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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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土曜日の午後 2

 ラズリィーと一緒に昴の部屋の前に行くと、椎名さんと出会った。


 「こんにちは。忘れ物?」

 「椎名さん、こんにちは。え、と、今日は自由時間になりました」

 「椎名様。お久しぶりです。ご一緒にお茶致しませんか?」


 僕が挨拶をした後で、ラズリィーーが挨拶をした。

 口調がよそ行きだ。

 前に、一緒にフォロワーツ湖に行った時もそうだったような気がする。

 まあ、相手は王族だから、友人である僕と同じような態度という訳にはいかないのだろう。

 そう考えると、婚約者である蒼記さんにも硬い口調であることは、少しだけの優越感を感じさせられた。

 でも、本当に不思議だよな。

 今、思い浮かんだこの事実に内心首を傾げる。

 いくら親しい人には愛情のない偽りの婚約だと知られていても、2人の関係は他人行儀過ぎる気がする。

 公爵という貴族相手だからなのか。

 蒼記さんの方は、ラズリィーを『ラズ』と呼ぶし、恋愛ではないと明言されているけれど、それなりに大切にしていることは今までの言動でも見て感じることは出来た。

 僕にとっては不愉快な話だけれど、結婚しても彼女と性交渉をする気がないこともそれを感じさせる一端だ。だって、本当に義務的な関係ならば、男である彼は、ラズリィーに気持ちがなくても行為をすることは出来るのだから。

 そうしない程度の愛着を蒼記さんは、ラズリィーに抱いていると思っていいと思う。

 では、ラズリィーの方は、というと、大切な人というよりは、過去の何かでの恩を返そうとする義理のような感情のような気がするのだ。

 自分の『結婚』や『人生』を相手に捧げる程の恩って何だろうか。

 2人が婚約に至った経緯を知らないので疑問しか浮かんでこなかった。

 僕が考え込んでいる間に、椎名さんとラズリィーの間で話が進み、一緒に午後のティータイムをすることになった。

 コンコン、と昴の部屋として借りている部屋の扉をノックしてから中へ声をかける。


 「昴ー。入るよー」

 「吹雪お兄ちゃん?どーぞー」


 中からの返事を聞いて扉を開けて僕、椎名さん、ラズリィーの順に室内に入る。

 昴は、持ってきた荷物を出して何かしていたようでリビング部分のテーブルにノートや筆記具が置かれていた。

 宿題かな?

 

 「予定変更で時間が空いたから戻って来たんだ。お菓子もあるし、お茶しよう。あと、紹介するね。さっき、話してた巫女姫様で、春担当のラズリィーさんだよ。ラズさん、これが僕の従姉妹の昴。よろしくね」


 僕が、2人にそれぞれを紹介すると、一瞬だけ戸惑ったような空気を感じた。


 「ラズリィーさん!吹雪お兄ちゃんの従姉妹の如月 昴です。週末だけ遊びに来てます。よろしくお願いします!」


 昴が、元気一杯にペコリとお辞儀をすると、ラズリィーもペコリとお辞儀を返して、


 「昴さん。こちらこそ、よろしくお願いします」


 と微笑んだ。

 そこに、2人の間に感じた不思議な空気はもうなかった。

 なんだったんだろー、と思っていると、昴がテーブルの上を片付け始めた時に、シャツを軽くクイッと引っ張られて、昴に聞こえないような小さな声でラズリィーに、


 「イトコさんが、女性だと思ってなくて吃驚しちゃった」


 と、言われた。

 成程。

 イトコだけでは、性別がわからなくて、態々、日本から遊びに来る程親しいのなら同性だと思われても不思議ではないか。

 昴って、性別関係なく使える名前だしね。

 男だと思ったから、甘いものは好きかしら?って言ってたのか。

 謎が解けてスッキリしつつ、テーブルを片付け終わった昴と一緒に簡易キッチン部分でお茶を用意していると、昴からも、


 「ラズリィーさん、滅茶苦茶可愛いね!髪の毛ピンクでふわっふわだね!まさに春って感じで吃驚しちゃったよー」


 と、興奮気味に伝えられた。

 うん、わかる。

 僕も、初めてテレビの映像で見た時、同じような衝撃だったよ。

 昴も勿論、可愛いけれど、ラズリィーの花咲くような可憐さは、日本のアイドルが霞んで見えそうな勢いがあるよね。まあ、日本で本物のアイドルを生で見たことがないから、実際に目の前にいたら同じくらい可愛いのかもしれないけれど、それは想像でしかない。

 そして、そんなラズリィーの可憐さを吹き飛ばすほどの美少女だと思っていた蒼記さんに会ったら、昴はもっと驚くのだろうか。

 もし機会があって会うことがあったら面白いかもしれないなーと、ついニヤニヤしてしまっていたら、


 「吹雪お兄ちゃん、何か変なこと考えてるでしょー。ラズリィーさんが、可愛いからってデレデレしちゃって!もうっ」


 と、見当違いな方向に怒られて二の腕を抓られた。

 痛い。

 ラズリィーは、可愛いけれど、デレデレなんかしていないぞ。

 ひっそりと片想いしているのがバレないように、普通の友人ぽく振舞うように意識してるんだからな。




 午後のティータイムは、特に問題もなく穏やかに過ぎていく。

 キャッキャッとはしゃぐ昴を椎名さんとラズリィーが穏やかに、でも楽しげに対応してくれて、僕のんびりと麗しい女性たちを見ながらラズリィーが持ってきたカップケーキを食べる。

 想像通り、女性の集まりの中では身の置き所が難しい。

 余計な口を挟む余裕もなく、たまに振られる話題の相槌に終始する。

 これは、明日も精神的に厳しいかもしれないな。

 従姉妹である昴や、何度かお出かけや食事をしたことのある椎名さんとラズリィーでも若干、緊張しているのに、明日は、一度しか面識のない夏と秋の巫女姫様と一緒だ。

 緊張している上に、神事の訓練か。

 上手に出来るだろうか。

 いや、明日、うっかり季節の変遷である神事が成功しても困るのだ。

 能力スキルが発動しない程度に頑張りつつ、能力スキルについて理解するって、あれ、思っていたよりも大変なことじゃないか?

 まったく理解出来ないのも困るけれど、うっかり事故がないように注意しないといけないのか。

 今更ながらに気付いた事実に、忘れかけていた胃痛が再び再発した。

 むぅ。

 精神的ダメージって治癒系の能力スキルで治るのかな?

 精神力上昇の能力スキルもあれば怖いモノや憂鬱とバイバイ出来るかな?

 そんな弱気に負けそうになりつつ、どうにか頑張るぞ!と気持ちを奮い立たせた。


 

 


 

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