四十三.跡継ぎ問題はこりごり
場面は変わり、ここは洛陽の都の王宮。
霊帝は床に伏せていた。
「く、苦ちぃ・・・。」
漢王朝の皇帝こと霊帝は死にかけていた。
毎日酒と女に溺れていたツケが回ってきたのだ。
「とてもつらい。余は死ぬのか?」
霊帝は弱々しく、十常侍のメンバーの1人である蹇碩に尋ねた。
「このままでは死にますなぁ。手は尽くしましたがどうしようもありませんなぁ。」
蹇碩は悲しむ表情も見せずに、淡々と帝の質問に答えた。
そんな蹇碩を見て、霊帝は悲しげな表情を浮かべ、今後のことを相談し始めた。
「そ、そうか・・・。では、余の跡継ぎを考えねばならぬな。」
「左様。『弁皇子』と『協皇子』のどちらに跡を継がせますかな?」
霊帝の跡継ぎ候補は2名おり、大将軍『可進』の妹である『可后』が生んだ『弁皇子』と帝の妾である『王美人』が生んだ『協皇子』である。
この跡継ぎ問題について説明させてもらう。
大将軍 可進は、元々は洛陽で肉屋を生業としていた人物であったのだが、妹が超絶美人であったため、妹は帝に献上されて妃となった。
妃となった何進の妹は弁皇子を生んで皇后となり、可后といわれるようになった。
これにより、兄である可進も出世して、都を守護する大将軍の地位を得たのだ。
このままいけば跡継ぎ問題はなかったのだが、いかんせん霊帝が助平すぎた。
王美人という寵姫(=愛人)もまた、協皇子という帝の子を生んだのだ。
「このままでは、自分の息子が皇帝になれないかもしれない!」と思った可后は、嫉妬心から王美人を毒殺した。
母を失った協皇子は霊帝の母である董太皇の元へ預けられた。
帝はそんな協皇子を不憫に思った。
「不憫な子を跡継ぎに」と思う親心と母の董太皇の進言もあり、霊帝は弁皇子よりも協皇子を跡継ぎとして選びたかった。
「余は協皇子を後継者として選びたい。・・・蹇碩。お主はどう思う?」
「そうですなぁ・・・。帝様。協皇子を後継者としてお選びになるならば、大将軍 何進を何とかせねばなりませぬなぁ。」
「何進を?なぜじゃ?」
「何進は自分の甥である弁皇子を皇帝の座につかせようと可后と密談をしているとのこと。協皇子を皇帝にさせまいと、卑劣な手を講じてくるのは火を見るより明らかです。また、何進は元々は唯の肉屋の店主。妹が皇后だから大将軍の地位についているだけの無能です。このような人物が大将軍の地位についていることこそ、そもそもの間違えなのです。」
「うーむ。では何進を亡きものにした方が、協皇子のためにも、今後のためにも良いとお主は申すのか?」
「左様です。霊帝様。どうかこの蹇碩、もとい十常侍にお任せあれ。」
「・・・わかった。良きに計らえ。」
「ははぁ!!」
蹇碩は帝の見舞いを終えると、十常侍本部へと足を運び、他のメンバーと共に何進暗殺計画を協議した。




