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コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第四章 暴君の宴
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六十二.犠牲はつきもの

「呂布を手に入れる!!」


 董卓は呂布に敗れるや否や、部下たちにそう宣言した。

 呂布の武勇を目の当たりにし、呂布さえ手に入れれば天下を手に入れたも同然だと董卓は思った。

 それと同時に呂布を何とかしなければ、このまま丁原になすすべもなく敗れるとも思った。


 大敗した明くる日の幕舎ばくしゃの会議にて、董卓はまたもや呂布の事を口に出していた。


「天下を我物とするため!そしてこの状況を打破するために呂布を手に入れたい!諸君!何か策は無いか!!」


「「う~~む。」」


 董卓の無茶な要求に腹心の李儒を含め、董卓の諸将たちが頭を悩ませていると、1人の人物が手を上げた。


「ぬふふふ。董卓様。わたくしめにお任せを。」


 諸将たちが目をやった先にいた人物。

 それは李粛りしゅくという人物であった。

 李粛は呂布と同郷の生まれ(=五原郡ごげいぐんの生まれ)で、呂布の性格をよく知る人物であった。


「李粛か。何か策があるのか?」


「ええ。今から私が申します『あるモノ』を準備して下されば呂布を懐柔してご覧にいれます。」


 呂布は武勇に優れる人物であったが、少々頭の回らぬ人物、悪く言えばアホであった。

 李粛はアホの呂布を言葉巧みに騙し、それと同時にモノで懐柔しようとしていた。


「ほう。随分と自信があるようだな。・・・してその『あるモノ』とは何ぞや?」


「はい。一匹の名馬と金銀財宝の詰まった袋を頂きとうございます。」


「一匹の名馬だと?・・・まさか!!」


「はい。名馬『赤兎馬せきとば』にございます。赤兎馬を呂布に差し出せば、知恵の足らぬ呂布のこと。上手く懐柔できると思います。」


『赤兎馬』

一日千里を走ると言われ、馬体は真っ赤で、そのたてがみは炎のように流れるという、稀代の名馬であった。


 李粛の策を聞き、董卓は悩んだ。

 赤兎馬は、同質量の金銀財宝より価値があるからだ。

 お金では買うことが出来ない名馬中の名馬。

 天下を手中に治め、赤兎馬に乗り、自由に世を駆けるのが董卓の夢であった。


「う~~む。赤兎馬か・・・。う~~む。」


 悩む董卓に李粛が喝を入れる。


「董卓様!馬と天下!どっちが大切なのですか!!」


「どっちも大事じゃ!・・・しかし、どちらかと言えば天下かのう。」


「でしょう!将軍の夢はわかります!でも今は天下をお選びください!」


「・・・わかった。名馬を差し出し天下を手に入れるとする。」


 董卓は両方とも手中に収められないよりはましだと考え、赤兎馬を手放すことにした。


『何かを犠牲にすることで、新たな次元へと引き上げられる可能性』


 董卓はその可能性に賭けてみることにしたのであった。

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