四百十.罪を不問にしない
※本話には暴力シーンやグロテスクな表現が少し含まれています。
気分を害しそうな方は、次話に飛んでもらっても大丈夫です。
「殺戮大好き!ウキョキョキョキョ!!」という方は、どうぞ続きをお楽しみください。
「呂布将軍。敵将の一人も討たぬ間に、内輪揉めによって味方の将を斬るなど、とても悲しい事です。敵に利を与え、味方の士気をさげるのは、実に悲しい事です。・・・もう一度言いますよ、本当に悲しい事です。」
諦めない心は大事である。
怒りの色を収めない呂布に対し、諸将はめげることなく説得を続けた。
彼らの苦労もあってか、呂布はついに折れた。
しかし・・・
「それほど言うなら命は助けてやる。しかし、罪を不問にするわけにはいかぬ。よって、百杖の刑に処す。・・・さぁやれ!!」
その声により、侯成は上半身の服を脱ぎ、彼の背後に鞭を持った武士が二名立った。
「始めいッ!!」
呂布の声に合わせ、二名の武士が、代わる代わるに、侯成の背に鞭を振り下ろし始めた。
「一つ!二つ!三つ!」
ピシィ!ピシィ!ピシィ!
掛け声と共に、背に鞭の跡が刻まれていく。
背の皮は破れ、血は噴き出し、肉が見え始めた。
それでも鞭の雨は止まない。
「三十一!三十二!三十三!」
ペチン!ペチン!ペチン!
まだ半分にも達していない。
にも関わらず、侯成の気力はもはや限界であった。
歯ぎしりを噛んで、必死に耐えているが、味わう痛みはとうてい我慢できるものでは無い。
鞭により叩き斬り刻まれた背は、一面、魚の鱗のようにそそり立っている。
その凄惨さに、諸大将はおもわず面を背けた。
「五十一!五十二!五十三!」
バキョン!バキョン!バキョン!
漸く折り返し地点である。
侯成の背はもはやズルムケ。
ズルズル、ムケムケ、ズルムケムケである。
ベロリと皮の一部が垂れ下がり、グロテスクさに拍車をかけている。
血がポタポタと床に落ち、血液耐性の無い人間が見たら卒倒するであろう血溜まりが出来て来た。
「七十一!七十二!七十三!」
ズガゴーン!ズガゴーン!ズガゴーン!
七十を越えた辺りで、ついに侯成は気を失ってしまった。
「ウーム」と呻いて、パタリと倒れた。
呂布はそれを見ると、
「・・・よいか、最後まで数えるのだぞ。」
と言って、諸大将を一見した後、閣の奥へと下がって行った。
これは呂布の恩情であったのだろうか?
それとも、これ以上は見る価値なしと判断したためであろうか?
おそらく前者であろうその行動に、諸大将は胸を撫で下ろした。
呂布が完全に部屋より下がった後、諸大将は鞭打つ武士に目配せをして、声だけを出させて鞭を振り下ろさせなかったのであった。




