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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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貿易都市 アルクスア 1

 春が安定して、王城から見える景色が新緑と華やかな花々になった穏やかな日、僕は『冬の巫女姫捜索』の初日を迎えることになった。

 城下町周辺は、講義の合間の散策を何度かしているので、現段階、何も感じることがないのならば、他の町から始めようということになった。

 目的地は、『貿易都市 アルクスア』

 魔王が治める黒の領土で最大の商業産業都市であり、他勢力との交流も多く行われている都市でもある。その分、人口密度が多く、他勢力との小さな小競り合いはあるものの、迷宮ダンジョンや閉鎖的な小国に比べると安全であるという点で選ばれた。

 大都市なので、柴犬達はお留守番。

 そして、自由な捜索を邪魔しないという理由で、僕とラズリィーの二人旅ということになった。


 「大丈夫だよ。アルクスアには、治安維持のための警備隊もいるからね。気楽に観光気分でいってくるといいよ」


 良さんは、いつもの調子でお気楽だ。


 「でも、あのラズさんと二人きりというのは・・・」


 まだ友人になったばかりの異性と二人きりなのも問題だと思うけれど、巫女姫に護衛をつけないというのはもっと問題なのではないだろうかと僕は思う。


 「ふぶきさん、大丈夫ですわ。私、アルクスアは何度か訪れたことがあります。お任せ下さい」


 隣で、ラズリィーがニコニコと無邪気に笑っている。今日の彼女は、髪の毛を軽く纏めて薄いオレンジのワンピースだ。膝下まである裾から白いレースがヒラヒラとして可愛らしい。蒼記さんと比べるとラズリィーは女性らしい装いを好むらしい。


 僕が心配しているのは土地勘ではないのだけれど・・・。


 「ささ、早く出発しないと今日中につかないよ」


 僕は、良さんに馬車へ押し込まれる。

 本来、王都からアルクスアまでの道のりは徒歩が一般的らしいが、二人で予定などの打ち合わせをするのには馬車が良いだろうと、甲斐さんが用意してくれた。ちなみに、限られた者だけしか使用許可がおりないが、直通の転移門ワープゲートもあるらしい。『それじゃ旅っぽくないからツマラナイ』と良さんに却下された。僕としても、色んな場所を見て回れることは楽しみなので馬車で充分だと思う。


 「大丈夫だよ。楽しんでいっておいで」

 「真王陛下、お心遣いありがとございます」


 良さんの隣に立っている甲斐さんが助け舟を出してくれないということは、本当に安全なのだろう。そして良さんに意見する気力もないのだろう、困ったような苦笑いから僕も諦めざるを得ない。


 「じゃあ・・・いってきます!」





 馬車が動き始めてしばらく、王都を抜けるまでは見慣れた街並みなので僕は、ラズリィーと話して過ごすことにした。


 「体調は、もう大丈夫?」

 「ええ。とても安定しています。ふぶきさんのおかげですわ」

 「いや・・・偶然の産物なんで・・・あ、そういえばこの間、ケーキありがとう。美味しかったよ」


 僕の言葉に、ラズリィーは、花が咲くように笑顔になって、


 「それはよかったですわ!自分で持っていきたかったのですけれど、さすがに魔王城には気安く訪問するわけにもいかなくて・・・」

 「ああ・・・やっぱり政治的な何かで・・・?」


 僕の問いに彼女は、


 「私は、元々は、白の民族ですの。自国ならともかく、他国の王城へは平民がいくには手続きが多くて。だから、蒼記様にお願いしたのです」

 「あ、そうなんだ」


 確か、白は議会制民主主義だと教わった。かなり、日本に近いイメージなのに平民とかあるんだ。つまり、議員は、上流階級の人々で構成されているのだろうか?


 「じゃあ、僕は、黒の民族扱いになってるのかな?」

 「ふぶきさんは、落ち人ですからどこにも属さないことになります。ご自分の意思で、選ばれれば受け入れられますよ。新しい国を作ることも出来ます」

 「え!?」


 彼女のセリフの後半部分に絶句する。


 「未開の土地を開拓するもよし、既存の国家を征服するもよし。元々の属国がない状態ですから、開国は、この世界の生まれの者よりは容易いですわね」


 普通のことのように言う。

 良さんの話は、これでまた一つ裏付けられたわけだ。

 確かに、自分の生まれた国を裏切るという過程がないだけ、落ち人は自由度が高いのは事実だろう。


 「なんか、知らないことがいっぱいなんだよなー、僕」

 「大丈夫です。私が一緒ですから」

 「うん・・・ありがとう。頼りにしてる」

 「ええ。おまかせください」


 とても誇らしげに僕を見つめてくるラズリィーに、


 「お願いがあるんだけど・・・」

 「なんでしょう?」

 「僕たち、友達になったんだよね?」

 「ええ。そうですわね」

 「じゃあ、もうちょっと砕けた感じで話さない?歳も同じくらいだと思うし。二人だけなんだからさ」


 僕のセリフに、ラズリィーは暫く考えてから、


 「ええ・・・そうで・・・そうね。ふぶきさんは、お友達だもの」

 「うん。そうだよ」


 僕たちは、眼を合わせて微笑みあった。ふと、疑問に思って質問する。


 「そういえば、蒼記さんに対してもそんな感じだったけど、貴族だからなの?二人はとても仲が良さそうにみえるけど」

 「蒼記様は、私の婚約者フィアンセですから」


 予想外の答えに僕は硬直してしまう。


 え・・・同性婚ありなの?

 貴族なのに、跡取り問題とか大丈夫なの?

 コレがマキちゃんが言ってたオススメしない理由なの?


 僕の沈黙をどう解釈したのか、彼女は、


 「あの、私たちの間には恋愛感情はないの。蒼記様には、建前上、婚約者フィアンセが必要で、私は、昔とてもお世話になったお礼としてそういうことになっているの」


 状況がイマイチつかめない。

 二人の間に恋愛感情がないのは、わからなくもない。どちらかにその気持ちがあれば、僕と二人きりで捜索になど出かけないだろう。

 同性婚は・・・やっぱり、この世界の自由意志尊重のなせるわざなのか・・・ありえなくはない。

 あれほどの美少女が、男にダミーの恋人を頼んだら、相手が勘違いして何かしないとも限らない。ならば、気心のしれた同性の友人に頼むのは・・・あり?ありなのか?

 僕が自問自答を繰り返していたら、ラズリィーは更なる爆弾を投下してきた。


 「あの、私にとっては蒼記様は恩人なだけで。それにっ、蒼記様には、恋人がいらっしゃるから、本当に結婚することは絶対にないからっ」


 

 


 


 

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