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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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神様なのに

 冬の祭典に向けて、神事の練習でうっかりミスをしてしまうのではないかという、新しい胃痛の種と戦いながら過ごしたティータイムの後、すっかり打ち解けた様子の昴とラズリィーと一緒に王城内の庭園を散歩した後、一緒に夕食を食べた。


 「じゃあ、明日の昼間は来れないから。夕方は、役所まで一緒に行くからね」

 「うん。わかった」

 「椎名さんも、2日連続で申し訳ないですけど、昴の事よろしくお願いします」

 「そんなに畏まらなくても大丈夫よ。夕方までちゃんと一緒にいるから安心してお仕事頑張ってね」

 「はい」


 良さんからの命令でもあるのだろうから、断られる心配はなかったけれど、椎名さん本人の態度を見てもイヤイヤ面倒を見ているという風には感じなかったのでホッとする。


 「それじゃ、僕は部屋に帰るね。おやすみなさい」

 「ええ、おやすみなさい」

 「吹雪お兄ちゃん、おやすみー」

 「おやすみなさい」


 女性陣に就寝の挨拶をして自室へと向かう為に廊下を歩く。

 なぜなのか。

 幾ら仲良くなったからといって、なぜ一緒に寝泊りしたがるのだろう。

 僕が明日のことで考え込んでいる間に、女性陣は昴の部屋に泊まることが決定していた。

 サニヤとリアを泊めたことといい、昴が人一倍寂しがり屋か、人懐っこいのだろうか。

 マーカスとは、同じ城内に住むようになってから、一度も互いの部屋で寝泊りしたことはない。

 会おうと思えば会える場所だし、自分の時間も欲しいしなあ。

 まあ、最近はいつ動き出すかわからない人形と一緒にいるのだけれど、どれだけ流暢に話しても人形は人形なのか、プライベートな時間を阻害されたと感じたことはない。

 動いて話している時は、人間味みたいなものを感じるのに、一度動かなくなると、完全に物としか思えなくなるのだ。

 プログラムされただけの擬似人格だから?

 見た目が精密に出来ているわけでもない布の人形だから?

 なんでだろうなー、と思いつつ自室のドアの前にたどり着いて違和感を感じた。

 周囲を見回しても誰もいない。

 しかし、なぜか何かの気配を感じた。

 思いつきで索敵の能力スキルを使うと、隣の部屋にサニヤとリアと思われる気配と、自室の中に属性獣たち5匹分の気配が脳内に認識された。

 人形は、やはり生物ではないので含まれていないようだ。

 変だな。

 自分の感じている違和感は、サニヤやリアではないように思えた。

 考えてもわからないのでとりあえず部屋に入ろうと扉を開けると大きな声が響いてきた。


 「あんた達のせいだろう!」


 かなり怒気を含んだその声に驚いて扉を押したままで固まってしまった。

 僕が扉を開けたことに気付いたのか、それきり静かになったので恐る恐る扉を押す力を入れて部屋の中を覗くと、僕のベッドの上に仁王立ちした人形と、ソファーに座っている茶髪の一見平凡そうな青年に見える生命を司る神がいた。

 怒鳴っていたのは、人形の声だった。

 一体、何がどうなって僕の部屋で人形と神様が喧嘩をしているのだろう。

 戸惑う僕に、生命を司る神が、ヒラヒラと手を振って、


 「そんなところで固まってないで入っておいでよー」


 と、物凄く軽い口調で言われた。

 その軽さは、初めて良さんと出会った時に感じたのと同じ衝撃を僕に与えた。

 軽っ。

 神様なのに、口調軽っ。

 過去に出会った時は、そもそもほとんど会話らしい会話もせず、一方的に用件を伝えられて消えていたので気付かなかったけれど、今の口調は確実に若者らしい話し方で、神様らしい敬虔で厳かな感じは一切存在していなかった。


 「あ、吹雪君、おかえりー」


 人形も、僕が戻ってきたことで怒りが少し収まったのかいつもの口調に戻っていた。


 「ただいま」


 何が何だかわからないまま、僕は自室に入り扉を閉めた。

 とりあえず、神様の隣は恐れ多かったので右斜め前くらいの位置にソファーを動かして座った。


 「留守中に勝手にお邪魔してごめんねー」

 「いえ、えと、いらっしゃいませ?」


 相変わらず軽い口調の神様に動揺しつつも何とか返事をする。

 神様なのに、普通の人みたいに謝罪されてしまった!

 目前に居るとても自然に人間の青年っぽい雰囲気の神様に戸惑う。


 「あー、吹雪君。この人は良さんと似たような性質タチだから畏まるだけ無駄だよ?」

 「あははー。そうだよー」


 不敬な人形の言葉を笑って肯定する生命を司る神様。

 え?

 これって、本当にどういう状況なの?


 「まー、近所のお兄さんだと思って接したらいいよ?あと、こんな面倒な状況になってる原因の1人でもあるから、吹雪君は苦情を言っていいくらいだよ?」

 「・・・はあ」


 面倒な状況というのは、どれを指しているのだろうか?

 冬の姫巫女が不在だったこと?

 僕の記憶がスッパリと消えていること?

 原始種族のご主人様としての僕の記憶のこと?

 昴に加護を与えて眷族化させたこと、は間違いない。

 まさか、昴をこちらに『落とした』りもしたのだろうか。


 「うーん、色々と心当たりがあったりなかったりして申し訳ないなあ」


 まるで僕の考えを読んだかのように、神様が申し訳なさそうに後頭部に手をやる。

 まるで、じゃなく、筒抜けと思っているべきだろうか。


 「まあまあ、俺にも全く非がないとは言えないからゴメンねとは言っておくけどー。選んで道を作ったのは君たちだからねー?俺は強制はしてないよー」

 「それはわかってるけどな。そもそもの原因さえなければ、俺も吹雪君もこうなってないからね?」

 「うんうん。それに関してはウチのコたちが本気マジでごめんーね」


 ブツブツと苦情を言う人形と、本気で謝罪する気があるのかとても怪しい神様のやりとりを呆然と見守る。

 ええと?

 つまり、僕が現在巻き込まれているアレコレは、神様関係のトラブルで、死ぬ前の僕と人形の創造主マスターは進んで巻き込まれたということだろうか?

 何でそんな面倒事に巻き込まれることになったんだよ!と、過去の僕に苦情を言いたいところだけれど、じゃあ、お前は全てを知っていて自分に何か出来そうなのにスルー出来るのかよ?と言われたら、多分、無理だ。

 人形だって言っていたはずだ。


 『今回の巫女姫の代替わりに、ちょっとしたトラブルがあって、俺と吹雪君と立野さんで出来る限りの最善をつくした結果だから、苦情は受付ないよ』


 最善をつくして、今のこの状況なのだ。

 もし何もしなかったら、どうなっていたのだろう。

 そんな僕の考えに答えるように神様が明るい口調で言った。


 「まあ、せっかくここまで成長した世界が崩壊しなくて俺も嬉しいよー」


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