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僕の異世界(?)見聞録  作者: ナカマヒロ
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ある初夏の涼しいまどろみ

 とても良い夢をみている

 ひんやりとして心地いい

 柔らかいクッションに身を沈めているような感覚

 いつまでも、こうしてまどろんでいたい


 夢だとわかっているから眼を開けたくない。

 僕、笈川おいかわ 吹雪ふぶき16歳。

 例年にない猛暑で七月上旬だというのに登校はおろか、クーラーの効いた自室から出ることすら出来ないほど追い詰められている。

 いくら猛暑でも、そこまで!?と周囲の人間からは大変不評な状況だけど、生まれつき暑さに弱い体質の僕には、根性論でどうにか出来る気温ではない。

 体質とか言い訳だろ!と学校の教師に学年が代わる度に生活指導(という名の説教タイム)をされるけれど、自分でもどうにかなるのなら、どうにかしたいと切実に思っている。

 改善方法を提示してくれるのなら、勉強でも部活でも、いっそ生涯の忠誠を誓ってもいい。

 そんな僕の一年の流れはこうだ。


 春 暑くて、外出が億劫。無理すれば登校可能。体育などで長時間屋外にいると熱中症を起こす。

 夏 気温管理(20度以下)された場所以外は室内でも活動不能に近い。

 秋 春とほぼ同様。若干だが、秋のほうが過ごしやすい。

 冬 まったく寒いと感じたことがない。半袖シャツでも余裕がある。快適に過ごせる唯一の季節。


 つまり、夏は論外。その他の季節に出来る限りの事をして埋め合わせている状況だ。

 『今年は猛暑』の天気予報通り、すでに猛威を振るっている熱風を前に早々にギブアップして、今は病気休学という名目で、級友よりも早めの夏休み中である。

 その代償として、大量の自宅学習用課題のプリントが、学校からプレゼントされている。

 課題をキッチリ提出することで通学日数を補い、冬の時期に補修授業などで他の生徒と同様に進学・卒業出来る様にと、高校入学前に両親と僕、そして学校側で、小・中学校時代の大量の通院証明書など、各種証拠書類を提出した上での長い長い話し合いの末に決められた特例だ。

 それでも、一部教師からは色々、それはもう色々・・・・


 そんな状況なので、自室から出ることもほぼできず(自宅内の移動も大変な負担なので)課題は早々に終了させて秋の訪れを待ちながらベッドでまどろんでいるわけだ。

 両親が仕事に出かけて数時間、眠ったり起きたりを繰り返しているし、陽射しが怖いのでカーテンを閉め切っているので正確な時間はわからないけれど、帰宅した気配を感じないから夕方ではないのは確実だ。まだ空腹感もないので午前中かもしれない。まだまだ眠っていられるな。と、そんなことを思っていると頭をチョンっと指で突かれるような感覚がした。

 誰だよ、人がせっかく気持ちよく眠ってるのに・・・

 無視してじっとしていると、再びチョンチョンと突かれた。

 本当に勘弁して欲しい。

 僕は絶対に起きないぞ。


 テシテシテシ


 相手は、指で突くのではなく、手の平で軽く叩き始めた。

 なんなんだよ!もう!

 苛立ちを感じて、眼を開けようとして思い出した。

 両親が留守で、一人っ子の僕の自室なのだから誰かがいるはずがないのだ。

 恐る恐る薄目を開けてみると、目の前は真っ白だった。

 本当に真っ白。

 柔らかいクッションのようだと思っていた寝床は、純白の雪だった。


 「あ、生きてた」


 声質から、男性のものを思われるセリフをきいて顔をあげると、そこには・・・・


 グレイの毛並みが艶やかに輝くロシアンブルーの猫が一匹、雪の上に座っていた。


 

 

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