八十九.優秀な人は少ない
孫堅軍壊滅!
この報は連合軍に大激震を引き起こした。
慌てふためく諸侯一同に曹操が喝を入れるも、その揺れは収まることなく広がるばかりであった。
そんな彼らの元に物見から一報が届く。
「た、大変です!華雄軍が第二陣、第三陣を突破してこちらに迫ってきております!」
孫堅軍を打ち破った華雄軍は連合軍本陣に向かい進撃を開始していた。
苦戦すると踏んでいた孫堅軍を打ち破り、華雄軍の士気は大いに高まっていた。
そんな華雄軍をヘタレ連合軍は止められるはずもなく、各陣営を突破されるしかなかった。
「なにっ!い、いかん!このままでは敗れる!誰か華雄軍を止めよ!」
事を引き起こした原因である袁紹は諸侯一同に問いかけたが、皆俯くばかりで返事をしなかった。
それに腹を立てた袁紹は諸侯一同を怒鳴りつけたが、参謀の曹操が彼を戒めた。
「袁紹よ。そのように怒鳴り散らすならばお主が何とかしてみるがよい。お主の部下に華雄を討ち取れるだけの猛将はいないのか?」
「いる!が、ここにはいない!だから皆に尋ねておるのだ!」
袁紹の部下には『顔良』、『文醜』という華雄に匹敵する部下がいるのだが、彼らは自国を守るため反董卓連合軍には参加していなかったのだ。
袁紹の身勝手さに曹操は辟易したが、それを口には出さず場を静めることに専念した。
「・・・そうか。ならばしかたない。とりあえずこのまま慌てふためいたままでは良い策も思い浮かぶまい。・・・酒を持ってまいれ!」
「はっ!」
曹操は部下に酒を持ってこさせ、諸侯一同に杯を持たせた。
「とりあえず一杯飲んで心を落ち着かせようではないか。・・・乾杯。」
冷静沈着な曹操の乾杯の合図と共に諸侯一同は酒をグビッ!っと一飲みした。
しかしその時、物見から次なる報が届いた。
「た、大変です!味方の中軍が突破され、ここの守りが手薄になりました!」
「「ブーーーーッ!!」」
物見からの報告により、曹操と他3名以外の諸侯は口に含んだ酒を吹き出してしまった。
諸侯たちは急ぎ、幕舎から外に出ると遠方に砂塵が舞っているのが見えた。
「も、もう敵軍がそこまで迫っているのか!誰か何とかせよ!」
「将軍!私が華雄の首を取ってまいります!ご安心めされい!」
「おお!兪渉か!よし!華雄の首を取ってまいれ!」
袁紹の部下で武勇に優れた兪渉が名乗りを上げ、兵を率いて敵軍に向かい駆けて行った。
詳細を書くのが面倒なので一言で済ませますと兪渉は死にました。
日の出の勢いである華雄に一刀のもと叩き斬られました。
その様子を見た連合軍諸侯は再度慌てふためき、事態の収拾がつかない事態になりました。
「ええい!何と不甲斐ない!此処には18ヶ国もの英雄が集まっておきながら、華雄1人を討つことの出来る将軍を家臣に持っておらぬのか!!」
「袁紹殿。ここは拙者に任せて下さらぬか?命じて下されば華雄などサクッとやっつけてごらんにいれましょう。」
自分は何もできないくせに人に八つ当たりをする袁紹に対し、1人の武人が名乗りを上げた。
名乗りを上げた武人。それは劉備の義弟『関羽雲長』であった。




