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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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貿易都市 アルクスア 5

 上着を取ってロビーへ降りるとすでにラズリィーが待っていた。

 正直、補助アイテムのお陰で適温環境が確定している上に、元々の特異体質あつがりの僕には上着は必要ではないのだけれど、人目もあるし、何よりも女性に夜風で不自由な思いをさせるのはよくないと思うからだ。夏の日に母が『男と女の体感温度は違う!夏の冷房効かせ過ぎ!』と父とやりあっていたのを思い出す。女性は冷やしてはいけないのだ。漫画とかでもチラホラ見かけたから本当のことなのだろう。

 ラズリィーは、ワンピースの上に薄手のカーディガンを羽織っている。ロビーにあるソファーに座って何やら印刷物を見ている。


 「おまたせ。何、見てるの?」


 声をかけると此方を見上げて微笑んだ。


 「私もさっき降りてきたことろです。これ、先程、沢渡さんに頂いたんです。この辺りのグルメガイドですって」

 「へえー」


 僕は、ラズリィーの向かい側に座って一緒に印刷物を見る。日本の駅前にある周辺ガイドと似たつくりで、A4くらいの大きさの新聞のようにめくれるパンフレットだ。そこには、地図と色んなお店の名物料理の写真が載っている。ほとんどが食事で、デザートが少し。アルコールの類が載っていないのは、僕たちの年齢に合わせて選ばれたからだろう。


 「そういえば、この世界の成人って何歳なの?」


 思いついた疑問はすぐ聞くのがいい。勿論、女性の年齢とスリーサイズはこれに当てはまらない。


 「それは、種族によってさまざまね。あとは、本人の気持ちの問題かな?」

 「え、お酒とかタバコは?」

 「特に規制はないわ。乳幼児に飲ませた場合は問題になる場合もありますけど・・・」

 「え、子供が万引き・・・窃盗とか傷害事件を起こした場合は?」

 「人間の世界と違って自己責任ですから・・・・子供であるからといって減刑されることはないの。そもそも、国同士の行き違いの調整でもない限り一般人は裁判は滅多にしないから。『どっちでもいいけど、なんとなくスッキリしないから第三者に決めてもらう』くらいの諍いくらいで。捕まればだけど、窃盗なら本人が労働で支払うか、傷害や殺人なら相手の関係者に殺される場合もありますね」


 おおう・・・お気楽緩々のようで結構厳しいな異世界・・・


 「流石に、私はもう15だから、充分に大人として扱われます。ふぶきさんは、落ち人ですから、生まれた土地の法に沿って未成年として此方では対応されると思いますよ。立野さんも落ち人ですから、ふぶきさんの年齢に沿ったお店としてこちらを薦めてくださったのではないかと・・・」


 そうかぁ・・・

 ラズリィーは15歳か。僕は16歳だから、日本なら同級生か、中学三年生ってところか。


 と、最初暢気に考えていたのだけど、ラズリィーのセリフの後半部分で思考が止まってしまった。

 固まった僕を見て、


 「ふぶきさんは、お酒の飲めるお店のほうがよかった?」

 「あ・・・いや・・・飲んだことないし・・・それはいいよ」


 うん、今はお酒よりも・・・


 「ラズさん、今、立野さんが落ち人って言った・・・?」

 「ええ、そうですよ。確か、日本のとうきょうという都市にお住まいだとか」


 東京・・・・

 そういえば昼間、立野さんが『基本的に夜しかいない』って言っていたのは、つまり昼間は日本で普通に仕事をしているということ・・・なのか?


 僕の反応を見てラズリィーは小首を傾げる。


 「もしかして、真王陛下からは何も?先代冬の巫女姫様の叔父にあたる方ですよ」

 「あー・・・」


 僕は何とか言葉を繋げる。もう考えるよりも言葉に出すほうが先になっているくらいだ。


 「先代が落ち人だったってのは聞いてた・・・あー・・・じゃあ、茶髪でこう・・・シャギーの入ったロングヘアのお姉さんがそう・・・なのかな?」


 言いながら、耳の横辺りで手を上下させる。


 「ええ。それで間違いないかと。先代のお姉さま、立野 みぞれお姉さまはそういう髪型をされてました」


 なるほど・・・やっと合点がいった。

 何故、立野さんがあそこまで写真の女性に拘ったのか。

 つまり、あの女性は先代冬の巫女姫で、新たに現れない当代を捜して3年。いきなり自分の姪の能力スキルと同じような能力スキルを持った人間の男が登場したら、何かしら思うところがあっても仕方ない。

 どうにも思い出せないけれど、僕は彼女に会ったことがあるのは間違いがないのだし。

 状況的には、先代巫女姫の死と僕の死につながりがあるのも間違いはない。


 「お姉さまと知り合いだったの?」

 「いや・・・それがよく思い出せなくて。会ったことはあるはずなんだけど」


 僕が一度死んだことによる記憶の混乱なのか、もっと子供の頃のことでよく覚えていないのかもハッキリしていない。


 「ラズさんは、親しかったの?」

 「私は、春だから、毎年1度は会う程度でした。巫女姫の住む神殿には、私もお姉さまも住んでなかったから、他の巫女姫様たち程の密な交流はなかったです」

 「あー、そうなんだ」


 そういえば、落ち人だから行ったり来たりしてたって言ってたな。ラズさんは、蒼記さんの家だろうか?いくら婚約者フィアンセといえど婚前に同居はしないか・・・

 しかし、この世界ではありえるかもしれない。油断大敵だ。


 「立野さんが落ち人だったとは・・・。なんか知らない間に他の落ち人にも出会ってる気がするよー」


 良さんや甲斐さんみたいに魔族だとハッキリわかっている人以外の名前を知っている人といえば、シノハラさんと役所のシンヤさん、沢渡さんは今、話題にでなかったから違うのだろう。


 「真王陛下の周りには、落ち人の方が多いから、そうかもしれませんね」

 「そうなんだ、世間って結構不思議で溢れてるんだね。今日一日でいっぱい驚いたよ」


 最近は、王城で講義ばっかり受けていたから、久々の遠出で気持ちが浮ついてるもかもしれない。なにせ、可愛い女の子と一緒の旅だしね。


 「驚いてばかりもいられないし、どこで食べるか決めようか。僕、お腹空いてきちゃったよ」

 「それでしたら、ボリュームのあるものが良いかしら?」


 二人で手元のパンフレットを覗き込んだ。

 

 

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