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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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春の祭典 2

 神事を見学して、そして今、ラズリィーを目前にして確信に近い、けれど信じたくない事柄を質問する。


 「世界の季節を変えるほどの能力スキルは、本人にはもの凄い負担なのではないですか?」


 良さんは、僕を真っ直ぐにみて、


 「それは、半分だけ正解で、半分は間違いだね」


 と、困ったように言った。


 「どういうことですか?」

 「神事・・・能力スキルを使う事が負担なんじゃない。その能力スキルを持つこと、それこそが負担なんだよ。故に、一般的な魔力よりも強大な、王や姫と呼ばれる程の異能ギフトを持つ者は例外なく短命だ。肉体が、耐えられないんだ」

 「どうにもならないんですか?」


 どうにもならないことは、返事を聞かなくてもわかっていた。

 巫女姫を失うことは、この異世界の季節を、人々の生活を揺るがすことなのだから、出来る限りの対策はしてきたはずだ。


 「あらゆる可能性を試しているよ。多少、そう・・・稀に延命出来た事例もある。ただし、本当にそれは稀なことだ」

 「そんな・・・」


 僕は、言葉を続けられない。


 「ふぶきさん」


 ラズリィーさんが柔らかく僕の名前を呼んだ。


 「ふぶきさん、わたしは、以前お話したように平民ですの。平民は、貴族と比べて魔力保有量が低いのが普通なのです。だから、わたしは他の巫女姫たちと比べても極端に弱い。それだけなのです。他のお姉さまたちは、わたしよりはずっと健康でいらっしゃるのよ。そんなに悲しまないで」


 僕は、頭を横に振る。


 ちがう・・・ちがうんだ


 「他の巫女姫なんか、会った事もない人のことなんか今はいいんだ!今僕は、ラズさんの心配をしてるんだよ!」


 目の前に横になっている、弱々しい彼女の手を握る。

 その手は、小さくて冷たかった。

 暑さの苦手な僕は、人の体温が苦手だった・・・でも・・今は、彼女の冷たい手が、その生命の儚さの象徴のように思えて辛い。


 「ふぶきさん、手・・・暖かいですね。とても心地よいですわ」

 「ラズさんが、冷え切ってるんだよ。もっと暖かくしないと。それで・・・また一緒にお弁当食べようよ」


 僕は、彼女の手を両手で包み込む。


 もっと・・・もっと暖かくなればいいのに・・・


 目蓋を閉じて祈るような気持ちで、その包み込んだ手ごと、僕の額に押し付ける。

 その時、キィィィィンと左手中指にはめていた補助アイテムが低い音を立てたと思ったら、一瞬、ほんの一瞬だけ僕と彼女の身体が一つの体温に、二人の境界線がなくなったような錯覚を受けた。


 なに・・今の・・・?


 僕は、眼を開けて自分の手に包まれたままの彼女の手を見つめた。

 その手は、僕と同じくらい暖かく、とても自然に馴染んだ感覚がした。


 「ふぶき・・・さん?」


 呼ばれて視線を向けると、先程よりも頬に赤みがさして元気そうな表情をしたラズリィーさんが、瞳をまん丸にして此方を見ていた。


 「ラズ?君まさか・・・」


 蒼記さんが、驚いたような表情で問いかける。

 ラズリィーさんは、彼女の方を向いて、小さく頷き、花のように微笑んだ。


 「ええ・・・蒼記様、わたし・・見えています」

 「え?」


 僕は、マヌケな声をあげた。


 確か、ラズリィーさんは、目が見えないと言ってたはずだけれど・・・


 「ちょっと失礼」


 良さんが、僕の手からラズリィーさんの手を離して間に入る。少し屈んでラズリィーさんの頬に手をあてる。暫くの沈黙の後、


 「彼女から、吹雪君の能力スキルの欠片のようなものを感じるよ。そして、彼女自身の肉体と異能ギフトがより強くなってる」

 「それって・・・」


 良さんが、こちらに向き直って笑顔を向けた。


 「彼女は、人並みの寿命と得たというわけだ。・・・今までは、負担軽減の為に失われていた視力も回復したみたいだね」

 「一体どうして・・」

 「君だよ。さっき、アイテムが呼応していただろう、君の能力スキルだよ。いや・・・もう異能ギフトといってもいいだろうね」


 異能ギフト

 講義で教えられていた、一般的な能力スキルが、自分の得意魔法だとすれば、異能ギフトはその上位能力。

 巫女姫相当の氷の能力スキルを持ってると言われていだけれど、巫女姫同等か、それ以上の異能ギフトだと言われて僕は驚いた。


 「その驚きっぷりからして、制御はまったくできてないみたいだから、今回のは、彼女を治したいと思った火事場のなんとかだろうけどね」


 よくやった!と良さんは、僕の頭をまたクシャクシャに撫でた。


 「なんだか・・・よくわからないけど・・・笈川君が、ラズを助けてくれたのはわかったよ。・・・ありがとう」


 蒼記さんが、戸惑ったような表情でお礼を言う。

 可愛い・・・


 「やっ、僕もよくわかってないんでっ。でも、よかったです」


 僕は、ちょっとドキマギしてしまう。

 そんな様子をみて、ラズリィーさんが、


 「ふぶきさんは、蒼記さんがお好きなのね。妬けてしまいますわ」


 ぷぅと頬を膨らませる。

 その仕種が、子リスのようで愛らしくほっこりする。


 「や・・・好きとかじゃなくて・・・、蒼記さん、綺麗だから・・・あ、ラズさんも勿論可愛いよ!単に僕が、可愛いと話すのに慣れてないだけなんでっ」


 慌てた僕の言い訳を、良さんが面白そうに見ていた。





 その後、急激な回復の余波があってはいけないということで、ラズリィーさんは医師に診察してもらうことになった。蒼記さんは、その付き添いでついて行った。

 僕は、昨日の迷宮のことも含めて話をしよう、と良さんと城へ戻って誰もいない一室で向かいあって座っている。


 「昨夜、甲斐とシノハラさんから聞いたよ。属性獣と、属性結晶のこともね」

 「はい。アイツラ、戻してきた方が良いんでしょうか?」

 「ん?首輪渡したでしょ?もう君のだよ。好きにしていいよ」

 「ありがとうございます!」


 僕は、ほっとする。

 首輪を貰って名前までつけた後だけど、こうして言葉で確認がとれるまではどこか不安だった。

 そんな僕を良さんは優しい眼で見つめた後、少し真剣な感じでこう切り出した。


 「それで、シノハラの話と、役所の報告からある程度、君がどうして死んだのか目測がついたけど、聞くかい?」



 


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