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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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突然の訪問

 春の祭典から、一ヶ月が過ぎようとしている。

 王城の僕に与えられた部屋から見える山々の山頂付近の雪は溶け、街道に咲いている花々も春らしく咲き誇り目を楽しませてくれている。

 僕はといえば、冬の巫女姫捜索の為の準備と、基礎教養の講義に追われながらも平穏な日々を過ごしている。甲斐さんは、2日に1度は様子を見に来てくれる。シノハラさんは、『お前のお守りで拘束される前に息子とスキンシップしてくるわ』と出かけたきり会っていない。


 「シノハラさんって家族想いな一面もあるんだね」


 何気ない僕の呟きに、3時のオヤツ休憩に乱入してきていた(ほぼ毎日くる)マキちゃんが、齧っていたクッキーを落っことした。


 「知らないってコワイな」

 「え?本当は家族と上手くいってないの?」


 マキちゃんは、落としたクッキーを拾い上げて手で汚れを払いながら(毛だらけの手で払うことに意味があるのか疑問だけど)、


 「シノハラが、執着してるのは長男だけだろうな。しかし、長男はシノハラが大嫌い」

 「ええ?」

 「二人の間にナニがあったのかマキは知らないけど。今頃、殴りあいでもしてるんじゃないかな」


 スキンシップ=殴りあい・・・

 なんとも過激な家族交流だ。

 でも・・・


 「でも、シノハラさんが本気出したら危ないから、加減してジャレてるんなら仲良し?なのかな?」

 「いや、本気だろうな。クレも、シノハラ並みに強いからな」


 息子さんは、クレさんというらしい。


 「マキにはよくわからないけど、イマイチ伸び悩んでいる息子を育てている、らしいよ。確かに、シノハラの方が強いんだけど、どこが伸び悩んでるのかマキには意味不明。クレは、シノハラが嫌い過ぎて冷静じゃないのかも」


 息子さんも、かなり強い人なんだな、ということはわかった。


 「もし、フブキがクレに会うことがあっても、シノハラの話題はしないほうがいい。そこだけ守れば、クレは、とても頼りになる」

 「そうなんだ、うん。おぼえておくよ」


 そう答えて僕もクッキーを齧る。


 「そういえば、甲斐さんもシノハラさんの事、嫌いだったりするのかな?」

 「カイが?」


 マキは、しばらく考えてから、


 「カイは、マジメだから。シノハラみたいな自由なヤツ苦手かもな。あと、フブキを迷宮ダンジョンに勝手に連れて行ったから。自分が守るっていったフブキを危ないメにあわしたからかも」

 「そっか」


 なるほど。

 そう考えれば、納得できる部分もあった。

 シノハラさんは、スパルタするタイプ。

 甲斐さんは、基礎からキッチリ教えていくタイプなんだろう。

 そんなことを考えていると、扉がノックされて侍女メイドのアマリカさんが入っていた。

 アマリカさんは、王城にきた初日から僕の食事や服のことなど身の回り全般をしてくれている専属お世話係だ。30代前半くらいの、茶髪を結い上げた如何にも侍女さん!といった落ち着きのある女性だ。


 「失礼致します。笈川様、お客様がいらっしゃっています」

 「お客様?」


 僕には、お客様が誰なのかわからなかった。

 良さんや、甲斐さんたち知り合いの人は、アマリカさんを通さずに自由に会いにくる。

 彼女が案内してくるのは講師の人くらいだ。


 「はい。中院 蒼記様でございます」

 「え!?」


 思いもしなかった名前に僕は驚いた。


 「お通ししてもよろしいですか?」

 「あ、はい」


 僕が、返事をすると彼女は頭を下げ出て行った。

 程なくして、アマリカさんに連れられて、蒼記さんがやってきた。

 今日も、変わらず超絶美少女だ。青銀の神は、今日は束ねられていなくて、シャツも春らしく薄い黄緑色で襟元に軽くレースがついていることが唯一華美な装飾で、パンツはシンプルな動きやすい感じのものを穿いている。手足の細さ、肌の透き通るような白さ、どこをみても美しい。ただし、やはり胸部は全く感じられない。もし、これで胸が豊かだったらバランスが崩れるような気もするので、繊細な造詣の美少女に豊かな胸は必要ないのだろう、と思う。健康的な肉感的な美女には、やはりそれなりにボリュームがあるほうが好ましいとも思う。


 「笈川君、こんにちは。突然お邪魔してごめんね」

 「蒼記さん、こんにちは。今、ちょうどお茶していたところです。よかったら、ご一緒にどうですか?」


 僕は、マキちゃんが座っていない方のソファーを勧める。


 「ありがとう。マキちゃんも、久しぶり」


 座りながら、マキちゃんに声をかけている。僕は、食器棚から新しいカップを取り出して珈琲を注ぐ。この部屋に住むようになって、随分と設備に詳しくなったと思う。ただ、まだテレビのチャンネルの変え方はわからない。誰かに聞けば簡単にわかるだろうけれど、夜、講義の後、部屋を探索するのが小さな娯楽の一つなので聞いていない。


 「ウム、久しぶり?お前の親父には昨日会った」

 「そう」

 「持ってた菓子をねだったら蹴られた」

 「そりゃ、ご愁傷さま」


 二人の会話を聞いていると、どこを突っ込めばいいのかと頭を悩ませる。

 色々、凶暴な噂のある中院公爵(蒼記さんの父親が現当主らしい)に菓子をねだったマキちゃんが勇者なのか、普通に断らずに蹴りをいれた(しかも同じ階級の公爵家の血族に)中院公爵が乱暴な性格なのか。この場合、お互い様、ドロー・・・かな?


 「蒼記さん、珈琲です。どうぞ」


 テーブルの彼女の座ってる方へカップを置くと、アマリカさんが新しいお菓子を持ってきてくれたので受け取ってそれもテーブルに置く。


 「ありがとう。このお菓子はラズが作ったんだ」


 と、新しいお菓子を指差す。指差す、と表現したけれど、正確には右手全体でお菓子を示した。何気ない仕種が、育ちのよさを感じさせる。


 「ラズさんが!手作りのお菓子なんて光栄です!」

 「ふふっ。笈川君にって頑張って作ってたんだよ。ぜひ、食べてあげて欲しい」


 お菓子は、形状はパウンドケーキに近いと思った。どっしりとした厚みのあるスポンジ生地の中に細かく刻んだドライフルーツのようなものが入っている。フォークで一切れ取って食べると、濃厚なバターと洋酒の香りがした。甘味は控えめで食べやすい。


 「とても美味しいです」

 「そう、とても喜ぶよ」


 蒼記さんは、まるで自分が褒めてもらえたかのような、嬉しいけれど照れくさいような仕種で微笑んだ。その攻撃力に僕は食べるのも忘れてしばらく見とれてしまった。

 

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