八十六.空気は読もう
汜水関に赴いた華雄は早くも武功を上げていた。
孫堅軍の後陣に控えていた鮑忠という武将が功を焦り、500の騎兵を率いて汜水関への奇襲を仕掛けたのだが、鮑忠軍は返り討ちにあい、鮑忠は華雄の一振りで命を落とした。
「幸先よし!次は孫堅の命を頂く!」
華雄は鮑忠の首を洛陽の董卓へ送り、董卓から褒美を頂いた。
仲間が討たれたことなど露知らず、孫堅は汜水関への攻撃を開始した。
特に策は無く、正攻法の城攻めであった。
しかし、さすがは世間に名を知られているだけのことはある孫堅。
彼の城攻めは見事で、城門の上で敵軍の動きを見ていた華雄も孫堅の采配に対し、「なかなかやりおる」と孫堅を褒め称えた。
余裕を見せる華雄であったが、このまま何もせずにいるのはマズイと感じたのか、彼は周囲を見渡してこう言った。
「誰か孫堅の首を討とうと思う者はおらんか?あやつの首を取ってきた者こそ、この戦における武功第一であるぞ。」
「華雄将軍!俺が行きます!やって見せます!」
華雄の挑発的な発言に副将である胡軫が名乗りを上げた。
「胡軫か・・・よし!やって見せよ!」
「おう!」
胡軫は兵5千を引き連れ、城門より孫堅軍へと突撃していった。
双方入り乱れる激戦の最中、胡軫は孫堅を発見。
胡軫は孫堅に対し、名乗りを上げて戦いを挑んだ。
「我が名は胡軫!孫堅!いざ尋常に勝負!!」
「むっ!よかろう!いざ参る!!」
「「うおぉぉぉぉぉ!!」」
胡軫と孫堅の両者は馬の腹を蹴り、正面から真っ向勝負をしようとした。
しかしその時、胡軫に向かい一本の槍が投げられた。
槍を投げた人物は孫堅の家臣である『程普』であった。
程普は空気を読まずに、彼らの一騎打ちに対して文字通りに横槍を入れたのだ。
ヒュー!と風を切りながら飛んだ槍は、胡軫の喉にグサリと突き刺さった。
「え、えぇ~~。そんなバナナ。」
胡軫は孫堅と一合も打ち合わせることなく、馬上より落ちて死亡した。
呆気にとられている孫堅をよそに、空気を読まなかった程普は手を振って喜び、孫堅に自分の功を報告した。
「やったーーー!やりましたよ将軍!敵将討ち取りました!!」
「お、おう。よ、よくやったな。・・・褒めてつかわす。」
「ありがたき幸せ!将軍!雑魚は私がお相手しますのでご安心を!!」
「・・・頼む。・・・はぁ。」
孫堅はスッキリしない気持ちで、胡軫を失って崩れた敵軍の掃討を開始したのであった。




