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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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迷宮26階攻略について

 食堂に到着すると、シノハラさんだけしかいなかった。

 テーブルには王宮料理人の力作が並べられ始めていた。

 給仕の侍女さんたちが忙しそうにけれど埃を立てないように静かに配膳してまわっている。

 今回は、座った席に少しづつ運ばれてくるわけじゃなく最初から席が決まっているようだ。

 位置関係的に、一番奥の席は、良さんが座るのだろうとあたりをつける。

 そして、シノハラさんの横の席と対面の席に料理が並んでいる。

 ちなみに、サニヤは並べられた皿を見ただけで自分の席が近い出来たようで真っ直ぐに一番ボリュームのある皿の前に座った。

 ここで非常に悩む。

 仲の悪い父親の横に座るのと、対面に座って食事をするのと、自分ならどっちがいい?どっちがマシ?

 自問自答しても答えは出ない。

 座るのを躊躇していたら、


 「吹雪、ここ座れ」


 と、シノハラさんが自分の横に座るように催促してきた。

 ここでも、一瞬、考えた。

 暮さんと違って息子を構いたいらしいシノハラさんの言うとおりに座った場合、食事中に事件が起きたりしないだろうか、と。

 しかし、隣に座っても事件が起こる時は起こってしまう。

 そう諦めてシノハラさんの隣に着席することにした。


 「良さんはまだですか?」


 シノハラさんに聞くと、


 「あー、さっきまでいたんだけど、どこいったんだろうな」


 何か用事でも思い出したのだろうか?

 しかし、このままでは僕1人でこの親子と平和な会話を繰り広げなければならない。

 どうにか良さんが戻ってくるまで繋ぐことの出来る話題があっただろうか。

 僕は無理矢理、話題を捻り出す。


 「そういえば!迷宮ダンジョンなんですけど!お2人は26階突破してるんですよね?あの、攻略法とかあったら教えて欲しいなーなんて・・・」


 これは、我ながらナイス話題選択!

 シノハラさんは参考にならないかもしれないけれど、能力スキルを使うことを嫌っている暮さんならば、正攻法の攻略を教えてくれるんじゃないだろうか。

 ワクワクしながら2人からの答えを待つ。

 まず、シノハラさんが、


 「あの水中かー。え?普通に倒して進めばよくない?」

 「いやいや、呼吸が続かないでしょ!」


 思わずツッコミをいれずにはいられなかった。


 「そうだねえ。潜水の要領で手早く終わらせるつもりなら、まっすぐ潜った最深層に階層主がいるから、それだけを狙って早めに次へ移動するといいと思うよ」

 「そうだな。雑魚の鮫は不味いしな」


 鮫って美味しくないんだ。

 一番深い場所に階層主がいるのがわかったのは良しとして、


 「階層主ってそんなに早く倒せるものですか?」


 さすがに低層のスライムやファイアーフラワーみたいに一撃というわけにはいかないだろう。

 25階層主が巨大な貝だという話だし、他の階層主も同様に大型種だと思っている。


 「不安なら、ユワラの実を口に入れておくといいよ。子供が川遊びする時に間違って溺れないように使うアイテムだけれど、10分くらいは水中呼吸ができるようになるよ」


 暮さんが、とても素敵なアイテムを教えてくれた。

 ソレソレ!そういうの教えて欲しかったんですよ!


 「どこで売っているんですか?」

 「王都だと、ああ、確か城内の庭園にもあったと思うよ。後で真王陛下に聞いてみるといい」

 「そうします」


 自分で水中呼吸の能力スキルの実験もしてみるつもりだけれど、何かの弾みに集中が途切れて溺れたくはない。安全対策としてユワラの実は絶対に欲しい。


 「そういえば、20階層越えたんだね。夏の祭典が終わってタイミングがあえば、ドラゴンを見にいこうか」

 「本当に!やった!」


 念願のドラゴンを見れる日は近い。

 どんなタイプのドラゴンだろう。

 漫画やゲームでは様々なドラゴンが登場する話がある。

 肉食獣のような巨体、翼を広げて空を飛ぶ、蛇のような細長い種類もいたよね。

 僕がドラゴンに思いを馳せていると、


 「洋一郎、お前、あれまだ食べてなかったのか。てっきり食用かと思ってたぞ」


 シノハラさんが爆弾を落としてきた。

 しかし、暮さんは華麗にスルー。

 この程度のことは慣れっこらしい。


 「迷宮ダンジョンにはもっと美味しいモンスターがたくさんいますよ」


 だから、自分の可愛いペットは食べません、と表情が物語っている。

 シノハラさんは、ふーんと興味なさそうにした後、


 「美味しいといえば、確か白の領地の名物って何だっけ?折角行くから食べとくかな」


 と言った。

 それは僕も気になります。


 「白の領地といえば、揚げ物が主流ですね。日本でいう天ぷらのようなものですが、野菜類の甘味が強いので若干子供向きかと思いますね」

 「天ぷら!そういえば、こっち来てから天ぷらってあまり食べたことなかったかも」

 「黒の領地では、肉を使った料理が多いですからね。魔族は元々肉食の種族が多いせいでしょうね」


 そこは民族差というものだろうか。

 確かに、思い起こせばサラダよりも肉が主張する料理が多かった。

 今、目前に並んでいる料理も25階産の甲殻類がメインだけれど、しっかり肉料理もおいてある。

 食事を話をしたせいか、空腹感を感じてきた。

 そろそろ食べたいな、と思っていたら良さんが食堂へ入ってきた。

 その手には鞘に入れられた一振りの剣があった。


 「おまたせー、お腹空いたよー」


 と、言いながら奥の席に座る。

 持っていた剣は、椅子に立てかけられた。

 何か物騒なことでもあったのだろうか?


 「とりあえず、先に食事にしよう。今日は、良ちゃんと吹雪君が25階で獲ってきた食材がメインだよ!」

 「おかげで、こっちは夕方まで暇だったぞ」


 シノハラさんが苦情を言う。

 本当に、申し訳ないことをしたと思う。

 でも、僕では良さんを止めることは出来なかったんだ。


 「ゴメンネ!この埋め合わせに何かするから!」

 「まあ、いいさ。いつまでも喋ってたら料理が冷めてしまうしな」

 「そうだね!いただきます」


 良さんがパンッと手の平を合わせて日本式の食事の開始の挨拶をした。

 僕もそれに習って手を合わせてから食事を始める。

 そこからは皆が無口だった。

 蟹って食べるとき、無口になりやすいよね。

 食べやすく切ってあってもその効果はあるらしい。

 皆、それぞれ適度に動いた後で空腹だったせいもあるのかもしれない。

 結構な量がテーブルに乗っていたのに僕らは全て余裕で食べきった。

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