為をするよりも取り入って利益をあげることを優先する傾向があるので、大抵の観光客は、工業職人たちと揉めることになるようだ。大人しく見学していれば大丈夫らしい。

 今日の予定は、この中央街の散策だ。貿易港にも非常に興味があるが、昨日移動してきたばかりですぐに移動するのは落ち着かない。馬車では中央街まで1時間程度だったが、それも舗装され速度の出やすい環境だったからで徒歩だと半日はかかるだろう。貿易港まで、馬車や車で約2時間半かかるらしいので後回しになった。

 自分達の泊まっているホテルを中心に出来るだけ満遍なく捜索しながら観光する。

 各所に見所もあるようなので退屈はしないですみそうだ。


 出来るだけ休憩を挟みながら楽しそうな道を行きたいな。


 地図上の観光スポットと昨日の貰ったパンフレットを見比べながら、今日の予定を立てていく。

 僕が質問すればラズリィーはある程度は答えてくれるけれど、巫女姫捜索は僕の任務なので、あくまてサポートとしての意見なのだ。細かいことは僕が決めて行動するように良さんからも言われている。


 『迷宮ダンジョンでも自分の勘で4階まで降りてこれたんなら、自分の勘を信じていい。自分の思う方向へ進むほうが正しいよ』


 どうやら、あの迷宮ダンジョン自動捜索オートマッピング能力スキルが低いと1階層で1日費やすこともあるくらい広大らしい。後から聞いてシノハラさんの大雑把さと、甲斐さんの苛立ちの理由がより明確になった。

 全く自覚はないが、何かしらの感知系能力が一応あるらしいので、自分がココは、と目についた場所をチェックしていく。

 何か面白い発見があるかもしれない。

 冬の巫女姫が、ここまで文明が発達した世界の人々が捜してみつからないのに、あっさりアルクスアで見つかるとは思っていない。

 最悪、紛争地域にいるかもしれない。

 危険な場所へ向かう前に少しでもこの世界の経験値をあげておきたい。

 ゲームみたいに自分のレベルが表示されてないので、育ってるかは自分にはわかりづらいだろうけれど、何もしないでいるよりは積極的に動いたほうが良いような気がするのだ。


 ある程度、今日の予定を立てて時計を見たら8時半を少し過ぎた所だった。

 あとは、歩きながら考えることにする。地図だけみても実際に歩いてみたら変更点が出るかもしれない。柔軟な対応は大切だ。

 持ち歩きできる地図をポケットに突っ込んでロビーに下りると、ラズリィーは昨日と同じ場所に座っていた。


 「ラズさん、おはよう!」

 「おはようございます、ふぶきさん」


 声をかけると立ち上がって此方へ向かってくる。

 今日は、可憐なレースのついたブラウスに、これまた裾にレースが豊富についた膝丈のフレアスカートだ。肩から小さなポーチを提げている。いつでも彼女は可愛らしい服装だ。


 「今日も可愛いね!」


 何の気なしに感想を言うと、


 「あ、ありがとうっ」


 ラズさんは頬を染めて恥ずかしそうにした。釣られて僕も赤くなる。

 これを動揺せずにいられるようになるには、まだまだお互い経験値が低いようだ。


 「ラズさん、朝食希望ある?」

 「いえ、特に。朝食はどこで食べてもあまり変わりがないと思うし、お任せします」


 僕は、ポケットから地図と自分で立てた予定コースをラズリィーに見せる。


 「こんな感じでどうかな?」

 「それでいいと思う」


 彼女の賛同を得たので早速ホテルを出る。

 外は、中央街だけあって、働いていると思われる人々が忙しそうに行き来している。時々、僕らのような観光客が混じっている。足取りが違うのでわかりやすい。地元の人は、躊躇なく目的地へ向かっていく。観光客は、戸惑い気味に進んでいく。

 僕とラズリィーは、昨夜行った『アクアパレット』とは逆方向。馬車停めの方向へ進む。

 その途中で、『モーニングサービス実施中』のノボリをみつけたので深く考えずにそこで朝食をとることにした。

 喫茶店『パインの気持ち』のモーニングは、喫茶店だけあってパンとサラダのプレートセットをモーニングとして提供していた。そこにプラス卵をつけたりヨーグルトをつけたりと割と日本でも馴染みあるモーニングスタイルだ。

 店名をみた時に、『パインの気持ち』ってどんな気持ちだよ!と文章にすると(笑)を語尾につけたいような気持ちになったが、食後のデザートでその意味を知ることになった。


 「まさか、モーニングのデザートが、パイン半分とは思わなかったね!体中パインの匂いしそうだよ」

 「本当に・・・通常のメニューだとどうなるのか気になるね・・・」


 ラズリィーは、パイン半分は完食出来なかったので残りは僕は責任を持って食べました。


 「うん。モーニングメニューしか置いてなかったけど、昼間いったらパイン詰め合わせとかありそうだね!」

 「流石に二人では食べ切れそうにないわ」


 二人で顔を見合わせて笑いあった。

 朝食から、予想外の展開だったが、僕は楽しんでいた。

 小・中学校と行けなかった修学旅行、その悔しさを今取り返しているような気がする。

 異世界で、可愛い女の子と旅行が出来るなんて、人生何が起こるか本当にわからない。

 わからないから、楽しいんだよね。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ