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コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第三章 流浪の蒼天
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四十八.静かな余生を過ごしたい

「終~~了~~!はい、終~~了~~!私を殺そうとした蹇碩は罰した!もう十分である!皆の者引き上げるぞ!!」


 何進は宮内にいる全兵に退却命令を下した。

 この命令を聞き、諸大臣があっけにとられていると、彼らを代表して袁紹が叫んだ。


「しょ、将軍!何を馬鹿なことを言っているのですか!十常侍一味はまだ数名生き残っております!彼らを根絶やしにせねば、いつか寝首をかかれますぞ!」


 袁紹に続き「そうだ!そうだ!」という意見も聞こえ始めたが、何進は聞く耳を持たず彼らを怒鳴りつけた。


「やかましい!私がもうよいと言っておるのだ!それにこのまま戦いを進め、城下にまで戦の火の粉が降り注いでしまったらなんとする!ここは早々に引き上げるのが得策である!」


「し、しかし将軍・・・」


「くどい!それ以上ガタガタと抜かすならお主も罰するぞ!!」


 袁紹の進言も無視して、何進は軍の退却を強行したのであった。


 やることなすこと中途半端に終わらせる何進。

 彼の末路はもう決まっているようなものであった。



 宮中での争いから数日が経過した。

 宮内にて何進と何后の2人が今後についての話をしていた。


「兄さん。以前お話していた件ですけど・・・そろそろ実行に移す時かと。」


「うむ、確かにな。・・・では計画を実行に移すとするか。」


「ええ。これで弁が皇帝になれますわ。」


「そうだな。我らの未来を祝して・・・」


 何進と何后は酒の注がれている杯を手に取り、乾杯をとった。



 さらにそれから数日が経過した。

 その日は特に変わりなく、ただのいつもの日常であった。

 しかしこの日、漢王朝の終わりを暗示する出来事が起こるのであった。


 董太皇はこの日、洛陽を離れて河間かかんという片田舎に引っ越すことになっていた。

 協皇子を可愛がり、帝に跡継ぎを進言した董太皇を何進、何后の両名は都から追い出すことにしたのだ。


「董太皇様。お時間です。そろそろ屋敷を出て頂かなければ日が暮れてしまいます。」


 護衛の言葉を聞き、董太皇は悲しげな表情を浮かべた。

 長年住んできた王宮を離れ、人知れぬ片田舎に1人引っ越そうというのだ。

 董太皇の表情が冴えるはずがなかった。


「胸中お察しいたします。ですが、我らはどうしようもありません。董太皇様。どうかお願い致します。」


「・・・わかりました。あなた方には落ち度はありませんものね。河間に行くとしましょう。」


 董太皇は護衛に連れられて、馬車へと乗り込んだ。



 暗雲立ち込める洛陽を離れ、片田舎である河間でのんびり暮らそう。

 争いの無い平和な土地で余生を楽しもう。

 せめて、生涯を終えるなら静かでありたい。



 董太皇はそう願いながら、洛陽の地を離れた。

 しかし、彼女の願いは叶うことはなった。

 董太皇はその日死んだ。

 河間への道中で何進の刺客の待ち伏せに合い、その生涯を終えたのであった。

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