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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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貿易都市 アルクスア 4

 案内された応接室で待っていたのは、二人の成人男性だった。一人は初めて会う人だったが、一人は顔見知りだった。


 「よ、おっきー!元気してたかー?」

 「あ、はい。タテノさん、お久しぶりです?」


 タテノさんで会ってるよな?

 王都の役所で、甲斐さんが連れてきた怖い人・・・だったはずだ。

 いきなりすごまれて怖かったことと、模擬戦の後いつのまにか居なくなっていたことを覚えているが、こんなテンションの高い人ではなかった。まるで良さんのよう・・・

 おっきーっていうのは、目線からいっても僕のことだろう。笈川だから、おっきー・・・


 「らずちゃんもお久さ!いつぶりだったか」

 「お久しぶりでございます。タテノ様、2年ぶりでしょうか」


 タテノさんは、ラズリィーのことをギュッと抱きしめる。


 中年が10代の少女に何やってるんだ・・・セクハラじゃないのか・・・


 ラズリィーは、特に嫌がる様子もない。ひとしきりギュギュっとした後で、彼女を離しぼんやり見守っていた僕を同じように抱擁する。苦しくないように優しく包まれているが、正直嬉しくはない。


 「班長。笈川少年が、戸惑っています」

 「ごめんごめん。おっきーがここまで来たのが嬉しくて」


 てへ、と語尾につきそうなくらい軽い口調で言いながら抱擁から開放された。


 なんだろう・・・このテンション

 もしかすると良さんよりも高いかもしれない・・・


 「笈川 吹雪君。はじめまして。自分は、アルクスア中央街の警備隊員、沢渡サワタリ 一登カズトです。よろしくね」


 タテノさんの隣に立っていた30代後半くらいの男性が名刺を差し出した。その名刺には中央に名前だけで特別役職などは書いていない。


 「こちらは、ウチの班長の立野さん。一度面識があると窺っています。こんな調子の方ですが、腕は確かですので安心してください」


 と、もう一枚の名刺を差し出してくる。


 タテノさんは、やっぱり立野さんだったんだ。


 名刺には苗字しかかかれていない。フルネームと苗字だけの自己紹介の違いって何なんだろう?

 そういえば、蒼記さんもフルネームだったけれど、ラズリィーは名前だけだ。

 良さんや、甲斐さんには後から苗字を教えて貰ったというか講義でも教えられたから、もしかしたら苗字はあるけれど、何かの都合で言わない場合もあるのだろうか?


 でも、立野さんは名前じゃなくて苗字の方なんだよね?なんでだろう?


 「おっきー。この間は驚かせてゴメンね☆ちょっと性急過ぎだって子猫ちゃんに後から怒られちゃったよー」

 「あ・・・はい。あの、僕こそ思い出せなくてゴメンナサイ」


 この異様なまでの明るい口調と、あの日の立野さん、どちらが素の彼なのかはわからないが、少なくとも平常心ではいられないほどの大切なことだったのだ。あの写真の女性のことが。


 「まあ、立ち話も何ですからどうぞ」


 沢渡さんに進められて僕たちは、立野さんと沢渡さん、僕とラズリィーの組み合わせで向かい合わせに座った。役所のお姉さんがいつのまにかお茶を用意してくれていた。

 応接室の間取りは、王都の役所と大差ないシンプルな造りだ。


 「真王陛下から、お話は窺っています。お二人は自由にアルクスアを観光されるといいでしょう。昼間は、余程のことがない限り問題は起きないと思いますが、夜間は酔っ払いなどもいますから、出来れば街灯のある場所を通るように心がけてください」

 「はい」


 沢渡さんが、手馴れた様子でテーブルに地図を出して現在地と、警備隊の詰め所、少し危険な裏路地などを教えてくれる。


 「基本的に、こちらからお二人に干渉はしません。ですが、こちらの者がある程度見守ることは許可して頂きたいと思います」

 「えーと・・・つまり、わかりやすくボディガードするわけじゃなくて、影から見守ってるって感じですか・・・?」

 「ええ、そうなります。同じ者を長時間つけませんし、個人情報を漏らすようなことはありません、こちらはプロですから。安心して普段通りにお過ごし下さい。この襟章をつけている者が警備隊の者です。つけている間は公務中ですから、何かあれば声を掛けて下されば対応します」


 そういわれて襟章を見ると、学校の校章のような形をしたピンが確かに襟元に刺さっていた。模様は、帆船と槍だろうか?そういえば、アルクスアには南西に貿易港があったはずだ。

 沢渡さんの説明を黙って聞いていた立野さんが、


 「俺は一応班長だけど、基本的に夜しかいない。昼間は、サワが責任者だからよろしくにゃー」

 「そうなります。一応、お二人の宿泊場所と当面の活動予定などをお伺いしておきたいのですが」

 「それでしたら・・・」


 沢渡さんに、宿の場所の説明をラズリィーがしている間、僕は立野さんを観察していた。

 この間のあの時の必死な様子と今のお気楽な感じのギャップが凄い。


 にゃーって・・・にゃーって言ったよ。中年男性が・・・


 ラズリィーが普通にしているということは、コチラが通常なのだろう。彼女は腹芸が出来るほうじゃない。どちらかというとすぐにアワアワして小動物みたいな可愛く動揺している。

模擬戦での様子を思い出してみる。

 食事をしながら遠くから見ていただけだけど、シノハラさん相手に善戦していたと思う。恐らく、良さんよりも粘っていたほうだ。僕よりは明らかに、沢渡さんよりも恐らく強いのだろうと思う。

 写真の女性のことも気になってるし、この街にいる間に友好を深めておいて損はないだろう。


 「到着早々ご足労頂きありがとうございました」

 「おう、夜遊びしないで早く寝るんだぞー」


 二人に別れを告げて一旦ホテルに戻る。

 戻る途中で時間を確認したら夕方の6時過ぎだった。すぐに夕食にしてもよかったが、海が近いせいか夕方の空気が肌寒く上着を取ってロビーに集合しようということになった。

 昼間は、無難に『うどん』ですましたが、大都会であり海も近いアルクスアだ、お寿司などもあるかもしれない。ここにいる間に新発見があるといいな。

 この世界に来て、一番わくわくしているかもしれない。

 一応、どこからか警護されていたとしても、大人の干渉が少なく、可愛い女の子と一緒なのだ。多少浮かれても仕方がないよね?

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