四十四.暗殺は勘弁
明くる日、何進のもとに勅使がやってきた。
「何進将軍。至急参内せよ。これは帝の勅令である。」
「はぁ?かしこまりました。」
何進は首を傾げながら返答した。
というのも、何進は昨日参内したばかりだったのだ。
(妙だな。・・・もしや十常侍の罠か?)
何進は勅使が帰るとすぐに、諸大臣を自宅に招きよせた。
何進が帝からの勅令を疑った理由。
それは政治を司る十常侍の悪政が以前にも増して酷くなっていたからだ。
十常侍の悪政のために各地で反乱が起きてしまい、漁陽や長沙、江夏などでは大きな反乱が発生していた。
また、皇甫嵩将軍と朱儁将軍という黄巾賊討伐の英雄と言われた2名も、十常侍に賄賂を渡さなかったために、官職を剥がされてしまっていた。
『邪魔者はすぐに消す。従わない者には処罰を。』というのが十常侍の基本方針である。
英雄と言われていた2名が職を追われたことにより、何進は十常侍を恐れた。
今度は自分の番ではないかと恐怖していた。
そのため、何進が十常侍の傀儡である帝からの勅令を疑ったのは当然のことである。
自宅の会議室に諸大臣が集まると、すぐに何進は事の次第を述べた。
事を述べると、1人の男が手を上げて意見を述べた。
「何進将軍。それは間違いなく罠です。参内すれば間違いなく十常侍に殺されるでしょう。」
意見を述べた人物は袁紹、字は本初という人物であった。
袁紹は豫州汝南郡汝陽県(今の河南省商水県)出身で、名門の生まれの者であった。
司隷校尉で名門出身の袁紹の言葉を聞いて、何進は自分の考えに間違いがないことを確信した。
「やはりそうか・・・なんと小癪な奴らだ!ゆるせん!奴らを皆殺しにするぞ!諸侯の皆、私に協力するのだ!!」
何進は十常侍のいる宮殿へと攻め入ろうと諸大臣に提案したが、1人の美青年がそれを止めるよう戒めた。
「何進将軍。私も十常侍を皆殺しにするという意見には賛成ですが、そう事が上手く運びますかな?奴らは宮殿内で強大な権力をもっています。下手に行動しますと自滅しますよ。」
何進を戒めた人物は曹操であった。
袁紹とは違い、ただの一将校でしかない曹操の言葉に何進は腹を立てた。
「黙れ小僧!お主は引っ込んでおれ!お主ごときに朝廷の内情がわかるはずがあるまい!!」
そう言って曹操を野次っていると、会議室に一報が届いた。
その報はこの世の終わりを告げるほどの衝撃的な内容であった。
「も、申し上げます!帝がご臨終なさいました!!」
「何っ!帝が亡くなられただと!!」
場は静寂に包まれた。




