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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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フォロワーツ湖 1

 夏の終わり、秋が深まり始めた今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。

 僕は、予定通り、迷宮ダンジョン26階層対策とフォロワーツ神殿の再調査の為にフォロワーツ村にある湖『フォロワーツ湖』に来ています。

 今回は、水中戦の訓練なので水着着用ですが、能力スキルのお陰で体温管理は万全です、ご安心下さい。

 そして、世の中の女性慣れしている紳士の皆さん、助けて下さい。

 僕と同じ立場の、彼女居ない暦=年齢の皆さん、あえてお知らせしよう!


 絶景であると!




 「ふぶきさん?頭が痛いの?」


 以前に来た時に荷物を置いた簡易なテーブルと椅子のある横で頭を抱えて座り込んでいたら頭上からラズリィーの心配そうな声が聞こえた。


 「大丈夫。・・・ちょっと、潜るイメージトレーニングをしてるだけだから」

 「あら、じゃあ、邪魔しないようにリアちゃんと向こう行ってるね」


 どうにかひねり出した言い訳を素直に信じてラズリィーの気配が離れていくのがわかった。

 しかし、背後からクスクス笑いが聞こえてくる。


 「じゃー、ボクは泳いでこようかなー」


 反応したら負けだと耐えていたら、わざとらしく声をかけて蒼記さんの足音が湖の方へ向かって行った。


 あの日、フォロワーツ湖へ行くことを決めた日の午後に、王城の運動場で椎名さんの同行を軽い気持ちで了承した自分を今、猛烈に後悔している。

 水中に潜るのは自分だけだと思っていた。

 マキちゃんは、前回のこともあるけれど、基本的に毛皮ぜんらなので気にしていなかった。


 だって、まさか!

 女性が潜水して魚を獲ることを前提にしていると思わないじゃない!?


 僕は、恐る恐る顔を上げて水際に集まっている皆に視線を向ける。

 サニヤ、リア、マキちゃん。

 そして、椎名さん。

 中院公爵家側から、蒼記さん、ラズリィーで合計7名がこの場にいる。

 そして、何故かなのか、椎名さん、蒼記さん、ラズリィーが水着着用だった。


 蒼記さん うん、嘘偽りなく男性だった。この目で確認した。

 椎名さん これがグラビアなら間違いなくご馳走様なのだけれど、流石に現実に目の前にいる王族の人にそんな不敬なことは出来ない。ただ、お胸様が大きい人がビキニは止めて欲しかった。こぼれそうでハラハラします。

 ラズリィー 髪の色とおそろいの桃色のワンピースタイプが超絶可愛い。これは夢なのかと頬の代りに手の甲に爪を立ててみた。痛かった。


 そんな感じで、絶賛、絶景が目前に広がっている訳だ。

 ちなみに、サニヤはいつものメイド服だ。

 いつまでも現実から目を背けてもいられないので立ち上がって柔軟体操をする。

 蒼記さんには完全に僕の動揺を見破られている。

 からかわれないように出来るだけ距離をとっておこう。

 自分の本来の目的を思い出すんだ!

 迷宮ダンジョン26階層は水中ゾーンで鮫が出ると聞いている。

 まず、水中で自在に動けるようになること。

 動きの早い魚を捕まえることで対鮫との戦闘へのスピード感を掴むこと。

 水中戦に適した武器も決めておきたい。

 槍だと水中では機動力が落ちそうな気がする。

 【雪花】も刀身が長いので扱い辛いかもしれないが、スピードに対応出来て能力スキル発動する余裕があるならば使いたい。火力だけで判断するならばだけれど。

 恐らく、不慣れな間は短刀くらいが丁度良いだろうとわかってはいる。


 「よしっ」


 考えるよりも、まず一度挑戦してみよう。

 僕は、ゆっくりと湖へ向かって歩き出した。




 「魚、焼けそうだよ」


 何度目かの潜水の後、小休憩をしていたら蒼記さんから声をかけられた。

 蒼記さんも泳いでいたからだろう、濡れた前髪が妙に艶っぽい。

 上着を羽織って胸元が見えなくなったせいで、またしても性別があやふやになっている。

 今、他人が僕達のメンバーを見たら僕だけが男1人で逆ハーレムみたいに見えるだろう。

 サニヤたちが獲った魚を焼いて食べ初めていたようだ。

 魚の横で大きな鍋が火にかけられているのも見える。

 本格的に料理を始めているようだ。


 「何だか、本格的に作ってるみたいですね」

 「椎名さんがいるからね」


 蒼記さんが苦笑混じりにそう言った。


 「やっぱり、大人の女性がいると違うんですね」

 「あはは。どう?26階層の練習なんでしょ?」

 「うーん、潜水だけなら問題ないですね。後は、実際のモンスターのスピードについていけるのか、やってみないことにはわからないですね」


 実際、潜水は上手くいった。

 漫画やゲームで慣れ親しんだものだったからイメージしやすいようだ。


 「ふーん、じゃあ、食事の後に水中で模擬戦してみる?26階層のアレと同じスピードで攻撃してあげるよ?」

 「え?」


 蒼記さんからの提案に驚く。


 「うん?同じだと不安なら2倍くらいに加速つけても良いけど?」


 僕の驚きを蒼記さんは違う方向へ解釈したようだ。

 慌てて両手を振って否定する。


 「いえいえいえ、同じくらいでいいです」

 「そう?なら、一旦、向こうで食事にしようか」

 「あ、はい。そうですね」


 蒼記さんの後について他の皆の所へ向かいながらも、頭の中は混乱していた。


 26階層の鮫って、人が泳ぐのと同じくらいのスピードなの?

 それとも、蒼記さんが物凄く泳ぐのが得意なの?


 それにしても、蒼記さんは謎だ。

 今のように、気さくに話しかけてくれるようでいて、どこか突き放してくることもある。

 ラズリィーとの婚約のこともどう考えているのかもよくわからないままだ。

 白の領地から戻って来た夜、蒼記さんにあれ程敵意をむき出しにしたサニヤが今日は穏やかだし、後でリアにも蒼記さんをどう思うか聞いてみようか。

 とりあえず、昼食を食べてしまおう。

 午後から、蒼記さんに模擬戦をしてもらって、その後、神殿の中の再調査もしなくてはいけない。

 やりたいこと、やるべきことが色々ある。

 そういえば、蒼記さんと椎名さんの前で書斎を開ける訳にはいかないな。

 どうにかして、僕とサニヤかリアだけで神殿へ入る理由も考えなくてはいけない。

 何か良い理由はあるだろうか、と考えていたら、マキちゃんにギュムッと足を踏まれた。


 「慌てない。1つ1ーつだぞ!まずは魚を食べるのだ!」


 それだけ言うと尻尾をヒラヒラさせて焼きあがった魚の所へ突進していった。

 マキちゃんは時々、ドキッとするくらい大人なことを言う。

 うん、慌てない。

 冷静に1つ1つやっていこう。

 僕は、マキちゃんを追いかけて皆の所へ駆け出した。

 



 


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