九十一.一般人に発言権は無い
「であえ~であえ~華雄!であえ~であえ~華雄!」
関羽は馬上にて青龍偃月刀を振り回し、近寄る敵兵の首をちょん切りながら華雄を探し回っていた。
そして少し戦場を駆けまわっていると、立派な馬に乗り、厳つい鎧を着た華雄の姿を発見した。
関羽はすかさず華雄に名乗りを上げ、単騎突撃していった。
「戦況はどうなっておる!」
「ここからではわかりかねます。物見が帰って来るまでしばしお待ちを。」
「むむむ。関羽とやらは華雄を討ち取ったのか、否か?一体どっちなのだ?」
袁紹はそう言って戦場を見たが、双方入り乱れる大激戦により誰がどこにいるのか把握することが出来なかった。
焦る気持ちで戦況を見守る諸侯。
叫び声がこだまし、血の雨が降る戦場。
しかし、戦況は五分五分ではない。
勢いがある華雄軍が優勢であり、このまま華雄軍が連合軍を押し切ろうとしていた。
絶望的な表情を浮かべる諸侯たち。
このまま連合軍は敗れるのか。
誰もがそう思ったその時、歴史が動いた。
「???何だ?何が起こったのだ?急に戦場が静まり返ってしまったぞ?どうしたというのだ?」
叫び声を上げていた戦況が一気に静まり返り、討ち合うことなく、互いの将兵たちは棒立ちとなっていた。
戦場でただのカカシとなってしまった兵たちの群れが左右に真っ二つに分かれた。
そして、二つに分かれた兵の群れの間に出来た無人の荒野を、1人の武人が馬に乗って駆け抜けていた。
駆け抜けている武人は関羽であった。
彼の手には敵軍の将である華雄の首があった。
関羽は連合軍本陣へ戻ると、総大将の袁紹の足元に華雄の首を放り投げ、馬から降りた。
無言でポカ~ンとしたマヌケな表情を浮かべる諸侯たちをよそに、関羽は曹操に近づき、血まみれの手で彼が持っていた酒入りの杯を受け取ろうとした。
「関羽殿。ご苦労であった。約束の酒だ。ゆっくり味わうがよい。」
「御意。・・・まだ、温かいですな。」
そう言って関羽は曹操から渡された酒をグビッと一飲みした。
「うまいっ!!(テーレッテレー!!)」
高級品の酒、加えて仕事終わりの一杯は関羽の喉を潤した。
一仕事を終えて満足げな表情を浮かべている関羽に、彼の義弟の張飛が近づいた。
「さすが関羽の兄貴だぜ!よし!諸侯の皆!このまま奴らをケチョンケチョンにしてやろうぜ!!」
張飛は関羽の手柄を自分の手柄のように喜び、そして諸侯一同の方を向くと、彼らを鼓舞するような発言をした。
しかし、この張飛の発言に諸侯一同は顔を曇らせた。
彼らの表情が曇った理由がわからず首を傾げる張飛に、総大将の袁紹が怒鳴りつけた。
「馬鹿者!足軽風情が全軍を指揮するような発言をするでない!さっさとこの場から消え失せろ!!」
張飛も関羽と同様に足軽同然の存在。
そんな張飛が全軍を指揮するような発言をしたので、諸侯の英雄たちは機嫌を損ねたのだ。
この袁紹の発言に張飛は食って掛かろうとしたが、劉備がすかさず彼の前に立って動きを制し、袁紹に頭を下げて謝罪しすることで事なきを得た。
その後、華雄を倒して強気になった袁紹は全軍を指揮して、華雄軍を殲滅した。
そしてその夜、曹操は秘かに劉備ら3人に酒を贈り、彼らの功を労ったのであった。




