七十五.知り合いに頼ろう
曹操と陳宮は関所を抜け出して馬に乗り、東へ東へと歩を進めた。
向かうは曹操の故郷『沛国譙県(現在の安徽省亳州市)』。
曹操は故郷に帰り、諸国の英雄たちに『董卓討伐』の檄を飛ばして兵を集め、董卓を討とうと考えたのだ。
その道中にて2人は会話をしていた。
「私の家は代々漢王朝に仕え、禄を頂いていた。私の主君は漢王朝であり、暴政を振う董卓ではない。だから私は董卓を暗殺しようとしたのだ。逆賊董卓を討ち、先祖の恩に報いようとしたのだ。・・・結果はこの有様であったがな。」
「なるほど、なるほど。それが董卓を裏切った理由ですか。」
「ああ。・・・して陳宮殿。私を助けたということは、貴公も董卓に恨みを持っているのかな?」
「ええ。しかし、それは私怨ではなく万民のためです。私も打倒董卓を胸の内に秘めた者。打倒董卓の想いを同じくする曹操殿に協力しようと、あなたを助けたのです。」
「なるほど。感謝いたす。・・・しかし、本当によかったのですかな?私と共に来れば貴公も追われる立場となるが。」
「構いませんよ。共に兵を募り、打倒董卓を目指しましょう。」
「・・・誠感謝する。」
曹操は頭を下げて同士である陳宮に礼を述べた。
2人は昼夜を問わず馬を走らせ、成皐と言う地に着いた。
「ここは成皐か・・・ならば今夜は泊る場所があるぞ。」
「ほう。こんな辺地にお知り合いがいるのですかな?」
「ああ。私の知り合いでは無く、父の友人であるがな。呂伯奢という人物で父と兄弟のような付き合いをしていた者だ。」
「なるほど。では今夜はその人物の家でお世話になると。」
「うむ。では陳宮殿よ。呂伯奢殿の屋敷に行くとしよう。」
2人は馬を走らせ、呂伯奢の住む屋敷に向かった。




