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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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お願いごと

 このままじゃマズイな、と自分にもわかっている。

 元々、特異体質のせいで、同級生の女子とも世間話程度で、特別親しくしたこともない僕は、異性にかなり免疫がない自覚がある。

 それに加えて、目の前の透き通るような繊細な美少女、それに小柄で愛らしい小動物のようなラズリィー、どうしても甲斐さんみたいな年上の男性と対峙したときのようないつもの自分、が上手く機能しないのだ。


 世の中の彼女が途絶えたことがないって人に教えてもらいたい。

 どうしたら、自然に振舞えるんだろうっ


 「フブキ、ボーっとしてるとマキ全部食べるぞ」


 マキちゃんに声をかけられて我にかえる。

 慌てて僕は、自分の分を確保する。


 「笈川君」

 「はい」


 ケーキを食べるのを一旦中断して蒼記さんをみる。


 「この間は、ラズリィーを助けてくれてありがとう。あのあと、検査したんだけど、一般的な巫女姫よりもかなり安定した状態まで回復していた。本当に、ありがとう」


 彼女は、座ったまま深く頭を下げた。


 「や、あの、僕も無我夢中で、たまたま出来ちゃっただけなんで!頭上げてください!」


 僕は、慌てて頭を上げてもらう。

 実際、結果が良かっただけで、ただただ、彼女が元気になればいいという一念だけで偶然発動した能力スキルだったのだから。

 しばらくして、意を決した様子で彼女が、


 「笈川くん。迷惑ばかりかけて申し訳ないのだけれど、ボクのお願い聞いてもらえるだろうか?」

 「お願い?」


 僕に出来るようなことだろうか?


 「あの、能力スキルのことだったら、制御出来てないんで期待には応えられないと思う」

 「違うよ。巫女姫捜索のことなんだけど・・・ラズを一緒に連れていってもらえないだろうか?」

 「ええ!?」


 僕は、驚きの声を上げる。


 「本人が、どうしても一緒に行きたいと言ってるんだ。彼女は、春を引き継ぐ少し前から目が見えなくなったけれど、それまでは平民として生活していた。市井のことでは君の役にたつだろう。能力スキルを使えば、多少の治癒なら可能だし。・・・お願いできないかな?」


 チラリと上目遣いで見られて、その凶悪なおねだりに僕は困惑する。


 「オイ、ソレは、オマエも一緒に行くって意味か?」


 マキちゃんが、いつになくトゲのある声音で言った。

 彼女は、頭を振り、


 「いいや、ボクが行くと言えば、政治的にも揉めるのはわかってるよ。笈川君が望むなら別だけど。あくまで、ラズの代理として来たんだ。公式行事でもないのに巫女姫が王城に来ると外野が煩いからね」


 巫女姫は世界の共有財産である以上、理由もなく権力者の居城を訪れては世界紛争の火種になりかねないということだろうと僕なりに解釈した。

 基本は、自由気ままな性質だけれど、お互いに譲り合うことで平和を維持している。

 揉め事が起きるような振る舞いは、それぞれが自重しているのだろう。


 「なら、イイ。カイも、オマエじゃなきゃ許すだろう」

 「なんで、そんなに嫌われちゃったかなー」


 蒼記さんが、肩を竦める。

 それは、僕も不思議だ。甲斐さんは、非常に温和な性格だと思う。

 蒼記さんではなく、他の中院家の人物と余程のことがあったのだろうか。それでも、本人と血族は別個の人格だ。そこは、彼も重々承知しているはずなのに。

 不思議だな。


 「どうかな。笈川君。お願いできないかな?」

 「どうって言われても・・・僕が勝手に決めるわけには・・・」

 「真王陛下からは、許可を頂いているよ。君が良しといってくれればだけど」


 あらかじめ許可を取ってあったらしい。

 それもそうか、と納得する。

 僕の保護者は、一応、良さんってことになっているし、彼女は貴族だ。先に上に打診しておくのは当然といえる。


 「正直、僕にはどこが安全で危険かわかってないんです。なので、甲斐さんや、シノハラさんが危険だと判断した場所以外・・・町の中とかなら・・・大丈夫だと思います」


 最近の打ち合わせでは、まず人の多い町。近場から始めようということで纏まりつつあった。


 「本当かい!僕もラズを危険な目にあわせたくないからね。それで充分だよ!」


 彼女は、嬉しそうに微笑んだ。

 その後は、ケーキを食べながら、穏やかな午後のひと時を過ごした。

 蒼記さんが帰った後、マキちゃんは残ったお菓子を食べながらポツリと言った。


 「レンアイは自由だけど・・・ソウキはオススメしないぞ」

 「うん・・・?わかってるよ?公爵令嬢だし、あんな綺麗な人とどうにかなれるわけないよ」


 マキちゃんは、ハァーとため息をついて、


 「チュウコクはしたからな。うっかり本気になっても助けてはやらないぞ」

 「わかってるって」


 何をそんなに心配してるのか、マキちゃんは何度も念押しして帰っていった。

 その夜、一人で残っていたケーキを食べている時に、ふとあることに思い至った。


 貴族が、自由に貴族を辞めることができるこの世界なら、貴族同士じゃなくても本人同士が合意すれば結婚出来るんじゃないの?


 正解である可能性は高いと思った。

 では、何故マキちゃんは執拗にやめておけと忠告したのか。

 僕が、本気で蒼記さんを好きになっても絶対に報われない何かがある・・・?

 その理由として一番最初に思いついたのが、『蒼記さんにはもう決まった相手がいる』ということだ。

 でも、オススメしない理由にはならないような気がする。

 単純に、僕の勘繰り過ぎで、時田公爵家と中院公爵家の確執の問題かもしれない。


 考えてもわからないし、今の所、僕が彼女に抱いている好意は、恋愛感情ではないので保留することにした。綺麗だな、と思うことと、交際したいと思うことは別だ。

 そこで考えるのをやめて、日課である自室の探索を少しばかりしてから眠りについた。

 テレビのチャンネルの変え方は未だ謎のままだ。

 

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