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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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行動予定

 マーカスのお見合いの翌日。

 午前中はいつも通り講義を受けて午後からは1人、自室に篭っていた。

 篭って何をしているのかというと、これから自分がしてみようと思うことの書き出しだ。

 心の中でああしよう、こうしようと思っていてもついつい忘れてしまっていることもある。

 まずは、



 サニヤに木戸さんの娘さんの寿命の期限タイムリミットを確認してもらう。

 良さんが、シノハラさんと暮さんに迷宮ダンジョン攻略の補助の打診をしてくれている間に1階層でも多く進めておく。

 【雪花】を使って危険度を確かめてみる。




 そこまで書いて読み返す。

 どのくらいの猶予があるのかわからない以上、出来るだけ速やかに事を進めなければならない。

 僕の死亡原因は、急激な氷の能力スキルの上昇だと言われている。

 先代、冬の巫女姫の霙さんが亡くなったことで氷の能力スキルが急激に流れ込んだためではないか、と。

 今になって思えば、それは少しおかしい。

 実際には、木戸さんの娘さんが冬の巫女姫だ。

 封印されているとはいえど、間違いなくその見に巫女姫相当の氷の能力スキルを秘めていることをサニヤが断言している。

 なのに、霙さんの死と同時に、僕に爆発的な能力スキルの顕現があったのは何故なのか。

 僕は、おそらくだけれど、シノハラさんたちと同じ、生まれつきの異端ディザスターだ。

 運が良いのか悪いのか、自覚がなく育ってきた。

 赤ん坊の頃は特異体質あつがりではなかったらしいし、何かのきっかけで僕の能力スキルのバランスが崩れた。

 その何か、は、先代、冬の巫女姫との遭遇ではないかと思っている。

 夢で一度だけ見た彼女が、僕にそうなるようにしむけたのか、それとも木戸さんの娘さんに封印を施した神か、その眷属がそうしたのか、はたまた第三者か。

 そこは推測の域を出ないけれど、色々と不自然でおかしなことはある。

 シノハラさんも暮さんも誰の指摘もなく自分が異端ディザスターであることを知っているようだし、僕のようにバランスを崩して死んだりもしていない。

 そして、サニヤと出会ったフォロワーツ湖の中にあった神殿。

 『天地創造』などという恐ろしいタイトルの本がある書斎をサニヤは、ご主人様の書斎だと言った。

 ご主人様、つまり僕の書斎だ。

 他にも神殿内にいくつか僕の部屋があるらしいことも零していた。

 そこに、僕の死に関する謎を解くヒントがあるような気がしてならない。

 最優先事項は、迷宮ダンジョン350階層で迷樹の雫を採って来ることだが、この謎を放置しておくと後々で問題が起こるような予感が胸の奥でザワザワとこみ上げてくる。

 出来れば、行きたくない。

 知りたくない。

 本能的な忌避感があるけれど、僕はメモ用紙に書き加えた。




 フォロワーツ神殿の再調査。




 その後も、思いつく限りの事柄を書き出して今後の行動予定を組み立ててみた。

 そうすると、どうしても午前中の講義の時間を削りたくなってきた。

 今はこの世界の常識よりも行動するほうが大切なのではないのか、と。

 丁度午後のオヤツの時間を見計らって遊びに来たマキちゃんにそのことを言うと、


 「マキは賛成しない。ベンキョーに身が入らなくてもいいから、座ってじっとしている時間、必要。慌てると大怪我する」


 と、物凄く大人らしい助言をくれた。

 なるほど。

 もっともだ。

 強制的に動くことの出来ない時間というものは冷静になるには良い時間かもしれない。

 世の中の大人は何故、余裕なくせわしないのだろう、と中学生の頃に思ったことがあったけれど、そういうことなのだろう。

 日本ならば、学生という身分の間は、学校へ通う。

 その授業中は、授業を聞いていてもいなくても座っている。

 つまり、思考熟考する時間が強制的にもたらされている。

 社会人になると、自発的に時間をつくらない限りはそうはならない。

 そう思うと、学校というシステムは無駄ではないようだ。

 ついでに、マキちゃんに迷宮ダンジョン25階の階層主、貝型モンスターの戦いかたについて聞いてみたら、


 「マキ、アイツとは戦ったことない。カイが剣でバキィってして終わった」


 という回答だった。

 要領を得ないが、能力スキルを使わなくても剣だけで倒せることは間違いない。

 昨日決意したように、今後は自重せずにサニヤの知識を使っていくつもりなのでサクサクと攻略してしまおう。

 ただし、いずれ自分の今の腕力や技量では追いつかなくなることは確実なので自己鍛錬もしっかり兼ねるつもりだ。

 迷った時はサニヤに聞きながら、自分でなんとか出来そうなモンスターは戦闘訓練だと思って頑張っていく。

 ついでに、柴犬たちのパワーアップも忘れるつもりはない。

 居るとわかっている強敵、ドラゴンとの戦いに備える為だ。

 近いうちに暮さんのペットのドラゴンを見せてもらおう。

 そのついでに、弱点、もしくはテイムの仕方を聞いておきたい。

 希望は、テイムだ。

 属性獣である柴犬たちは何もしていないのに勝手についてきてしまったので自発的にテイムをしたことがない。

 もしも可能ならば、戦うよりは仲間になって欲しい。

 オヤツのマフィンを頬張りながらそんな夢を思い描いていると、コンコンとノックの音がして侍女のアマリカさんが部屋へ入ってきた。

 まだオヤツの食器を下げるには早過ぎるので何事だろうと思っていると、来客の知らせだった。


 「お客様がいらしゃいました。木戸様ですが、こちらにご案内してもよろしいでしょうか?」

 「木戸さん?はい、勿論です」

 「畏まりました」


 アマリカさんが一礼して部屋を出て行ったのを見送って、口の周りにマフィンの欠片をつけているマキちゃんを見た。


 マキちゃんに、冬の巫女姫が見つかったって報告しても良かったんだっけ?


 世間的には、まだ冬の巫女姫発見は情報公開されていない。

 各国の要人には一報を入れたようだけれど、正式発表は秋の祭典と同時の予定になっている。

 おそらく今年の冬の祭典は僕が代打を努めることになるだろうから、『冬の巫女姫は幼すぎるために顔出しNG』という理由にして内々に神事を済ませる予定でもある。

 僕が一発で能力スキルを発動出来るかわからないという不安要素もあるので大勢の前は断固拒否した所為でもある。

 とにかく、そんな諸々の事情で、木戸さんと僕の関係性を知っている人物は少ないのだ。

 どうしたものか、と思案していると、マキちゃんが、


 「マキ、この後、用事あるから帰る」


 と口の周りを手で洗いながら部屋の扉のほうへ歩き出した。


 「あ、またね!」

 「また、明日もオヤツ食べに来る」


 余りに素早い退室に呆気に取られてながらその背中を見送った。

 恐らくは、気をきかせてくれたのだろう。

 オヤツさえ食べ終わっていれば、マキちゃんは大人なのだ。





 









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