五十六.無事が何よりの報せ
「おい、お主。身なりの良い2人の子供を見かけなかったか?」
人にものを尋ねる時は地に足をつけるのが礼儀であるが、兵は馬上から崔毅に対し問いかけた。
そんな兵に対して崔毅は少しムッとしたが、兵の表情を見てすぐに考えを改めた。
兵の目の下にはくまが出来ており、徹夜で子供を探していることがわかったからであった。
「その質問に答える前にお尋ねしたいのですが・・・そちらの馬の鞍に結ってある首は一体誰の首でしょうか?」
「うん?ああ、これは十常侍の張譲と段珪の首だ。河で土左衛門となっておったので、首級として首を斬りとったのだ。」
「な、なるほど。ではあなたはどちら様でしょうか?」
「そういえば名乗ってなかったな。拙者の名は閔貢と申す。十常侍が連れ去った2人の子供を探しているのだが知らぬか?」
閔貢の話を聞き、崔毅は彼を家の中へと迎え入れることにした。
閔貢は少し怪しんだが、彼の案内に従い、家の中に足を踏み入れた。
「み、帝!ご無事でしたか!!」
「余は無事じゃ。してお主はだれじゃ?」
「はっ!拙者は閔貢と申します!帝をお迎えに参りました!」
「うむ、ご苦労。では案内せい。」
「ははぁ!」
閔貢が帝と話している間に崔毅は馬の準備をし、帝たちが家の外にでると、準備していた馬に帝たち乗せ、軍の待機場所へと向かった。
二、三里歩くと軍の待機場所へ着いた。
軍の大将は袁紹であり、彼は帝が到着すると地に膝をつけ出迎えの挨拶をした。
「帝ご無事で何よりです。これより先は私にお任せあれ。」
袁紹たちが帝の生還を喜んでいると、彼方より砂埃を巻き上げ、大地を駆け鳴らし、多くの兵と馬を引き連れた軍が彼らのもとへと近づいた。




