五十八.悪党は高笑いをする
十常侍の乱は終わった。
新帝と陳留王は董卓に連れられ、洛陽の宮中へと帰還した。
「母上ぇぇぇぇ!」
「帝ぉぉぉぉ!」
宮中に着いた新帝は何后と再会し、互いの無事を喜んだ。
王美人を毒殺し、董太皇を謀殺した女である何后。
悪の女王である何后も1人の母であった。
そんな何后を見て、護衛を勤めた董卓は鼻で笑った。
(何后よ。今度はお前が謀殺される番だぞ。覚悟しておれよ。)
怪物は悪魔の笑みを浮かべ、自分の考えた策を実行しようとしていた。
董卓は澠池に滞在させていた残りの兵を洛陽すぐそばの城外に移し、陣を張らせた。
そして、自身は洛陽城内や宮中をわがもの顔で好き勝手に歩いていた。
それらは全て自分の力をアピールするためであり、それと同時にこれから洛陽に集結するであろう各地の英雄たちを威嚇するためであった。
董卓の思惑通り、遅れてやって来た各地の英雄たちは董卓の軍を見て怖気づき、董卓に何一つ文句を言うことが出来なかった。それどころか董卓にゴマをすり、媚を売ろうと必死だった。
英雄もより力のある英雄の前にはただの凡人に過ぎなかった。
ただ1人、荊州の丁原を除いてはだ。
自分に逆らう者たちがいないことを確信した董卓は腹心の李儒に自分の策を述べた。
「李儒よ。わしは今の新帝よりも、弟の陳留王の方が帝としてふさわしいと思っておる。そこでわしは今の新帝を廃し、陳留王を帝に即位させようと思う。そして、わしが陳留王を補佐する役を担い、この国を支配しようと考えているのだが・・・お前はどう思う?」
董卓の恐るべき野望に対し、李儒は彼を戒めるどころか手を叩いて喜び、主である董卓を大いに煽てた。
「董卓様!それは素晴らしい考えです!今洛陽に残っている者たちは将軍に媚を売っている者たちばかり!今が絶好の機会ですぞ!」
「ほう。李儒よ、やはりお主も中々話が分かる悪党よのう。」
「いえいえ。董卓様ほどでは・・・。」
「「ぶわはははは!!」」
そして、高笑いする悪党2人は策を確実なものとするため、董卓の威光示す大宴会の準備を始めたのであった。




