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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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迷宮3階 2

 キノコが、思わぬ大物に狂喜乱舞するように跳ねている。

 僕は、逃げ出したいのに、体が思うように動かなくて声も出せない。

 ゆっくりとキノコが近付いて、僕のズボンの裾に触れる。瞬く間にズボンが溶けていくのが見える。


 このままでは、僕も食べられてしまう・・・


 かといって、体が動かないので為す術もない。


 キノコのくせに!キノコのくせに!

 お前なんか、本当ならバーベキューの添え物なんだからな!


 と、バーベキューをしたことのない僕の八つ当たりに似た感情に呼応するように槍がキィィィンと低い音を発したのを感じた。けれど、槍を動かす力が入らないので攻撃しようもない。


 動けたら・・・お前なんか、この槍に突き刺して、あの花の火で焼いて美味しく食べてやるんだからなっ!

 ああ・・・そうだ、丸焼きにしてやるんだからなっ


 瞬間、まさに僕の右足を溶かそうとしていたキノコがボッと発火して一瞬で燃え尽きた。

 すぐ近くで燃えたにもかかわらず、まったく暑さを感じなかった。それほど一瞬の出来事だった。

 そして、コロン、と魔石が転がり落ちる。

 僕は、動けないので、ただそれを見つめるしかなかった。


 これ・・・僕がやったのかな?

 丸焼きにしてやるって強く思ったら、燃えた?

 槍から火が出たわけでもないのに・・・?


 倦怠感と、軽い混乱で意識が飛びそうになる。このままじっとしていては、先程のリスを捕食したキノコに見つかってしまうのではないか、と思うのだが抵抗虚しく僕は意識を失った。



 どのくらいだろうか、気を失っていたことに気付いて目を開けると、目前に茶色の毛並みがあった。

 体が重い。ずっしりと何かがのしかかっているような感覚があるが、暖かくて心地よく感じる。あれほど、暑さが苦手な僕が心地よいと感じるぬくもり・・・・頭をどうにか持ち上げて腹部を見ると、柴犬が乗っかって眠っていた。よく見ると、足元にも、頭周辺にも・・・

 僕は、恐る恐る体を起こす。どうやら、キノコの胞子毒は抜けたようだった。


 「くぅーん」


 犬達が、僕を見上げて甘えた声を上げる。


 「お前たち・・・さっきのやつらか・・・?」


 数は、同じ5匹だったが、見分けはつかなかった。

 襲ってくる危険性はないようなので、周囲を見渡す。


 「あれは・・・キノコに、リス・・・イノシシ?」


 僕から少し離れた所に、横たわるキノコやリス、イノシシと思われるモンスターが力なく横たわっているのがみえた。

 僕は、槍をいつでも刺せるように構えて一番大きいイノシシに近付く。

 2メートルはあるだろう巨体に30センチほどの牙を持っている。その体には無数の噛み傷があった。


 「お前たちがやったのか?」


 柴犬に問いかけると、尻尾をパタパタと誇らしげに振る。


 「もしかして・・・僕が気を失っている間、守ってくれていたの?」

 「ワンッ」


 そうだよ、とこちらの言葉を理解しているように吠える。

 僕は、そっと手を伸ばして、柴犬の頭を撫でる。


 「ありがとうな。さっきは置いていったのに・・・心配して様子見にきてくれたのか?」

 「ワンッ」

 「ワワンッ」

 「キューン」


 他の犬達も、撫でてと周囲に集まってくる。

 僕は、ありがとうな、と皆同じように撫でた。

 しばらく、じゃれあった後、僕は倒れていた場所に落ちていた茶色の魔石を回収する。恐らくキノコの魔石だろう。犬達が倒した分の魔石はどうしようか?と近付いて捜してみたが、不思議な事に1つも見つけることができなかった。


 モンスター同士だから?

 何か、魔石を出す条件みたいなものがあるんだろうか?

 実は、まだトドメがさせていないとか?


 僕は、試しにイノシシに槍を数度指してみたけれど、死体が傷だらけになっただけで、特に変化した様子はなかった。


 「こうしていても仕様がないか・・・早く階段みつけないと」

 「ワワンッ」


 犬達が一斉に同じ方向へ駆け出す。そして、立ち止まって此方を見ている。


 「もしかして、道案内してくれるのか?」


 僕は、犬達についていってみることにした。


 

 それから、何度かモンスターに遭遇した。

 柴犬達が、先制攻撃で倒してしまうこともあれば、僕が隙を見て槍で援護したりしながら森を進んでいく。キノコも、最初からわかっていれば距離を取って槍を突けばいいだけなので左程脅威ではなかった。

 ただ、魔石は、ほとんど取れなかった。


 「うーん?やっぱり一人で狩らないと駄目なのかな?」


 試しに、犬達に待てをして一人でキノコを倒してみたけれど、魔石はでなかった。

 取得条件がわからない。

 しかし、もし魔石が売れるものだった場合、今後の生活の為に少しでも手にいれて置きたい。いつまでも、お客様扱いってわけにはいかないだろう。


 この世界で、生きていくことにした以上は、自活できるようになりたい。

 そして、いつかは家なんかも買って、奥さんとか・・・もらっちゃったりしてっ


 自分の想像に、カーッと顔が熱くなるのを感じて手でパタパタと仰ぐ。

 犬達は不思議そうに見上げている。


 奥さんか・・・

 やっぱり、一緒に生活するんなら、気持ちが安らぐような人がいいよね、ラズリィーさんみたいに。


 と、考えて、蒼記さんのことを思い出す。


 彼女はなぁ・・・

 怖いくらいに美しいというか、可愛いんだけれど、中院公爵家令嬢ってことは、身分違いだし、そもそも、相手にされるわけもないし・・・

 勿論、ラズリィーさんだって、元は平民ですって言ってても巫女姫様だし。そもそも、巫女さんって結婚できるんだろうか?一生、独身で世界の為に生きろって言われるのなら、もしかしたら、冬の巫女姫を見つけても、力戻さなくていいですって断られたりする可能性もあるのかな?

 その場合、僕が一生代打・・・・?

 そうなると僕は、一生童・・・いやいや・・・それはご遠慮したい。


 「ワンワンッ」

 「また、モンスターか?」


 犬達の呼び声で妄想を中断する。5匹は固まって大木の根元を覗き込んでいる。

 どうやら、4階への階段に到着したようだった。

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