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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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東京 3

 承さんのお兄さんと木戸さんに会うまでの時間を東京観光して過ごした。

 折角来たのだから、と松田さんが連れ出してくれたからだ。

 承さんは、所用があるらしく夕方まで別行動だ。

 東京タワーにスカイツリー。

 どちらも大きくて圧巻だったけれど、時々、サニヤが人に声をかけられるのに警戒するのに気を張りすぎて落ち着いて楽しむところではなかった。

 モデルやアイドルのスカウトから、純粋にナンパ目的まで、幅広く声をかけられた。

 周囲に溢れるほど人がいるのに、サニヤは目立つようだ。

 見慣れている僕でもサニヤは可愛いと思うし、そもそも、人間ではないのだから、人間の中に埋没するのは難しいのかもしれない。


 「蒼記さんと一緒だったらもっと大変なことになっただろうなあ」


 カフェで一息ついた時に思わず口から出た言葉に松田さんも、


 「あー、そうだろうねえ。本人も可愛いのわかってるから余計にね」


 と、苦笑した。

 確かにそうかもしれない。

 サニヤは、昔、ご主人様と一緒だった時の容姿を模倣しているだけで、自分の容姿に頓着はしていないようだけれど、蒼記さんは、自分の身分も容姿もしっかり理解した上で行動していると思う。

 しかし、恋人がいるのに、男らしく振舞わないのは何故なんだろう。

 まあ、粗野に振舞ってもきっと可愛いには違いないのだろうけれど。

 それくらい完璧な美貌だ。


 「ふぶき、疲れたの?」


 原因であるサニヤはキョトンとしている。

 自分が何故、声をかけられるのか、まったく理解していないようだ。

 そもそも、僕と松田さん以外に話しかけられても完全に無視だ。

 視界にすら入れようとしない。

 スカウトさんにはそれが充分、効果的だったけれど、ナンパの人達は酷く心が傷付いたようだ。

 同情はしないけどね。

 連れの僕と松田さんがいるのにナンパするのは失礼だと思う。

 もし、ラズリィーと一緒の時に、そんなことしたら僕も喧嘩腰になったかもしれない。



 プチ観光からの帰り道に、これから会う人について軽く松田さんから教えてもらった。

 まず、承さんのお兄さんの名前が広瀬ひろせ 紫雲しうんさん。

 当然、承さんの苗字も広瀬になる。

 松田さんの妹さんの旦那さんの苗字らしい。

 そして、その紫雲さんの学生時代からの友人の木戸きど 直哉なおやさん。

 木戸さんは、冬の巫女姫かも知れない奥さんと娘さんがいる妻帯者だけれど、承さんと紫雲さんは独身のようだ。

 話の流れで松田さんも独身だということがわかった。

 もっとも、今は、なのか、ずっと、なのかは怖くて聞けなかった。

 松田さんくらい人当たりが良くて優しければ女性にもモテただろうと思うけれど、案外、だからこそ敬遠されたのかもしれないし、藪はつつくまい。

 僕だって、恋人いない暦=年齢なのだから。


 「そういえば、立野さんも東京に住んでるんですよね?」


 ふと思い出して聞いてみた。


 「うん?そうだよ。明日にでも顔見に行く?」

 「今回はやめておきます」

 「そう?」


 松田さんが提案してくれたけれど、遠慮することにした。

 今夜の話し合いによっては、いずれ立野さんにも顛末を報告しなければいけないけれど、少し時間を置いて冷静になってからにしたいと思ったからだ。

 理由はわからないけれど、僕に冬の巫女姫の能力スキルが顕現していたことを立野さんは最初、、物凄く気にしていた。

 未だに正確には思い出せないけれど、確かに先代冬の巫女姫である霙さんと僕は面識があるし、彼女が亡くなったと同時期に僕も一度死んだ。

 気が付けば、彼女と同等の能力スキルを持て余して存在していた僕。

 しかし、僕のソレは、冬の巫女姫の異能ギフトとは違う。

 異端ディザスターは、そもそも異能ギフトよりも強い。

 サニヤの言うところの不自然な状態になっていたらしい僕が冬の巫女姫の能力スキルを所持しているように誤認してもおかしくはないし、本当に霙さんが意図的にそうした可能性も捨てきれていない。

 自分でも自分の状況を把握しきれていないのに、立野さんに話せることなんて今はほとんどないに等しい。

 どうにかして、過去の出来事を視ることは出来ないだろうか。

 漫画とがゲームだとアイテムに保存されていたり、魔法で上演されるイベントが起こったりするな、と思い浮かんだ。

 もしかしたら、サニヤに出来たりするのだろうか?

 気付いてないだけで、僕自身でも可能なのだろうか?

 これは、後で確認する必要があるな。

 まずは、今夜の話し合いに集中してからだ。

 木戸さんが、自分の奥さんか娘さんが冬の巫女姫だと聞いてどう反応するのかによって今後の対応も変わってくる。

 冬の巫女姫として、あちらへ行くことを拒絶されたとしても、今後の起こりうる色々な事柄について話し合う必要があるだろう。

 受け入れられて、木戸さんが家族を説得してくれたとしても、今日すぐにとはいかないだろう。

 幸い、まだ夏だ。

 冬までに結論が出せれば良いわけだ。

 どちらにしても、今後の僕の身の振り方も変わってくるだろう。

 まさか、このまま、松田さんにお世話になりっぱなしというわけにもいかない。

 向こうには、ラズリィーもいるし、カルスとの再会の約束も、マーカスのお見合いの話もある。

 王城には、柴犬たちもいる。

 サニヤと同じく僕の大切な家族だ。

 親元へ戻るわけにもいかないし、やっぱり、僕の住む世界は、今は日本ここじゃない。

 昨日今日と、久しぶりの日本で、懐かしい物もたくさん見たけれど、不思議と親に会いたいだとか、ずっとこちらに居たいとは思っていない自分がいる。

 どちらかというと、攻略途中の迷宮ダンジョン25階層のことが気になるくらいだ。



 こういうのも、住めば都っていうのかな?


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