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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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神様のお節介

 世界の崩壊というどう解釈しても恐ろしげな言葉とあくまで軽い口調の生命を司る神様に、どう反応していいのかわからなくて戸惑う。

 僕と、人形の創造主マスターさんと先代冬の巫女姫だった立野さんが過去に行った何かで、それは回避されたらしいことはわかった。

 生命を司る神様の言う『世界』が、『こちら』『地球』のどちらなのかはわからない。

 それぞれ別の世界でありながらも繋がり影響しあっているらしいので、この場合は両方の可能性もある。

 その世界の崩壊を、僕の笈川 吹雪としての人生と記憶の一部、人形の創造主マスターさんの命、立野さんの命、そして、当代冬の巫女姫の能力スキルの封印で回避できたのだとすれば、大きな視点から見れば少ない犠牲で済んだと思うべきだろう。

 けれど、個人的には、納得いかない部分もある。

 僕の死で、悲しんだ人がいる。

 両親も昴も、数少ない友人も。

 人形の創造主マスターさんには、暮さんがいたし、立野さんのことは、伯父さんである立野さんや、家族である水川伯爵家の人々が、どこでいつ亡くなったのかもわからないことに今も心を痛めている。

 理不尽だ。

 何も知らない人の続いていく未来の為に、自分達の大切な人を悲しませることは、辛い。

 でも、と小さくため息をついた。

 それでも、過去の僕は選んだ。

 まあ、仕方がないよね。

 今の僕でも、同じ選択をしただろう。

 僕は正義の味方でも清廉潔白な人格者でもない。

 けれど、知ってしまった。

 そして、やれる能力スキルがあった。

 大切な人に悲しい想いをさせてしまうけれど、その人達を失う未来よりはずっと良いと考えてしまっただろう。


 「俺たちは、やれるだけはやったからね。これ以上、被害が大きくならないように止めてくれよ」


 人形の力強い言葉に、無意識に頷いていた。


 「そうだよねえ。うん、気持ちはあるんだけどねー。俺が干渉するのもねえ」


 うーん、と唸りながら苦笑する神様に、あ、これはやる気ないな、と思った。

 僕が当然、そう感じたくらいだから、人形もそう判断したのだろう、再び声に怒りが混ざる。


 「あんたが俺たちよりも、アイツを特別に思ってるのはわかってるけどさあ!結局、その本人だって苦しんでるじゃないか」

 「それは仕方がないよねえ。ほんとーに、どうにかしたいとは思ってるんだよー」


 人形の怒りを、神様はあっさりと軽く交わしてしまう。

 こういうのを暖簾に腕押しっていうんだっけ?

 人形も怒りを持続させることがバカバカしくなってきたのか、はぁぁーとわざとらしく大きなため息をついただけで追求はしなかった。

 それにしても、色々なことがわかったようでわからない。

 2人は、自然な感じで会話を続けているけれど、記憶がスッパリ消し飛んだ僕には正確なことはわからない。

 すぐそこにいる神様は、思ったよりもフレンドリーなのだから、思ったことを言ってみてもいいだろうか?

 怒られたら謝ればいいか、と自分を納得させて恐る恐る声をあげた。


 「あのー、350階層の封印って、神様が解除するんじゃ駄目なの?」


 だって、ねえ?

 神様だよ?

 能力スキルの使い方も手探り状態の僕が行くより簡単に終わらない?

 まあ、駄目だから僕がやらされてるんだとはわかっているけれど、言うだけ言ってみたかったので自重しなかった。


 「んー、やってもいいけどぉ。吹雪君が、ここでの生活力を見に着けるのに丁度良いし、今すぐ解除したら木戸さんの娘の器が耐えられないと思うよー?」


 神様からの気の抜けた返事に、脱力する。

 木戸さんの娘さんの健康の為というのには同意出来るけれど、ここでの生活力に迷宮ダンジョン350階層までの戦闘力はいらないと思う。

 料理人なら、25階層程度で充分だってちゃんと知ってるんだからね!


 「それに、キミが行く意味はちゃんとあるから」


 優しい口調でそう言われて、色々と納得は出来ないけれど頷くしかなかった。

 自分でやるって決めたことでもあるし、やりますよ。

 出来れば、冬の巫女姫の能力スキル云々関係なく、気楽に余暇に進めていくような状況ならよかったのに。

 マーカスやアディ達と遊ぶみたいに趣味みたいな感じで。

 まあ、ただ生活するだけならば、本物の迷宮ダンジョンじゃなくて、オンラインゲームの方で充分だと思うから、本当に僕を迷宮ダンジョン350階まで行かせたいと神様が考えているのならば、この状況は都合が良いのだろう。


 「あんた、吹雪君に何かさせようとしてるの?まさか、まだ何かに巻き込むつもりか?」

 「やだー、こわーい。そんな怒られるようなことじゃないよー?これは、まあ、ちょっとしたお節介だよ。吹雪君にとって悪い結果にはならないから安心していいよ」


 再び怒気を含んだ人形の言葉に、神様は軽い口調で返答した。


 「お節介ねえ」

 「うん、そこは信用して。俺はー、キミたちのことも大好きだからねー」

 「神の大雑把な博愛ほど不安なモンはないと思うけど」

 「あははー。それは仕方がないねー」


 人形の棘のある言葉さえ、神様は笑って交わしてしまう。

 これは、もう話し合いになってないよね。

 それでも、神様の言葉通りなら、そう悪い状況ではないらしい。

 僕にとって悪い結果にならないのなら、もしかしたら他の誰かには不都合な何かが起こるかもしれないけれど、どうなるのか明確じゃない間は、他の誰かのことまで考えている余裕はない。

 結局、神様が出てこようと出てこまいと、僕のやることに変わりはないわけだ。


 「さーて、俺はそろそろお暇しようかなー。良さんに気付かれちゃったぽいしー。またねー」


 生命を司る神様は、唐突にそう言うと姿を消した。

 この世界は、人だけじゃなく、神様も自由過ぎるなあ。

 唖然としていると、コンコンッと軽快に扉がノックされて返事をするまえに開いた。


 「ああーっ。間に合わなかったかっ」


 良さんは、室内を見回して大きなため息をついた。

 多分、神様の気配に気付いて来たのだろう。


 「つい今の今まで居ましたよ」

 「やっぱりかぁー。勝手に開けて入ってゴメンね。どうしても話したいことがあったんだけど、毎回逃げられるんだよね」


 肩を竦めて困り顔の良さんに、人形が声をかける。


 「もしかして、あの人、まだ逃げ回ってるの?」

 「そうそう。吹雪君には姿見せるんだけどねえ。俺たちには全く姿見せないよ」

 「本当マジかー。こうなったら、こっちから積極的に攻めていく?」

 「あー、それもアリかもねえ。んー、ちょっと打診してみるかなー」


 話の流れ的に、生命を司る神様が、良さんたちを避けていることはわかった。

 そして、神様相手に攻めていくなどという恐ろしげな企みが良さんと人形の間で交わされているのを意味がわからず聞いていることしか出来なかった。

 誰か、僕にわかるように説明してくれないだろうか。


 


 

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