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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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夏季休暇 14

 翌日の午前9時、前日と同じように僕はゲーム内の迷宮ダンジョン入り口前に立っていた。

 その隣には、良さんもいる。

 何故って、あの後、異様にモチベーションが上がった皆は破竹の勢いで5階6階と進み、7階半ばで時間終了となった。そして、水川伯爵邸で、良さんへと連絡を取ってもらった結果、


 『あ、じゃあ良ちゃんが案内してあげるよー』


 と、軽いノリの返事があり現在に至ったわけだ。

 待ち合わせ場所に居た皆も、その他のゲームプレイヤーの皆さんも視線は完全に良さんに向けられている。さすがに、元魔王。知名度が高いのは仕方がない。


 「皆、おはよう」


 声をかけるも硬直してしまって反応がない。

 仕方がないので一方的に話を続ける。


 「昨日の話だけど、OKが出たから。これから行くけど大丈夫?」

 「ダイジョウブデス」


 やはりリーダー気質のせいかアディが一番最初に声を絞り出した。

 ラッテは、瞬きも忘れて目を見開いている。

 マーカスは、感情を切り落としたみたいに硬直しているし、ナーラはボサボサの髪の毛が猫のようにブワッとなっている。


 「一応、紹介するけど・・・、この人が良さん。真王陛下だよ」

 「はーい!吹雪君のお友達の皆、よろしくね!良ちゃんって呼んでね!」


 良さんが始めて僕と出会った時と同じテンションでにこやかに手を振る。

 ようやく皆も現実に戻ってきたのか、ペコリとお辞儀をした。


 「「「「よろしくおねがいしますっ」」」」


 周囲の視線も痛いし、移動している間に緊張も多少はほぐれるだろうと、


 「じゃあ、とりあえず王城へ向かいましょうか」


 と、良さんに声をかける。


 「そうだねー!レッツゴー!」

 「さ、皆、行くよー」


 良さんを先頭にして皆の背を押して迷宮ダンジョン前から城下町への道を歩き出す。

 そういえば、自分はここまで緊張はしなかったな、と懐かしく思い出す。

 皆は良さんが魔王として現役だった頃を知っているのかも知れない。

 僕にとっては現実味がない上に想像していた魔王像とかけ離れていたせいもあるのか、異様にテンションが高くて距離感が近いなという印象のほうが強かった。


 「そういえば、良さんってどこからログインしてるんですか?」


 歩きながらふと疑問に思ったので聞いてみる。


 「自分の部屋だよ」

 「え。そうなんですか?」


 元々の用途を考えれば王族が個人的に所持していても不思議はないのかもしれない。

 ログイン中は、店員さんがいるといっても無防備になるわけだし、王族がゲームセンターで使用する場合は警備が大変なことになりそうだ。


 「ゲームセンターからログインする人の方が珍しいよ?旅行先とか家に端末持ってない初心者がお試しで使うくらいじゃない?」


 良さんがカラカラと笑う。


 「え?じゃあ、皆も自宅なの?」


 僕が皆に視線を向けるとコクコクと頷いて同意を示す。


 「あははー。実は、吹雪君の部屋にもあるよー?」

 「ええー!」


 僕は驚きの声をあげる。


 「やっぱり気付いてなかったのかー。自力で探検しようとして侍女に部屋の仕様聞かなかったでしょ?」

 「ええ・・・はい。テレビとか最初苦戦しましたよ」


 だって、客室だよ?

 テレビとポットの使い方がわかれば充分だと思うじゃない?

 まあ、そのテレビで最初かなり苦労したわけだけど、この分では、まだまだ知らない何かが部屋にありそうだ。

 しかし、自分の部屋にあるのは良いことだ。

 これで時間のある時に訓練が行える。

 思わぬ朗報に心躍らせる。

 あ、もしかして、これでラズリィーとゲーム内で会えるんじゃない?

 ゲーム内なら、最初に思い浮かべた場所からスタートできるようだし距離は関係ない。

 今度会ったら持っているのか聞いてみよう。

 そんなことを考えている間に城下町を通り抜けて門前に着く。

 当然だけど衛兵さんはいない。

 良さんが立ち止まり皆に声をかける。


 「ようこそ!ここが良ちゃんの家だよー。さすがに個人の部屋とかは見せてあげられないからそこは許してね。どこか見たい場所ある?」


 そう言われて皆は顔を見合わせる。

 しばらくすると、まずアディが、


 「あの、謁見の間が見てみたいです」


 と、控えめに声を出した。

 すると、皆も勇気が出たのか、


 「私は舞踏会が行われる場所が見たいです!」


 と、ラッテが女子らしい希望。


 「俺は、庭園が・・・、あの実家が庭師なので・・・」


 と、マーカスがはにかむ。


 「俺は、書庫が見たいです」


 と、ナーラが言うと、


 「バカっ!それは無理だろ!」

 「そうよ。お城の書庫って禁書庫じゃないの!」

 「さすがにねーよ」


 と、他の全員が激しくツッコミを入れた。

 僕はというと、王城内に書庫なんてあったんだーと驚いていた。


 「あはは。やっと普段の調子出てきたみたいだね?さすがに禁書庫は無理だけど、普通の希少本のスペースなら開放してあげるよ」

 「本当ですかっ!ありがとうございますっ!」


 いつもよりも大きな声を張り上げてナーラがお礼を言って頭を下げた。

 ボサボサ頭を見た時からなんとなく本とか好きそうだなと思っていたけれど当たっていたようだ。


 「禁書とか希少本って役所経由では読めないんですか?」


 僕が迷宮ダンジョン関係の本が読みたいと話した時には王城内の書庫について教えてもらえなかったので聞いてみる。


 「あー、取り扱いが違うからね。城内のは国の歴史とか王家関係が主だから。普通は、結婚して王族になるとか、貴族に叙爵されるとか、政治の中枢に入る人くらいしか必要としてないかな。ナーラ君は、知識欲?それとも政治に興味があるの?」

 「単純に知識欲です」

 「あはは。正直でよろしい。じゃあ、先に案内するよ。今日、開放する場所ならいつでも好きな時に読みに来てもいいよ。ただ、ウチの子供達と会ったらちゃんと挨拶はしてね?」

 「はいっ!ありがとうございます!」


 ナーラは完全に本のことに思考が支配されたようで、良さんに対する緊張を忘れてしまったようだ。

 先に歩く良さんについて僕達は書庫へとたどり着く。

 良さんが扉を開くと想像以上に広い空間に沢山の本が置いてあった。

 僕も機会があれば読みに来よう。

 ナーラは早速、本を手に取って読み始める。

 他の場所は見ないのかと問いかけたけれど、ここだけで充分だという返事が来たので残りのメンバーで場所を移動することになった。

 本当に本が好きなんだな、と感心した。


 拙い作品ですが読んで頂きありがとうございます。

 本年の更新はこれで終了です。

 皆様、よいお年をお過ごし下さい。

 来年もよろしくお願いしたします。

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